雑草の言葉

資本主義は破壊の因子《後編》〜地球の有限性と貨幣の規模〜

2022/11/23
Sustainability 20
前回の記事の続きです。前回【資本主義の根幹】では、資本主義が文明崩壊に繋がることが示されました。今回は、その資本主義による文明崩壊をくい止める方法の筆者からの提案です。

バベルの塔2

〜地球の有限性と貨幣の規模〜

 さて、この破滅の因子を人類社会から取り除くことは可能てしょうか。私は可能と考えます。方法としてゲゼル主義による、貨幣への制限があります。現代の管理通貨制度によると、貨幣は商品とともに新たに生まれますが、商品が使用または経年劣化により消滅しても貨幣は消滅しません。その結果、貨幣と商品を比べると貨幣が優位となり、人々は貨幣を取得することを選びます。そこで、ゲゼルは貨幣も商品と同じく使用により消滅しなければならないと考えたのです。これはマイナス金利として理解されています。現在の社会で行われているマイナス金利は、中央銀行からの貸し出しのみ行われていますが、ゲゼル主義は一定の期間が立てばすべての貨幣の額面が減少するというものです。このような貨幣の制度を取ると、商品に対する貨幣の優位が無くなります。結果として、貨幣の総発行残高は管理通貨制度より減少しますし、マイナスの利率によってコントロールできます。さらには、貨幣の価値を一定に保とうとする限り、経済全体の規模も生産量に応じます。つまり生産が一定なら、経済規模も一定となります。

ギャンブル投資2

 ゲゼル主義を採用すると、投資をしても目減りをする場合が多くなるので、拡大再生産を止めやすくなるでしょうが、上手に事業を行って、消滅する以上に生産すればやはり経済は成長します。そこでもう一段の制限を貨幣に課せば、環境負荷を人類文明の存続可能域まで減らすことも可能と考えます。その制限は、人類の手にしたエネルギーに応じて貨幣を発行するというものです。化石燃料はこのエネルギーに含めません。これを含めては破滅を回避できないからです。もっと言うと、固定した太陽エネルギーに応じて貨幣を発行し、この貨幣は、エントロピーの法則に応じて減少するよう取り扱うのです。具体的には、森林、農地の生産量を基準に貨幣の総額を決めます。これらを損なえば、貨幣の総額も減少させます。森林、農地を増やすことができれば、その分の経済成長もできることにします。
 
博士山ブナ林27; 矢ノ原湿原8

 
 この成長は、地球の面積、気候に制限を受けるので、自滅するほどの環境負荷を発生させると、貨幣額が減少、つまりマイナス金利が大きくなり、投資しても投資の謝礼はなくなることになり、結果として事業がなりたたなくなります。
 物事の制御方法に、フィードバック制御というものがありますが、人類の採用する経済システムには環境負荷の増大に対するフィードバックはありません。この制限を組み込むことにより、人類の自滅を防ぐことは可能でしょう。自滅を望む者は、この制限を嫌うでしょうが。

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Comments 20

There are no comments yet.

☘雑草Z☘

なるほど!

>ゲゼル主義による、貨幣への制限

は、かなり以前にguyver1092さんが書いて下さいましたが、

>固定した太陽エネルギーに応じて貨幣を発行

と言う発想は思いもよらなかった、しかし言われてみれば「なるほど」と思う理性的な方法でした。
おっしゃるところの
『人類の採用する経済システムに、環境負荷の増大に対するフィードバック制御を取り入れた』
画期的な方法だと思います。
ただ、強欲な資本家、投資家、財閥をはじめ、「儲けたい」多くの人はこの方法の導入に反対するでしょう。
 それを納得させるには、資本主義によって必然的に起こる文明崩壊に対する「正当な恐怖心」が必要だと考えます。
 しかし、guyver1092さんの仰るように、彼らは「自滅を望む者」の如く「この制限を嫌うでしょう」
沈みゆく船に乗っていれば、いずれ「自分も沈む」と言う簡単なことが、欲で見えなくなっているのでしょうか?それとも、マストの上にでも登れば自分だけは助かるとでも思っているのでしょうか?さらにもっと愚かにも、金儲けに夢中で、船が沈むと言う発想自体がないのでしょうか?

2022/11/24 (Thu) 22:45

爽風上々

ゲゼル主義

ゲゼル主義という考え方、なかなか魅力的なものかと思います。
ただし雑草Zさんも書かれているようにこの世の権力者という連中はそれには決して同意しないでしょう。
しかも政治権力もすべて彼らの手の内にある以上、どうやら実現の可能性は極めて低いということでしょうか。

2022/11/25 (Fri) 09:15

guyver1092

ドイツ

 ドイツには、キームガウアーという減価貨幣の地域通貨がありますが、ドイツでこの類の発想をした者はいるのでしょうか?  環境先進国と自認しており、少なくともヨーロッパではそう認められています。ドイツ人がこのような発想を発表したら、話題に上り、世界中に拡散するはずですから、この発想をした者はいない気もします。

>沈みゆく船に乗っていれば、いずれ「自分も沈む」と言う簡単なことが・・・

多くの人が、資本主義には拡大再生産が必要であることと、地球の大きさに限界があることを結びつけて考えられないのと同根の理由の気がします。強欲は正に身を亡ぼす原動力ですね。不滅の神を信じていると、自分たちも不滅と感じるのかもしれませんね。

2022/11/25 (Fri) 21:11

guyver1092

Re:ゲゼル主義

 過去に記事を書いた後ずっと考えていますが、私の結論はゲゼル主義的な経済システムが最も有望と考えています。
 以前読んだページによると、ゲゼル主義は、中央集権を壊し、地方分権を推進する効果が非常に強いそうです。私も、権力者は採用しないと考えます。

2022/11/25 (Fri) 21:18
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

お米

 江戸時代はお米がある程度、お金の役割を果たし、給料代わりにもなっていました。
それはある意味ゲゼル主義と言えましょうか?
年貢の制度の良し悪しは別として、お米の何万石・・という石高は、正に『固定した太陽エネルギーに応じて』発行される貨幣と考える事ができるのではないでしょうか?その意味でも金本位制よりも優れていると言えましょうか?
 江戸時代は現代よりも理性的だったのかもしれません。
 しかし、お金を儲けたい人は、劣化しない貨幣、金本位制の方がいいのでしょう・・。

2022/11/26 (Sat) 21:11

guyver1092

お米

 歴史でも習いましたし、槌田氏の本でも読んだ記憶があります。武士たちは年貢米を受け取るとすぐさまお金に変えようとしたそうですが、武士たちが一斉に売ろうとするので、商人に買いたたかれたとか。現在でいうなら、中央銀行の貸し出しのみマイナス金利という所でしょうか。
 双方とも、製剤の貨幣の循環の一部のみのマイナス金利ですので、マイナス金利の貨幣を持つ者のみが損をしているのだと理解しています。ゲゼル主義では、すべての段階でマイナス金利ですので、循環が滞ることはないですが、どこか一部では不具合が発生するのではないでしょうか。教科書の筆者の主観もありますが、良い印象を与えない書き方だった記憶があります。
 おっしゃる様に、給料としてのコメは太陽エネルギーを固定化した貨幣ですね。江戸時代のお金がコメのみであれば、今回の記事の制限付き貨幣そのものだったでしょうね。

2022/11/27 (Sun) 20:35
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: お米

>現在でいうなら、中央銀行の貸し出しのみマイナス金利という所でしょうか。
>マイナス金利の貨幣を持つ者のみが損をしているのだと理解しています。

なるほど、納得のいくご説明有難う御座います。
私はその辺り歴史に疎く、全く知りませんでした。私の認識不足でした。
世界中で「便利な」貨幣が作られ、それと共にモノに対する貨幣の優位性が発生し、「蓄財」が加熱して行くわけですね。
この「流れ」は必然に見えます。
 人は「貨幣」を便利な良貨と考え、運搬も管理も面倒な「米」などの「現物」が悪貨と考えて来たわけです。
 しかし、「悪貨は良貨を駆逐する」と言いますが、大きく世界の文明の持続性から考えると、価値の消滅しない「貨幣」が実は「悪貨」で「良貨」である「現物」を駆逐してきた・・・と言えるのかも知れません。殆どの人には理解され難いパラドックスにも思えますが・・?

2022/11/28 (Mon) 08:48

guyver1092

良貨

 目先だけを考えれば、腐る現物より、不滅の貨幣を選ぶのは自然ですね。しかし、この選択の積み重ねが巨大な津波となって地球の人口支持力を破壊しています。
 自滅をしたく無いのならば、便利で優秀な不滅の貨幣を捨てなければならないと考えます。
 おっしゃる様に、ほとんどの人には理解しがたいパラドックスですね。

2022/11/28 (Mon) 21:23
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 良貨

 腐らない不滅の貨幣を選ぶ人は、殆ど全員でしょう。その問題点に気づける人はまずいないでしょう。
私もguyver1092 さんの理論を読むまではその一人でした。
 しかし、兌換紙幣ではない不滅の貨幣、さらには実態の伴わない(しかし、実物を購入できる)マネー経済によって、実際のマネーは、実物の何倍(何十倍、何百倍、何千倍・・)にも膨れ上がっている現状では、一旦全てのマネーを現物に変えようとしたら、ハイパーインフレになるのは目に見えていると思うのですが、資本主義経済を是とするエコノミストたちは、どうやって合理性を説明するのでしょう?
・・説明する気はなくバブルが弾ける前に「売り逃げ」して、自分たちだけ逃げ切ろうとしているとしか思えません。
そして「その時」はもう目前かも・・?

2022/11/29 (Tue) 07:06

guyver1092

ハイパーインフレ

 そういえば、以前に寄稿した文章の中にマネーの総額が実体の商品の数倍あったと書いた記憶がありますが、そのマネーが実体の商品に向いたら、すさまじいインフレになるのは納得いく結論ですね。
 中国が、金地金を買いあさっているとの記事を最近読みました。ひょっとしたら中国はハイパーインフレを予測しているのかもしれませんね。

2022/11/29 (Tue) 21:17
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: ハイパーインフレ

マネーは、実際の商品と交換できるから(購入出来るから)価値があるのですから、マネーの量だけ商品が無い状態は非常におかしな状態です。・・たから「等価交換」の為にはハイパーインフレにならざるを得無いのではないでしょうか?
マネー経済の資本主義は、ハイパーインフレで幕を閉じるのでしょうか?
来年あたり世界同時不況が来るかもしれないと言われてますが、もうそれは「景気の波」では無くて、「資本主義の崩壊」ではないでしょうか?

2022/11/30 (Wed) 22:50

guyver1092

ハイパーインフレ

 ハイパーインフレの定義は、3年で物価が2倍になることだそうです。

https://yamahituji.com/hyperinflation-of-germany/#:~:text=%20%E7%AC%AC%E4%B8%80%E6%AC%A1%E4%B8%96%E7%95%8C%E5%A4%A7%E6%88%A6%E5%BE%8C%E3%80%81%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E3%81%A7%E3%81%AF%E7%89%A9%E4%BE%A1%E4%B8%80%E5%85%86%E5%80%8D%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AC%E3%81%8C%E8%B5%B7%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82%203%E5%B9%B4%E9%96%93%E3%81%A7%E7%89%A9%E4%BE%A1%E3%81%8C2%E5%80%8D,%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%92%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AC%E3%81%A8%E8%A8%80%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82%20%E3%81%97%E3%81%8B%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%8C%E3%82%89%E3%80%81%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84%E3%81%A7%E8%B5%B7%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AC%E3%81%AF%E3%80%81%20%E5%8D%8A%E5%B9%B4%E3%81%A7%E7%89%A9%E4%BE%A1%E3%81%8C%E4%B8%80%E5%85%86%E5%80%8D%20%E3%81%AA%E3%82%8B%E7%A9%BA%E5%89%8D%E7%B5%B6%E5%BE%8C%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AC%E3%81%A7%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82

 過去に記事を書いた時点で、マネー経済により、貨幣と実物の商品の総額の倍率は数倍まで広がったそうですので、十分にハイパーインフレになる下地はできていますね。経済の動向は私には読めませんが、そのような予想をする人がいるということは、世界同時不況をきっかけとした、世界大戦の原因足りうる資本主義経済の崩壊も十分あり得るでしょうね。

2022/12/02 (Fri) 20:09
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: ハイパーインフレ

>ハイパーインフレの定義は、3年で物価が2倍になることだそうです。

現在、世界では2年間で物価が2倍以上になる可能性のある国はたくさんありそうで怖いですね。
ドミノ式にハイパーインフレに雪崩込み、一国のみ防ぐことは困難でしょう。
IMFも苦し紛れの「声明」を出すくらいでお手上げでしょう。
第二次世界大戦後の日本も3年半ほどで100倍の物価になったとの事ですが、
ご紹介のページを見ると、第一次世界大戦後のドイツは、半年で1兆倍ですか!?
文字通り、紙幣が紙切れ同然ですね。
1990年頃のペルーで、1年間に物価が50倍くらいになった時でも、紙幣の分厚い束をひもに通して食料の買い出しに行く市民の姿の映像を見て、通貨が破綻していると思った記憶があります。
コロナ禍やウクライナ戦争は、ハイパーインフレを起こしていますが、
コロナ禍やウクライナ戦争は、資本主義、マネー経済の危機と崩壊を早めただけであって、狂った資本主義の本質的なシステムを変えない限り文明崩壊は免れないでしょう。

2022/12/03 (Sat) 07:54

guyver1092

根本

 無限成長をしなければ維持できない資本主義は理論的に考えて、有限の地球上で永続できるはずがありませんね。古くはローマクラブ等が、資本主義の崩壊(文明の)を予言しています。おっしゃる様に、コロナ禍やウクライナ戦争は、崩壊を早めたのでしょうね。

2022/12/03 (Sat) 20:50
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 根本

>ローマクラブ等が、資本主義の崩壊(文明の)を予言しています。

「成長の限界」のことですね。1972,1992,2004年版の三部とも熟読しましたが、資本主義の崩壊と言うよりも、無限成長による文明崩壊の予測ですね。
guyver1092さんのおっしゃるところの 資本主義は、拡大再生産による無限成長 が必要 と言うことで、
 成長の限界=資本主義の限界  と言えますね。
いまだに「成長の限界」は無いと言う「無限成長ロマン」を語る人が多数派で、崩壊しか無いのか・・と暗雲が立ち込める思いです。
《前編》のコメントにも書きましたが
貨幣に地球の大きさに関する制限を加えれば、資本主義は成り立たなくなる
と言うことに対し、資本主義を是とする経済学者はどのように反論(言い訳)するのでしょう?

2022/12/04 (Sun) 08:45

guyver1092

言い訳

 どのような言い訳をするのかは、見当も付きません。ただ、資本主義は、絶対の正義と重ねて主張するのは間違いないと思います。

2022/12/05 (Mon) 20:22
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 言い訳

>資本主義は、絶対の正義と重ねて主張するのは間違いない

いまだにフランシス・フクヤマみたいな考え方をする人が大多数という事ですね?
資本主義の暴走を止める事もせず、破局に至ってしまいそうです。

ところで、
記事【大転換】に、頂いた
『貨幣に地球の大きさに関する制限を加えれば、資本主義は成り立たなくなる』
というguyver1092 さんのコメントは、勿体無いので記事にして頂きましたが、
ここの記事で終わらせるのも勿体無いと思いました。
コメントも考慮して更に加筆修正して頂き、論考として何らかの学会誌に載せたいですね。

2022/12/06 (Tue) 21:45

guyver1092

鋭意努力します

 論文の書き方は知りませんが、加筆修正はボチボチやってみます。

2022/12/10 (Sat) 20:37
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 鋭意努力します

有難うございます。一つの学会誌に論考の掲載を打診してみようと思います。

2022/12/11 (Sun) 09:07
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 鋭意努力します

 エントロピー学会に打診しましたところ、検討して頂き、昨日お返事が来まして、学会誌に載せていただく運びとなりました。
ここの「雑草の言葉」に載せた記事を「草稿」としてお送りしております。追って執筆依頼が届くと思います。
よろしくお願いいたします。

2022/12/22 (Thu) 07:33
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト、「経済成長信仰」と「科学技術信仰」とによって、飛行船地球号は破裂して墜落を始めるのも時間の問題。
あくせく働いて破局に向かって突き進むくらいなら猫のようにその日暮らしをする方がよっぽどいいではないですか。脱成長によってゆったり暮らすことができる社会の実現を!
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