空飛ぶ車でまた大きな一歩・・

これでまた、人類は新たな科学技術の進歩の大きな一歩を踏み出した・・などとは到底思えません。
逆に、これでまた、文明崩壊を加速する新たな領域に足を踏み入れてしまった・・と暗雲たる気持ちになりました。
安全性や事故のリスク、騒音の問題なども指摘されています。それらも大きな問題ですが、ここでは資源の枯渇問題とそれに伴う環境破壊の問題に絞ります。私にはそれが最大の懸念です。
ヘリコプターのように、運転免許を得るのにある程度高い敷居があり、災害救助等での特別な利用に限定されているのならばまだいいでしょう。しかし、「空飛ぶ自動車」は、自動運転化されて、自家用車のような「自家用空飛ぶ乗用車」を目指しているようです。とんでも無い事だと思います。そんなことに湯水の如く使うエネルギーと資材があるのでしょうか?とんでもない資源の浪費、愚挙です。
重力加速度に逆らって空に浮いているだけで、大量のエネルギーを必要とします。
私は自動車などのメカニズムに関してはかなり疎いのですが、1点、自動車と比べてみます。
ネットに『0-100km/h加速』というのが載っていました。停車した状態からフルで加速し、時速100kmに到達するまでの時間のことです。
一般の普通車で、10秒前後が目安だそうです。日本車の市販されているスーパーカーで最も早いもので3秒ほどです。地球の重力加速度は
9.8m/s^2 ですから、3秒で
9.8m/s^2 ×3s=29.4m /s≒105km/h
すなわち、自由落下では、空気抵抗を考えなければ3秒ほどで時速100kmに到達します。つまり、空飛ぶ車を空に浮かせておくには、日本最加速性能のスーパーカー並みの加速の馬力が必要です。
自動車で平地ならば、時速100kmに達した後は、空気抵抗などに対するエネルギー分を補えば、慣性で速度を維持できますが、空飛ぶ車は、浮いている間中、地球の重力加速度に逆らって浮いている分のエネルギーの投入が必要になります。(羽とかついている場合はまた違った計算になるかも知れませんが、その辺はわかりません。)
ヘリコプターの燃費を調べてみると、軽量小型ヘリコプターで3km/ℓ くらいです。空飛ぶ車の燃費は、ヘリコプターよりは良いとしても、10km/ℓはいかないでしょう。大型トラックの燃費くらいになるのではないでしょうか?
空飛ぶ自動車は電動だから石油を使わない・・・という議論にはなりません。この計算は、ガソリン換算のエネルギー使用量の計算です。電気エネルギーも火力なら石油を燃やして発電しますし、そもそも電気エネルギーも無尽蔵なはずはありません。それどころか、供給量は石油にも全く及ばず、かなり逼迫しています。将来的にも期待に反し、供給量はそれほど増えないでしょう。それに、蓄電池の供給、環境汚染の問題もあります。さらに安全性と耐久性を備えた貴重な軽量素材の供給問題もあります。

例えば中国。かつて〜20世紀後半〜中国の都市では、広い道を沢山の自転車が走っていました。その映像は私には好ましい情景に思えましたが、一方、この自転車が自家用車に入れ替わったら、資源の枯渇と環境汚染が酷くなるだろう・・と心配していました。案の定、21世紀になって、問題は顕著化してきました。この自家用車が、さらに空飛ぶ自家用飛行機に入れ替わったら、さらに深刻な問題になるでしょう。・・と、いうよりも、もう破局のレベルじゃあないでしょうか?
こんなおバカな資源の浪費をしていれば、さらに世界は文明崩壊に大きな一歩を踏み入れてしまうのです。

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