雑草の言葉

歴史の終わり(と最後の人間)

2022/08/19
Economic Fascism 8
 (原題:The End of History and the Last Man)
歴史の終わり本
 
 このタイトルを見れば、人類の滅亡による人類史の終わりの意味と思ってしまいそうですが、・〜その方がまだずっと読む価値はありそうなのですが〜・そうではありません。資本主義と民主主義こそ人類の歴史の到達点だという主張です。それも、1つの通過目標ではなく、最終到達点だと言うのです。ユートピアが実現した社会制度の完成形で、社会の平和と自由と安定が無期限に維持されるというのです。
 20世紀末のソビエト連邦の崩壊を見た、元アメリカ国務省の職員の日系人、現在、政治経済学者の肩書きを持つフランシス・フクヤマ氏による、社会制度の進歩の終結宣言を著した、1992年に発行された彼の著作物のタイトルです。つまり、彼によると、20世紀の終わりに、世界は社会制度の歴史の到達点:資本主義と民主主義に達したというのです。
 
 ここでその書評を書くのか・・・と言えば、そうではありません。読む気は毛頭無く、読んでいませんから。
 この著作物の存在を知ったのは、2007年に購入して読んだ『暴走する文明 A Shoet History Of Progress』に書かれていたからです。こちらは抜群に気に入り、その後繰り返し読んでいますが、この著者、ロナルド・ライトも本書でフクヤマの「歴史の終わり・・」を批判していました。
 曰く、「資本主義と民主主義は必ずしもパートナーではない。フクヤマの単純な自己賛美は、私利私欲が見え隠れし、かつての帝国が推し進めた宣教活動に似ている。」
 この、ロナルド・ライトの指摘は非常に的を射ていると思います。だから「歴史の終わり・・」は全く読む気はしませんでした。

 こんな短絡的な思考の持ち主が、アメリカ政府の要職に就いていた事に驚きました。それも、このおバカな「歴史の終わり・・」はかなり支持されたようです。アメリカのネオコン、資本家にとって利用価値のある理論だったのでしょう。 
 単に、20世紀末に「自由主義・資本主義が共産主義に勝利した事実から正しい」というだけの根拠に感じます。
ソビエト連邦の共産主義は崩壊した・・・と言う事実を、拡大解釈しただけでしょう。

 確かに共産主義が理想とも思えません。ソビエト連邦は、建国から崩壊の時期まで、多数の国民にとっても、他国にとってもいい国では無かったでしょう。しかし、崩壊して、資本主義社会の仲間入りした現在のロシアの方が、ソビエト連邦よりもまともな国だとフクヤマ氏自身思っているのでしょうか?・・ウクライナ侵攻したプーチンのロシアは「東側」の国であっても、もはや共産主義国家ではありません。ソビエト連邦が崩壊した20世紀末に資本主義国家の仲間入りを果たしたのです。
 仮に、自由経済圏の仲間入りを果たした現在のロシアが、ソ連時代よりも素晴らしい国家に生まれ変わっていたとしても、何故それが安定した平和な歴史の到達点と言えるのでしょうか?
 まだまだ短い人類の進化の歴史[A Shoet History Of Progress]においての通過点に過ぎないのです。少なくとも今世紀中に顕著な深刻な危機となるであろう、人口爆発、エネルギー不足、環境破壊・汚染、格差の問題・・・・等を全てクリアして、それが最低数百年は持続しなければ・・・若しくはその可能性が十分に高くなければ、安定した平和な理想の境地に到達したとは言えないでしょう。・・それは非常に困難な事であり、現在の資本主義を考えれば、そんな最終到達点に至る筈も無いでしょう。
 Wikipedia によると、フランシス・フクヤマは、『ネオコンの代表的な理論家であったが、現在はネオコンとはある程度距離を置く』・・とあります。しかし、未だに資本主義の御用学者の類だと思われます。
 今年、ウクライナ戦争が始まってからのNHKのインタビューがありましたので読んでみました。

フランシス・フクヤマ

「世界の民主主義はどこへ行く フランシス・フクヤマ」
 今回のロシアによるウクライナ侵攻は、明らかに彼の「歴史の終わり」宣言に矛盾する事でしょう。
インタビュアーは、
「プーチン大統領がやっていることは「歴史の終わり」への挑戦と考えますか。」
なんておかしな形の質問でインタビューを開始しています。それに対してフクヤマ氏も、自分の宣言の誤りの反省もせずに、
 「戦争の結果がどうなるかにもよります。」
 なんて、曖昧な答えかたをしています。彼の宣言では、歴史は最終到達点に達して、世界は安定していたのでは無かったのでしょうか?
 以下、その辺の誰でも言えるような事しか言ってなくて、読む価値のないものでした。今はきっとバイデン政権の御用学者かなんかなのでしょう。
 現在日本で問題になっている勝共連合と似たようなレベルだと思いました。

 日本やアメリカに限らず、世界中こんな御用学者の理論で政治が動かされているんじゃないかと思います。 
 こりゃあ、持続可能な社会に移行するのは無理だろうな・・・と悲観してしまいます。



 余談ですが、この本のタイトルの最後の “and the Last Man” の意味が全くわかりません。(「人類史の終わり」という意味ならわかるんですが、「社会制度の終わり」と言う意味では繋がりそうにありません。)不明過ぎます。どなたかお分かりでしたらお教えください。

にほんブログ村 環境ブログ 地球環境へ
にほんブログ村
関連記事

Comments 8

There are no comments yet.

爽風上々

フランシス・フクヤマ

私もたまたまフクヤマについて言及した本を何冊か読んだのですが、あのソ連崩壊の時には浮かれて色々と本を書いたようですね。
実際にはそこから改めてアメリカの傲慢な戦略が世界中を覆い多くの紛争を巻き起こしたということで、冷戦に負けた共産主義にも責任はあるのかもしれませんが、それ以上に世界を壊した大きな責任がアメリカにあるということでしょう。
ロシアのウクライナ侵攻もアメリカの悪い見本を見習っただけなのかもしれませんが、そのやり方はアメリカ以上に稚拙なようです。
そういったこともほとんど気に掛けないのがプーチンのやり方なのかもしれませんが。

2022/08/20 (Sat) 10:01

guyver1092

江戸時代

 江戸時代は、現代よりもはるかに話し合いがされていたという記事を読んだことがあります。現代の日本では話し合いは、ほとんど上意下達の為のセレモニーとなっていますが、その当時は村の総意の決定のための役割を確かに持っていたそうです。それが現代に受け継がれていないのは、明治政府による徹底的な弾圧で伝統を破壊され、その不満が廃仏毀釈運動へ向かったとか・・・
 その後の日本人は、お上の言うことはご無理ごもっともが大勢になったとか・・・
 確証はありませんが、このような内容だったと記憶しています。明治の日本は資本主義を導入しましたが、民主的な話し合いは弾圧されたのです。民主主義と資本主義がセットだとはちゃんちゃらおかしいとしか言いようがありません。
 また、水野和夫氏と、誰かの対談で、資本主義の終着点は奴隷制だとの結論を出していたのを思い出しました。資本主義の発展のために労働分配率を引き下げられていますが、極限までこれを進めると、奴隷制になるとの主張です。全くのうわ言ですね。

2022/08/20 (Sat) 21:09
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: フランシス・フクヤマ

 爽風上々さんが読まれたフランシス・フクヤマについて言及した何冊かの書物の中に、彼を評価していた本はありましたでしょうか?
ちょっと意外なのは、日本でも、「歴史の終わり」の書評は、高評価のものが多い事です。(低評価の人はその本に関してあんまりレヴューも書かないのでしょうが・・)
 フランシス・フクヤマの父や祖父は、第二次世界大戦に伴う強制収容を逃れたようですが、マンハッタンで育ち、日本文化を知らずに育ったというフクヤマは、実は日系人であると言う事にコンプレックスを持ち、アメリカに忖度して、同化しようとして来たのかも知れません。
ソ連邦の崩壊で、「歴史の終わり」なんて短絡的なことを述べるのは、かなり軽薄に感じるのですが。。。

2022/08/21 (Sun) 02:17
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 江戸時代

>江戸時代は、現代よりもはるかに話し合いがされていたという記事

は、私も読んだ記憶があります。槌田敦さんか石川英輔さんでしょうか?
それを考慮すると、確かに現代の方が上意下達ですね。

>不満が廃仏毀釈運動へ向かったとか・・・

廃仏毀釈は政府主導だと思っていたのですが、アンチ政府派主導だったのでしょうか??

>民主主義と資本主義がセットだとはちゃんちゃらおかしいとしか言いようがありません。

やはりそう思われますね?

>資本主義の終着点は奴隷制だとの結論

の方が、頭で考えて、遥かに理性的な結論ですね。既にその兆候はあちこちで出ていますね。

2022/08/21 (Sun) 02:30

爽風上々

フクヤマについて

つい最近読んだ2冊の本にフクヤマに関係した記述があったのですが、1冊は批判的に書かれていたものの、1冊は「知の最先端」の一人としてフクヤマを遇するというもので、内容はちょっとどうかと思うものでした。
その中でフクヤマがシェールオイルでエネルギー問題は解決と言っているのを見て、こりゃだめだと見放したのですが、その他の部分で私のそれほど詳しくないところでも同様の浅い判断をしているのでしょう。
そんな本は読まなくてよいのではと思いますが、田舎の市立図書館では蔵書数も限りがありなかなか選びにくいという状況です。

さて、guyver1092さんが書かれた江戸時代の件、おそらく農村などの寄合の話と思いますが、場合によって違いはあるかもしれませんが、かなり討論を尽くしたものであったという話は聞いたことがあります。
統治階級である武士の社会にはそのようなことはなかったのかもしれませんが、武士の支配も農村の自治を利用した間接的なものだったようです。
それに対し明治以降の資本家による会社というものは全くの上意下達であり、民主的な企業経営などと言うものはありません。
さらに政府と資本家による農村社会の解体と農民の労働者化により見る影もなくなり一部の有力者によるボス社会に変わってしまったのでしょう。
結局は民主主義というものに近いものが日本にもあったということすら忘れ去られ、ボスに従い選挙の時だけにこやかな大ボス、中ボス、小ボスに連なることだけが生き延びる道という社会になってしまいました。

2022/08/21 (Sun) 15:03

guyver1092

廃仏毀釈運動

 すみません。細かいニュアンスが伝わらなかったようですね。民主的話し合いを弾圧し、その不満のはけ口として政府主導の廃仏毀釈運動をした結果、それぞれの不満のはけ口として廃仏毀釈運動にのめりこみ、終わった後は、虚脱してお上の言いなりの国民になったというニュアンスでした。

 武士の社会の話し合いについてですが、幕府が新規の政策をする、または変更する場合は、各藩のの代表者と事前の話し合いを持ったそうです。その後各藩のみで話し合いを持ち、総意を決めた上で幕府と再度の話し合いに臨み、各藩それぞれの意見を幕府にぶつけたそうです。幕府は、この意見の集合体から各藩の総意をくみ取り、お触れを出すか、引っ込めるかを決めたそうです。

2022/08/21 (Sun) 19:42
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: フクヤマについて

「知の最先端」ですか?福山がどのような理論の展開をしているかは分かりませんが、「歴史の終り」を書いた人物が知の最先端とはとても思えません。・・・かと言って、それを読んで、反論するのも時間の無駄と思えるくらい馬鹿馬鹿しいですね。

 なるほど、江戸時代の寄合は、かなり民主的なものだったのですね。それが明治になって資本家による上位下達になったと言うことは、民主主義と資本主義は全然相性が良く無いですね。
 明治政府は資本家と組んで農村社会の解体と農民の労働者化をしたと言うことは、欧米が大航海時代以降、アジアやアフリカに対してやってきた事と同じですね。これは、guyver1092さんが指摘しているところの 「資本主義の終着点は奴隷制」に通じるところがありますね。
「一部の有力者によるボス社会」 になる方向が、「歴史の終り」では悲し過ぎます。
 フクヤマに限ったことでは無いですが、「資本主義」の優位性をプロパガンダし、洗脳するために、全くパートナーではない「民主主義」を抱き合わせにしたいのでしょう。

2022/08/22 (Mon) 06:24
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 廃仏毀釈運動

こちらこそ、guyver1092 さんが省略した意図を読み切れませんでした。
でも、江戸時代の民主主義的な寄合が政府によって弾圧されたからと、廃仏毀釈運動が、農民たちの不満のはけ口になったとは、その脈絡がよく分かりません。。。私が明治の歴史に疎いからでしょうが、・・。
 そして終わってから虚脱して政府の言いなりの国民になるとは、結果として、まるで政府のマインドコントロールですね!?

>幕府が新規の政策をする、または変更する場合は、各藩の代表者と事前の話し合いを持ったそうです。

これは新たな知見です。江戸の武士社会は、上位下達の典型かと思いきや、かなり各藩の意向を大切にしていたのですね。今の日本政府にも見習わせたいところです。
 「資本主義は、国をトップダウン化して、国民を奴隷化の方向に誘導する」傾向があると言えそうな感じです。どうでしょうか?
「資本主義が歴史の終り」ってとんでもない忖度に思えます。

2022/08/22 (Mon) 06:42
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
無理に経済成長させようとするから無理に沢山働かなければなりません。あくせく働いて不要なものを生産して破局に向かっているのです。不要な経済や生産を縮小して、少ない労働時間で質素にゆったり暮らしましょうよ!「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト。
にほんブログ村 環境ブログ 地球環境へ
にほんブログ村
Economic Fascism