人工元素

原子炉での主な核反応 左:中性子捕獲 、右:核分裂
内閣府バックエンド対策専門部会 1999/6/02 第23回資料より
20世紀半ば頃から、核実験や原子力発電などにより生成され環境中へばら撒かれた放射性核種は大量にあります。
「現在環境中に存在する人工放射性核種のほとんどは核実験に起因するものですが、 その放射能は自然放射能に比べると極めて少ないのが現状です。」
などと、その手の団体から発信されていますが、2つの意味で本当でしょうか?
2つの意味とは、
先ず、「核実験に起因するものがほとんど」と言うことです。チェルノブイリや福島第一原発で原子炉から外部に拡散された人工放射性核種は、原水爆の実験の1回分よりははるかに多く、何百倍、何千倍、何万倍もの放射性核種を環境中に放出した事でしょう。原発事故に限らず、原発から環境中に拡散された人工放射性核種は、公表されてないだけで、核実験のそれと比べて無視出来るほど少なくは無いでしょう。
そして、もう一つの意味とは、「その放射能は自然放射能に比べると極めて少ない」と言うことです。本当にそうでしょうか?
自然放射能は、宇宙からも降り注ぐし、大地の鉱物からも、食物からも出ています。しかし、核実験はもとより、原発から環境中に放出された人工放射性核種も大事故の時ばかりではなく、常時、大気中、海中に放出されているでしょう。無視出来るほど少ない筈がありません。少なくとも原発近くに住む住民は、原発から放出される人工元素の放射能の影響の方が自然放射の影響よりも大きいでしょう。
比較的原子番号の小さい4つの元素、原子番号43のテクネチウムTc、61のプロメチウムPm、85のアスタチンAt、87のフランシウムFr は人工放射性元素です。
鉄Fe、コバルトCoなどの元素が、原子炉の中で中性子を捕獲して出来る放射性のFe -55やCo -60なども人工放射性核種です。
超ウラン元素〔ウランUよりも原子番号の大きい元素〕であるネプツニウムNp、プルトニウムPu、アメリシウムAm、キュリウムCm、バークリウムBk、カリフォニウムCf、アインスタイニウムEs、・・・・はほとんど全てが核反応で人工的に作り出されたもので、全て放射性元素です。(地球誕生とともに自然に出来たものは、大部分は消滅してしまっています。)

原子番号の大きなアクチノイドは、ほとんどが人工放射性核種
日本大百科全書(ニッポニカ)より
例えばプルトニウム239はα崩壊します。
α線は体外からの影響は大したことがありませんが、内部被曝した場合には組織、DNAを破壊するので極めて危険です。そんなプルトニウム239は、核実験による放射性物質降下によって、既に世界中の人々の人体中にごく微量が含まれています。プルトニウム239に限らず、色々な種類の人工放射性核種が、20世紀半ば以降、人間の体の中に入り込んで放射線を出して、体を内部被曝させている事でしょう。恐ろしい事です。
昔からの定量的なデータは世界に無いのでしょうが(若しくは意図的に隠されているのかも知れませんが)人工放射性物質が量産されるようになった20世紀半ば以降、人工放射性核種の(内部)被曝によって、癌などの病気が増えているのでは無いでしょうか?

チェルノブイリ原発事故と福島第一原発事故での人工放射性核種の放出量
北海道大学 LASBOS Moodle 人工放射性核種の供給源 より
世界中には人工化学物質が溢れています。物質にもよりますが、人工放射性核種は人工化学物質よりもさらに危険な物質に思えます。
こんな代物を環境中に大量に放出する原爆、原発は、直ちに中止すべきでしょう。
地球上のあらゆる場所に、生態系に悪影響を及ぼす人工放射性核種が拡散し、人体にも入り込んでいることは恐ろしい事です。こんな物質を作り出してまで原爆、原発をやる意味は無いでしょう。深刻な「負の遺産」になるだけです。人間が制御することが出来ない原子核はいじるべきでは無いのです。原子核をいじる事は、生態系崩壊への道であると考えます。
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