資本主義は破壊の因子《前編》 〜資本主義の根幹〜
『貨幣に地球の大きさに関する制限を加えれば、資本主義は成り立たなくなる』
と言うものです。頗る独特で、画期的なアイディアだと思いました。自分もそのアイディアの詳細な内容を是非知りたいと思いましたので、コメント欄にお返事として記事の依頼をしたところ、早速、記事を送って下さいました。その記事を前編、後編の2回に分けて、掲載いたします。

《前編》は、資本主義の根幹の本質についてです。
〜資本主義の根幹〜
資本主義の根幹をなす原則は、いったいどのようなものなのでしょうか。私の直接訊いた範囲では、答えが返ってきたことはありませんが、拡大再生産であると考えます。
なぜ拡大再生産しなければならないのでしょうか。資本主義の仕組みとして、出資者がいますが、出資への謝礼として配当をする必要があるからです。元本割れするような事業に、だれが出資するでしょうか。また投資家は、配当の多い事業と少ない事業のどちらに投資するでしょうか。資本主義は投資家の金銭に対する欲望と、事業者の事業を興して儲けたいという欲望を結びつけるシステムでしょう。事業者は己のもうけを得るためと、より多くの資本家からの出資を募るため、より利潤の高い事業を目指します。
その結果、人類文明は、エコロジカルフットプリントとして指摘されるように、地球の生物の生存環境を破壊して将来の自滅が目に見えるところまで来ています。
この金銭に対する欲望を満たすために、人類は様々なシステムを試行してきました。古くは奴隷制、16世紀ごろに重商主義、18世紀後半に重農主義等様々な試行の末、現在の資本主義に行きつきました。現在の政治家は資本主義が絶対の正義で、それ以外の社会システムは認めず、さらにはその永遠の維持のため、経済成長を絶対の要件と定義しています。
そして、欲望の対象となる金銭も原始貨幣から始まり、現物の金属、兌換紙幣、国家の信用に基づく不換紙幣と進化しています。拝金主義、経済至上主義等の言葉があますが、人類社会の中で最も重要なものはお金という点で一致しています。いわば最高神でしょう。

この最高神たる貨幣の現在の性質は、成長と不滅です。通貨は、人から人、会社から会社へと受け渡されながら、永遠にめぐり、制度として消滅することはありません。
さて、人類は様々な欲望を満たすため、技術を発達させてきましたが、技術革新は無限に可能ということは証明されたでしょうか。例として発電効率を取り上げます。現在の汽力発電機(高圧の水蒸気でタービン発電機を回し、電力へ変換する発電方法。火力発電、原子力発電、地熱発電などで利用されている。)の熱効率は約42%ですが、この効率を10年後には52%さらには30年後には62%、さらに100年後には102%と無限に効率を上げ続けることは理論的に可能なのでしょうか。その他、製造業で、例えば1トンの原材料を使って2トンの製品を作ることは可能になるのでしょうか。現在の人類の科学では、このようなことは不可能と証明されています。つまり、現在の資本主義と管理通貨制度による貨幣で動く現代社会は、理論的に永続できないにもかかわらず、この有限の地球の中の経済活動は永遠に成長し、決して破滅が起きないことが望まれ、人類はそのことを前提に活動しています。
現実にすべての国、または企業が有限の地球の中で永遠に成長することは不可能にもかかわらず、不可能な成長をしようとせめぎ合えばいったいどういう事が起こるでしょうか。当然争いが起こると考えられるでしょう。そして実際、ロヒンギャ等の少数者に対する迫害や、国と国の争い等が、時代が下るほど増えています。
その原因は、有限の中で無限に成長しようとする資本主義の根幹が、この世の物理的制限と衝突しているからなのです。資本主義は、まさに人類にとって破滅の因子なのです。


にほんブログ村

- 関連記事
-
-
オーバーシュート 2023/01/07
-
資本主義は破壊の因子《前編》 〜資本主義の根幹〜 2022/11/19
-
悟り世代の消費離れ 2021/01/17
-
コロナ禍はきっかけに過ぎず 2020/05/23
-
災害復興は脱成長で 2011/09/05
-