雑草の言葉

反原発の気骨

2023/08/11
原子力 4
 家庭菜園や政治の事で話が合う、最近知り合って、親しくさせていただいている方に、小出裕章氏のインタビューの記事のURLを送信していただきました。小出裕章氏写真 小出裕章氏

タイトルは
原発事故は再び起きる:メディアが伝えない福島第一原発と原子力産業の現在」【出版人デジタルブックレット】
 
です。是非拡散して多くの皆さんに読んで欲しい内容です。

 ここでは、この記事の内容のごく一部:小出裕章氏が在籍していた東北大学の「原子核工学科」の学生の中で小出さんのように「反原発」になった学生と、原子力工学科の教員が大学の中で散々論争したことをクローズアップして、取り上げさせていただきます。
 大学の原子核工学科の教員たちも、勿論、原子力の危険性を知っていましたので、論争は結局、学生の方に「理」があり、教員たちには逃げ場が無くなります。そこで教員たちが最後にどう言ったかと言いますと、
「俺にも妻もいれば子もいるんだ」
だったそうです。脱力です。自分達の生活を守るために「理」のないと分かっていた原発を推進した事を認めたのです。でもそれを認めただけでも、他の原発推進者のように悪魔に魂を売ってはいなかったのかも知れません。
 それに対し、
「こう言う学問の場にいることはもう嫌だ」
と言った小出裕章さんと同じ原子核工学科の反原発運動の仲間の一人は、
「そう言うことを言い訳にしたくない。そんなふうにならなくて済むような仕事に就く。」と言って土方になったそうです。当時はこのような気概のある方が多かったそうです。
 つまり、原発を研究した人々の中で、良心の呵責のある人は反原発になり、良心の呵責を感じ無い人物が「出世」して原子力邑を大きくして行ったのでしょう。とんでも無い構造です。・・しかし、これが典型的な社会の縮図なのかも知れません。

 原子力を研究していた反原発の人々の多くは、専門を活かせない(活かしたくない)原発とは関係のない仕事に就き、ごく一部の反骨の正義漢が、京都大学熊取六人衆のように、「出世」を望まず、原発を研究しながら、その大きな危険性を発信してきました。
熊取六人衆そろい
    熊取六人衆
 こんな事からも、原子力で出世した方は、善良な方はほとんどいないのでしょう。まあ、京都大学の教授連中は、熊取6人衆を大学に置いてはくれたわけですから、東大など他の大学の原子工学の教授たちよりは、多少まともだったのかも知れません。(悪魔に魂を売らなかったのかも知れません。)
熊取六人衆の脱原発

 私も、原子核物理には興味があって、学生時代にはほんの少しだけ、原子力をやってみてもいいかも知れないと思った事もあります。結局私は、怠け者であったし、他の分野にもっと興味関心があり、原子核物理はかじったかかじらないかくらいでやめました。だから自分にとって「原子力」は他人の世界なのですが、それでも自分が原子力を専攻していたら、どうしていたでしょう?
 万が一、破綻していると分かっている原子力の仕事に就たとしても、長続きはしなかったと思いますが、かと言って、熊取六人衆のように、原子力を研究しながら反原発活動を続けられたとも思えません。精神が壊されていたかも知れません。(今でも多少壊れていますが・・)熊取六人衆は非常に意志の強い方々だと思います。敬意を表します。
 ドラマの世界では間違いなく、熊取六人衆こそヒーローで、原子力邑のメンバーは巨悪のヒールでしょう。原発が「過去の最大の過ち・汚点」と歴史で評価されるようになった将来には、そのように評価されるでしょう。・・と、言いたいところですが、それはあくまで人類が滅んでしまわなかった場合です。日本に限らず人類は21世紀中に、原発の放射能その他の環境汚染・環境破壊で、滅んでしまう可能性も低くないと考えられます。原発の歴史的評価の前に、人類は滅んでしまう可能性も小さくないでしょう。

 ”Only the Good die young , All the evil seem to live foever(佳人薄命、憎まれっ子世に憚る?)”と言いますが、原子力の世界を見ているとその典型だと感じます。大きなモラルハザードです。
 人類は「自滅の方向に邁進している愚かな存在」なのでしょうか?
バベルの塔1 バベルの塔2

 
にほんブログ村 環境ブログ 地球環境へ
にほんブログ村 人気ブログランキング
関連記事

Comments 4

There are no comments yet.

guyver1092

拡大再生産

>そこで教員たちが最後にどう言ったかと言いますと、「俺にも妻もいれば子もいるんだ」

 上記の教員の言葉は、資本主義社会の中で生きていくためには、人類滅亡のために働かなければならなくなるということですね。
 資本主義が人類にとって最も凶悪なシステムであることを如実に表していると感じます。

 地球生命圏が存続するためには、猛毒システムである資本主義を抹殺しなければなりませんね。

2023/08/12 (Sat) 21:10
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 拡大再生産

今回の記事は、これまでの記事とは異色で、反原発と原発推進の人間性について書いたのですが、guyver1092 さんのコメントの

>資本主義が人類にとって最も凶悪なシステムであることを如実に表していると感じます。

に、なるほどと思いました。社会システムからの考察ですね。

>地球生命圏が存続するためには、猛毒システムである資本主義を抹殺しなければなりませんね。

全くその通りだと思います。資本主義は急速に世界の生態系を破壊していますね。
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/cat39032307/index.html

2023/08/13 (Sun) 06:03

青っチャン

なるほど

小出裕章氏の「原発事故は再び起きる:メディアが伝えない福島第一原発と原子力産業の現在」【出版人デジタルブックレット】を何度も読み返しました.
素人にも解るような優しい語り口ですが,内容はとても深刻で啓蒙されるインタビュー記事で雑草Zさん同様に多くの方々に読んで欲しい,また知っておくべき内容と思いました.
原発再稼働・新増設に舵を切った岸田現政権に,主権者である多くの国民が「原発NO!」の意思表示を強くしなければならないと考えます.
小出裕章氏のインタビュー記事はマスコミには取り上げられないでしょうから,その為の切っ掛けとして「雑草の言葉」のようなミニコミやツイートで拡散していくしか無いと思います.

「反原発の気骨」は小出氏のインタビュー記事紹介文として「なるほど」と思わせる切り口で面白く拝読いたしました.
>人類は「自滅の方向に邁進している愚かに存在」なのでしょうか?
と最後に問いかけられ,改めて小さな自分に何が出来るだろうか,何をすべきかを考えさせられました.
 

2023/08/14 (Mon) 11:28
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: なるほど

「原発事故は再び起きる:メディアが伝えない福島第一原発と原子力産業の現在」
は本当に内容が深刻で、仰るように主権者である多くの国民が「原発NO!」の意思表示を強くしなければならないと思います。
本来ならば、広島、長崎で原爆を投下され、福島でも原発事故を起こしてしまった日本は政府自ら脱原発を強く押し進めるべきですが、岸田首相は広島出身にも関わらず、放射能の恐ろしさを知らないようです。ここまで無知で、財界の言いなりで、まともなイデオロギーを持たない首相は日本の恥部と言えるでしょう。

>ミニコミやツイートで拡散していくしか無い

の通りだと思いますが、そういう深刻な内容は読みたく無い、政府が大丈夫だと言っているから当分大丈夫だろうと漠然と思っている人も沢山いるのでしょう。3.11原発震災の前の状態がまさにそうでした。財界、産業界も、原発がどんなに危険でも経済を優先させたいという狂った金の亡者で溢れているようです。「今だけ、金だけ、自分だけ」と言う財界人、政治家のなんと多いことでしょう。「新自由主義」と呼ばれているものも、まさにそんな感じでしょう。

>人類は「自滅の方向に邁進している愚かに存在」なのでしょうか?
と書いたのは、本当にそう感じるからです。21世紀は「バラ色の未来」ではなく「崩壊の世紀」だと考えております。その深刻な崩壊を出来るだけ小さく抑える方向にしたいものです。

2023/08/15 (Tue) 06:50
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト、「経済成長信仰」と「科学技術信仰」とによって、飛行船地球号は破裂して墜落を始めるのも時間の問題。
あくせく働いて破局に向かって突き進むくらいなら猫のようにその日暮らしをする方がよっぽどいいではないですか。脱成長によってゆったり暮らすことができる社会の実現を!
にほんブログ村 環境ブログへ
原子力