反原発の気骨

タイトルは
「原発事故は再び起きる:メディアが伝えない福島第一原発と原子力産業の現在」【出版人デジタルブックレット】
です。是非拡散して多くの皆さんに読んで欲しい内容です。
ここでは、この記事の内容のごく一部:小出裕章氏が在籍していた東北大学の「原子核工学科」の学生の中で小出さんのように「反原発」になった学生と、原子力工学科の教員が大学の中で散々論争したことをクローズアップして、取り上げさせていただきます。
大学の原子核工学科の教員たちも、勿論、原子力の危険性を知っていましたので、論争は結局、学生の方に「理」があり、教員たちには逃げ場が無くなります。そこで教員たちが最後にどう言ったかと言いますと、
「俺にも妻もいれば子もいるんだ」
だったそうです。脱力です。自分達の生活を守るために「理」のないと分かっていた原発を推進した事を認めたのです。でもそれを認めただけでも、他の原発推進者のように悪魔に魂を売ってはいなかったのかも知れません。
それに対し、
「こう言う学問の場にいることはもう嫌だ」
と言った小出裕章さんと同じ原子核工学科の反原発運動の仲間の一人は、
「そう言うことを言い訳にしたくない。そんなふうにならなくて済むような仕事に就く。」と言って土方になったそうです。当時はこのような気概のある方が多かったそうです。
つまり、原発を研究した人々の中で、良心の呵責のある人は反原発になり、良心の呵責を感じ無い人物が「出世」して原子力邑を大きくして行ったのでしょう。とんでも無い構造です。・・しかし、これが典型的な社会の縮図なのかも知れません。 原子力を研究していた反原発の人々の多くは、専門を活かせない(活かしたくない)原発とは関係のない仕事に就き、ごく一部の反骨の正義漢が、京都大学熊取六人衆のように、「出世」を望まず、原発を研究しながら、その大きな危険性を発信してきました。

熊取六人衆
こんな事からも、原子力で出世した方は、善良な方はほとんどいないのでしょう。まあ、京都大学の教授連中は、熊取6人衆を大学に置いてはくれたわけですから、東大など他の大学の原子工学の教授たちよりは、多少まともだったのかも知れません。(悪魔に魂を売らなかったのかも知れません。)

私も、原子核物理には興味があって、学生時代にはほんの少しだけ、原子力をやってみてもいいかも知れないと思った事もあります。結局私は、怠け者であったし、他の分野にもっと興味関心があり、原子核物理はかじったかかじらないかくらいでやめました。だから自分にとって「原子力」は他人の世界なのですが、それでも自分が原子力を専攻していたら、どうしていたでしょう?
万が一、破綻していると分かっている原子力の仕事に就たとしても、長続きはしなかったと思いますが、かと言って、熊取六人衆のように、原子力を研究しながら反原発活動を続けられたとも思えません。精神が壊されていたかも知れません。(今でも多少壊れていますが・・)熊取六人衆は非常に意志の強い方々だと思います。敬意を表します。
ドラマの世界では間違いなく、熊取六人衆こそヒーローで、原子力邑のメンバーは巨悪のヒールでしょう。原発が「過去の最大の過ち・汚点」と歴史で評価されるようになった将来には、そのように評価されるでしょう。・・と、言いたいところですが、それはあくまで人類が滅んでしまわなかった場合です。日本に限らず人類は21世紀中に、原発の放射能その他の環境汚染・環境破壊で、滅んでしまう可能性も低くないと考えられます。原発の歴史的評価の前に、人類は滅んでしまう可能性も小さくないでしょう。
”Only the Good die young , All the evil seem to live foever(佳人薄命、憎まれっ子世に憚る?)”と言いますが、原子力の世界を見ているとその典型だと感じます。大きなモラルハザードです。
人類は「自滅の方向に邁進している愚かな存在」なのでしょうか?



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