雑草の言葉

資本主義は破壊の因子《前編》   〜資本主義の根幹〜

2022/11/19
脱成長 8
先日の記事【大転換】に、ここの常連のHN guyver1092 さんから 非常に斬新でかつ興味深く面白いコメントを戴きました。

 貨幣に地球の大きさに関する制限を加えれば、資本主義は成り立たなくなる
 と言うものです。頗る独特で、画期的なアイディアだと思いました。自分もそのアイディアの詳細な内容を是非知りたいと思いましたので、コメント欄にお返事として記事の依頼をしたところ、早速、記事を送って下さいました。その記事を前編、後編の2回に分けて、掲載いたします。


バベルの塔1


《前編》は、資本主義の根幹の本質についてです。
   〜資本主義の根幹〜 

 資本主義の根幹をなす原則は、いったいどのようなものなのでしょうか。私の直接訊いた範囲では、答えが返ってきたことはありませんが、拡大再生産であると考えます。
 なぜ拡大再生産しなければならないのでしょうか。資本主義の仕組みとして、出資者がいますが、出資への謝礼として配当をする必要があるからです。元本割れするような事業に、だれが出資するでしょうか。また投資家は、配当の多い事業と少ない事業のどちらに投資するでしょうか。資本主義は投資家の金銭に対する欲望と、事業者の事業を興して儲けたいという欲望を結びつけるシステムでしょう。事業者は己のもうけを得るためと、より多くの資本家からの出資を募るため、より利潤の高い事業を目指します。
 その結果、人類文明は、エコロジカルフットプリントとして指摘されるように、地球の生物の生存環境を破壊して将来の自滅が目に見えるところまで来ています。
 この金銭に対する欲望を満たすために、人類は様々なシステムを試行してきました。古くは奴隷制、16世紀ごろに重商主義、18世紀後半に重農主義等様々な試行の末、現在の資本主義に行きつきました。現在の政治家は資本主義が絶対の正義で、それ以外の社会システムは認めず、さらにはその永遠の維持のため、経済成長を絶対の要件と定義しています。
 そして、欲望の対象となる金銭も原始貨幣から始まり、現物の金属、兌換紙幣、国家の信用に基づく不換紙幣と進化しています。拝金主義、経済至上主義等の言葉があますが、人類社会の中で最も重要なものはお金という点で一致しています。いわば最高神でしょう。

ギャンブル投資3


 この最高神たる貨幣の現在の性質は、成長と不滅です。通貨は、人から人、会社から会社へと受け渡されながら、永遠にめぐり、制度として消滅することはありません。
さて、人類は様々な欲望を満たすため、技術を発達させてきましたが、技術革新は無限に可能ということは証明されたでしょうか。例として発電効率を取り上げます。現在の汽力発電機(高圧の水蒸気でタービン発電機を回し、電力へ変換する発電方法。火力発電、原子力発電、地熱発電などで利用されている。)の熱効率は約42%ですが、この効率を10年後には52%さらには30年後には62%、さらに100年後には102%と無限に効率を上げ続けることは理論的に可能なのでしょうか。その他、製造業で、例えば1トンの原材料を使って2トンの製品を作ることは可能になるのでしょうか。現在の人類の科学では、このようなことは不可能と証明されています。つまり、現在の資本主義と管理通貨制度による貨幣で動く現代社会は、理論的に永続できないにもかかわらず、この有限の地球の中の経済活動は永遠に成長し、決して破滅が起きないことが望まれ、人類はそのことを前提に活動しています。
 現実にすべての国、または企業が有限の地球の中で永遠に成長することは不可能にもかかわらず、不可能な成長をしようとせめぎ合えばいったいどういう事が起こるでしょうか。当然争いが起こると考えられるでしょう。そして実際、ロヒンギャ等の少数者に対する迫害や、国と国の争い等が、時代が下るほど増えています。
その原因は、有限の中で無限に成長しようとする資本主義の根幹が、この世の物理的制限と衝突しているからなのです。資本主義は、まさに人類にとって破滅の因子なのです。

Hindenbuurg Disaster


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Comments 8

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☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

資本の拡大再生産

 資本主義の根幹となる部分の因子を明確に簡潔に捉えた記事です。

 資本主義は、社会の望ましい在り方を考えて作られたものではなく、単にお金が有り余っている強欲な人達が、資本をさらにもっと増やそうとして考えた方式でしょう。記事本文の言葉をお借りすれば
>資本主義は投資家の金銭に対する欲望と、事業者の事業を興して儲けたいという欲望を結びつけるシステム

と、言えるでしょう。こんな破局的なシステムを21世紀の今日でも経済の根幹としている現代社会は、崩壊への道を突き進んでいると言えましょう。
破局は遠くない将来・・今世紀中に起こるでしょう・・破局を避ける事は非常に難しいと考えています。

2022/11/19 (Sat) 22:37

guyver1092

資本主義

 人類社会の破壊力が地球の人口支持力を大きく下回っていた時代は、悪いところなど何もないように見えましたが、等しい大きさになった現代では、デメリットがはっきり見えてきましたね。このデメリットも、自己欺瞞かどうかわかりませんが、別のものにすり替えて説明されています。
 多くの人が、資本主義には拡大再生産が必要であることと、地球の大きさに限界があることを結びつけて考えられないことも非常に大きな問題ですね。
 二酸化炭素など、問題に対して、すぐさま欺瞞の為のズレた問題点を提供し、本来必要とすることの正反対の結果をもたらす解決策を提供するのでは、人類の破局はおっしゃる様に非常に難しいですね。

2022/11/20 (Sun) 20:36
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 資本主義

ジャレド・ダイアモンド の「文明崩壊」には、資源の枯渇で文明崩壊に至った地域が多々あり、かなり昔から、地域の有限性には気付いていた事でしょう。「教訓」も沢山あったはずです。その地域の有限性に配慮して資源を大切にして、文明崩壊を免れて来た民族もあります。日本人もその1つの民族だった筈ですが・・。

>このデメリットも、自己欺瞞かどうかわかりませんが、別のものにすり替えて説明されています。

これは具体的にはどのような事でしょうか?

>多くの人が、資本主義には拡大再生産が必要であることと、地球の大きさに限界があることを結びつけて考えられないことも非常に大きな問題ですね。

それが非常におかしい点ですね。おそらくは、気付いている人は結構いるのでしょうけれど、目先の利益の為に目を瞑り、他の人たちにも悟られないように「別の事」と思わせるように洗脳しているのかも知れません。そのくせ、「来るべき危機」の時には自分だけは逃げおうせようと、準備しているのでしょう。そこにはダブルスタンダードがあるのでしょう。

歴史的には
>13世紀初頭から19世紀半ばまで、市場経済は「神への冒涜」「不法行為」「平穏な生活を脅かす行為」とされ大きな反発を呼び、拒絶反応される状況が続いたとされている
そうです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/市場経済
ここの「歴史」の部分です。

2022/11/21 (Mon) 18:41

guyver1092

資本主義のデメリット

 デメリットは、成長の余地の枯渇からくる資源の奪い合いとしての争いと考えています。ロヒンギャ等の様々な少数派への弾圧のことです。この争いについて、人権侵害と説明されていますが、わたしから見れば少数派を追い出してその土地とか資源を強奪するつもりとしか見えません。

>市場経済は「神への冒涜」「不法行為」「平穏な生活を脅かす行為」
 紹介ありがとうございます。竹中平蔵の本ですか。歴史の事なので、著者に偏見を持ってはいけないですね。市との違いを明確に記述したページがあればよいですね。

2022/11/21 (Mon) 20:25
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 資本主義のデメリット

>デメリットは、成長の余地の枯渇からくる資源の奪い合いとしての争いと考えています。・・・人権侵害と説明されていますが、わたしから見れば少数派を追い出してその土地とか資源を強奪するつもりとしか見えません。

なるほど、おっしゃるように土地や資源の強奪のための追い出し行為が結果として「人権侵害」になっていると考える方が実情を説明していますね。

>竹中平蔵の本ですか。

すみません。wikipediaに記載されていた事ですが、脚注は見ませんでした。
まさか資本主義のデメリットを乱用・悪用している竹中平蔵の本からの記事だとは思いませんでした。
あのしょうもない彼に偏見を持っても然るべきかもです(笑)。
でもこの記事は、彼も調べてどこかから持ってきて転用した内容でしょうから、引用してもいいんじゃないでしょうか?・・・確かに「市との違いを明確に記述したページ」があった方が良いのですが・・。

2022/11/22 (Tue) 05:51

爽風上々

金融資本主義

的確な解析だと思います。
資源の制約というものが大きな問題となってきたのはそう古くない話のようで、日本でも飛躍的に成長が続いていた時代には誰もそれには気づかなかったのでしょう。

しかし、どうやらそれが明らかになりつつなったところで資本主義は大きく性格を変えてしまいました。
金融資本主義、(まあ名前はいろいろ付けられそうで、賭博資本主義とかカジノ資本主義とか)という、これまでの実体経済に投資してその利益を分け合うといった比較的穏和?なものから遠く離れたものです。
そこでは金だけが飛び回り資源制約とも一見関わりがないかのようなマネーゲームが繰り広げられます。

ただし、それが資源制約と本当に関係がないわけではないでしょう。
それを行なう人間がどうしても衣食住を必要とする以上、制約はかかってきます。
もちろん、マネーゲームもAIにやらせるようになっては関係なくなるのでしょう。

しかし金の動きというものは実体経済にも大きく影響する以上、勝手に遊んでいろとも言えません。
暴走を始めて破局に至るのも近いと感じます。

2022/11/23 (Wed) 08:12

guyver1092

Re:金融資本主義

 おっしゃる様に、マルサスの人口論等かなり古くから言われていますね。緑の革命が無ければ、その年代にマルサスの予言が的中していたとの記事も読んだことがあります。

 金融資本主義の類も、水野和夫氏等が論じていますね。金融資本主義は、お金に投資をしてお金を配当として受け取るまさにマネーゲームですが、得るお金は普通の商品も買うことができますので、これもおっしゃる様に資源の制約は必ず発生すると考えます。
 少なくとも、過去の世界大戦時のように経済システムの崩壊は確実でしょうし、文明崩壊もはほぼ確実と考えます。

2022/11/23 (Wed) 20:55
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: Re:金融資本主義

資本主義を是とする経済学者でも

>金融資本主義は、お金に投資をしてお金を配当として受け取るまさにマネーゲームですが、得るお金は普通の商品も買うことができますので、・・資源の制約は必ず発生

と言う当然の帰結を考えない筈も無いと思うのですが、
今でも「金融資本主義」を推し進めている人々は、guyver1092さんが常々仰るように、人類の滅亡を画策しているように見えます。
ネズミ講と同じ構造です。「自分だけ逃げ切れればいい」と考えているのかも知れませんが、地球全体の破壊ですからそれは無理ですね。

兌換紙幣までの「モノと貨幣の対応」を捨て去った段階で、資本主義はずっとまやかしの破局への道を進んでいると言えますね。

>『貨幣に地球の大きさに関する制限を加えれば、資本主義は成り立たなくなる』

は非常に重大な事実です。資本主義を是とする経済学者に反論させたい所です。どんな弁明をするのでしょう?

2022/11/28 (Mon) 09:52
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト、「経済成長信仰」と「科学技術信仰」とによって、飛行船地球号は破裂して墜落を始めるのも時間の問題。
あくせく働いて破局に向かって突き進むくらいなら猫のようにその日暮らしをする方がよっぽどいいではないですか。脱成長によってゆったり暮らすことができる社会の実現を!
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