大転換 [書評]
経済学に疎い私は、しかし、市場経済や資本主義というものは胡散臭いものだと、かなり以前より思っておりました。
そんな私が、市場経済社会と資本主義社会の特殊性と病理を論じているらしい本を10年以上前に手に入れて、途中まで読んで挫折しました。
カール・ポランニー[Karl Polanyi] 著
「経済の文明史」原題:古代帝国の商業と市場
[Trade and Market in the Early Empires]

です。
自分が読みたい内容だとは思いつつ、何度か読み始めて、ちょっと読むのに疲れる大作(論文集)で
「今回はこのへんでや〜めた」状態でした。
その後・・・私はほとんど経済学者を知らないのですが・・・そんな中で、エントロピー学会に所属している数少ない敬意を払える経済学者の方々が、何かとポランニー経済学に触れて言及しているものを目にしました。
そして、やはりポランニーを1冊は通して読もうと考えました。
そこで、ポランニーの代表作「大転換」を購入し、時間が出来たらいずれ読もうと考えていました。購入にあたって、丁度、新訳も出た頃でしたが、高かったし、旧訳も味がありそうでした。そして、新訳の表紙の絵が間抜けな感じで気に入りませんでした(笑)。考えた末、古い方を中古で購入しました。わかりにくかったら、後から新訳を買って読もう・・・と。 〜〜それが、間違いだったのかも知れません。
大転換【The Great Transformation]
ー市場社会の形成と崩壊ー
カール・ポランニー[Karl Polanyi] 著 東洋経済新聞社

古本で購入してかなりの年月が経って、いよいよこの10月に「大転換」を読み始めましたが、 この旧訳は、大作でボリュームがあり、「経済の文明史」に輪をかけて読みにくい書物でした。
直訳が多くて分かりにくく、長い文では、主語さえも(筆者なのか、第三者なのか・・)捉えにくく、なるほど、後から新訳が出版されたわけです。
高校の世界史もろくに勉強していなかった私にとって、ヨーロッパ史、特にイギリスの歴史がわからないので、内容が掴みにくい箇所が多数でした。更に、初めて目にする経済用語も沢山ありました。
最初は調べながら読みましたが、それでは全然捗らず、途中放棄しそうなので、調べるのをやめて読み進めました。類推したりもしましたが、不明な経済用語も多々有りました。ヨーロッパ史についてはお手上げ状態でした。
10月の前半、実質14日もかかって、読み通しました。理系の専門書でも無いのに、こんなに苦しんで本を読んだのは初めてです。やはり私は経済の本は向いていません。得るものもありましたが、時間の浪費でもありました。読書は楽しいものの筈なのに、苦しんで読んだイメージです。この手の難解な経済の古典的名著は2度と読まないぞと思いました。
内容は断片的に飛び飛びにしか理解できませんでしたが、そんなまばらな理解でも、なるほど!という発見は何箇所かありました。能率はかなり悪かったものの、それなりに多少、読んだ甲斐はありました。
この後に読んだ、「ディープ・エコロジー」も、予想に反して哲学的な部分があって、意外に読みにくい(読みたくない)部分もあったのですが、本書「大転換」が、あまりに難解で読みにくかった為、「ディープ・エコロジー」は苦にならずにすらすら読めました(笑)。
もう、ポランニーの「大転換」のような書物は読まないぞ・・と思った私ですが、
以前、ポランにーには期待していましたので、
「大転換」を購入した頃、彼の著書、遺作となった
「経済と文明」原題:ダホメと奴隷貿易
[Dahomey and the Slave Trade
: An Analysis of an American Economy ]

も購入しておりましたので、これはそのうち読むかもです。これは、難解だったらしい旧訳を改訂した新訳ですので、旧訳の「大転換」よりは読みやすいと思います。「価値」があれば、その書評もそのうち書くやも知れません。
さて、「大転換」の内容ですが、有意義だと思う部分を全て書けば、長くなり過ぎますので、今回は総論として一つだけ・・。
ポランニーが主張するように、
労働、土地、貨幣が全て市場メカニズムに組み込まれた「市場経済社会」は異常です。「市場経済社会」と「資本主義社会」は18世紀に起こった産業革命と共に作られた「異常な社会」であり、これによって非常に多くの人が犠牲になって苦しんできたのです。その「異常さ」には、多くの人が気づいていた筈ですが、それで「大儲け出来た」人間が、権力を握って今日の資本主義社会を築き上げていってしまったのでしょう。
かつて市場経済は「不法行為」「神尾への冒涜」とされて、拒否反応されていたとの事ですが、その認識の方が正常だと感じます。
ポランニーの言うところの「大転換」とは、当初は、経済が社会に埋め込まれていた「非市場社会」から、人間が異常な市場経済社会 を作り上げたことなのかと思いました。
しかし、ポランニーの意味する「大転換」とは、本来商品でない労働と土地まで、この「自己調整的市場」に組み込まれてしまった社会が20世紀に崩壊したと言うこと(崩壊すると言う見通し)の事のようです。
しかし現実には、21世紀になってもまだ資本主義は蔓延っており、新自由主義とかグローバル経済の出現で、更に発展させられています。これはポランニーの洞察の誤りでしょうか?
私はポランニーの主張が、理解できない部分も多く、全面的に正しいとも思いませんが、「自己調整的市場」と「資本主義」は持続可能では無く、早く終わらせるべきだと考えます。
今後、ポランニー経済をじっくり学ぶ気は毛頭御座いませんが、エントロピー学会の優れた経済学者の方々とか誰かに、ポランニー経済学の概要・本質だけは教えて頂きたいと考えております。

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