人工光合成

中学生の頃、父に買ってもらった「辞典より詳しい」という分厚い理科の参考書に光合成の事が書いてありました。そこには光合成のエネルギー変換効率は50%以上であり、人間が作ったシステムでは到底真似できないものであると言うような事が書かれていました。光合成の偉大さに感銘を受けました。それ以来光合成は神業であり、人間には追随できないものであると考えていました。(現在、植物の光合成によるエネルギー変換効率は1%以下とも言われているようで、その定義、整合性はよくわかりません。)
〜時は流れて21世紀になって・・・〜
数年前に当時の職場の同僚に、「人工光合成技術は素晴らしい。地球温暖化も解決するかも知れない」と言う話をされた時は、そんな研究が進んでいるんだ・・と驚きました。光合成信奉者の私は「そんな馬鹿な、眉唾ではないだろうか?いいとこばかり宣伝された情報に騙されているんじゃないだろうか?」と思いつつも、全く知らなかった情報だったので、熱心に話す彼の話を聞くだけで、反論はしませんでした。

資源エネルギー庁より “「光合成」と「人工光合成」の概念”
今、検索して、資源エネルギー庁や産総研の最新情報を見ても、確かに
CO2を“化学品”に変える脱炭素化技術「人工光合成」:資源エネルギー庁
太陽とCO2で化学品をつくる「人工光合成」、今どこまで進んでる?:資源エネルギー庁
産総研マガジン “人工光合成とは”
詳しくは、それぞれのH Pを見て頂くとして、
「植物の光合成の10倍以上の効率を達成」
と「凄い技術力」をアピールされて、
『大幅なCO2排出量の削減にとどまらず、・・「CO2の固定化」を通じて脱炭素化の実現に大きく貢献すると期待されています。』
なんて書かれると、「これで地球温暖化は防げる」なんて

資源エネルギー庁より “人工光合成を実用化した時のプラントイメージ”
こんな広いプラントを作るならば、農地にする方が遥かにいいのでは?
しかし、そんなに期待できる事でしょうか? 装置の生産、運搬、メンテナンス、廃棄一切の資源やエネルギーの消費を考慮せずに、「植物の光合成を上回った」と言うのは軽率過ぎるでしょう。そこまで考慮すれば、植物の光合成の能力を上回る事はないでしょう。もしあるとしてもそれは遠い未来のことで、その技術をあてにしていたら、破局までには全く間に合わないでしょう。

“人工光合成の実験風景” 産総研マガジンより
光合成をしっかり行う緑色植物が太古の昔よりあるのです。しかも、植物は光合成で「食物」まで作ってくれるのです。肉なども、他の動物が食べた植物の有機物が元になっていると考えれば、人間(全ての動物)の食料の100%は植物の光合成が作り出しているのです。素晴らしい事です。こんなに完璧なものがあるのに、人工光合成に大きな期待を掛ける意味がわかりません。待った無しの環境問題を解決するためには、現在でも非常に有効な植物の活用を今以上にもっともっと考える事が遥かに優先でしょう。

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かなり以前書いた関連記事です→【光合成】 2006/10/06
参考になるブログ記事です。→ 爽風上々のブログ【ちょっと困った科学成果発表、豊田中研が「植物を上回る光合成開発」】
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