雑草の言葉

CCSと地震の因果関係

2023/10/05
CO2 6
 CCS[Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素の回収と貯留]では大量の二酸化炭素を非常に高い圧力で地層に圧入します。
その圧力は、100~200気圧と言いますから、とんでもない圧力ですが、このくらい高い圧力でなければ地層に圧入などできないのでしょう。
CCSの流れ
資源エネルギー庁のHPより

 でもそんなに高圧で地層に気体(や液体)を大量に圧入すれば、元々安定していた地層であったとしても不安定になり、CO2が漏れ出してきたり、地割れや隆起、土砂崩れなどを起こしそうだと、素人でも危惧するのでは無いでしょうか?
 実際に、一部の地震学者からは、地震を引き起こす可能性があるという警鐘が鳴らされてきました。素人的には、地震を起こす程、大きな影響があるのか?と驚きましたが、非常に高い圧力で大量に圧入すれば無きにしも非ずです。

 警鐘を鳴らしてきた地震学者の一人、日本の島村英紀氏は、3.11東日本大震災の後に発表された震度が9.0に変更されたことのトリックについても説明されています。2011年当時、講演を聞きに行きました。納得の内容で、かなり信頼のおける方だと言う印象を持ちました。【人の手が新たな地震を生み出しているのか 二酸化炭素を地下に圧入する実験】


 そして、彼の懸念の通り、2018年9月6日に最大震度7の揺れを観測した北海道胆振〔いぶり〕東部地震が起こりました。この地震で、災害関連死を含めて44人が死亡、785人がけがをしました。大規模な土砂崩れが起こった吉野地区では、19人が亡くなりました。
北海道胆振東部地震 国土交通省
 

 この地震に関して「北海道胆振東部地震」で検索すると、Wikipediaを含め、CCSとの関係が一切書かれていないサイトが上位を占めます。
 
更に、「CCSと北海道胆振東部地震」で検索すると、【日本CCS調査株式会社という団体のHP】が真っ先にいくつか出てきて、
「CO2の圧入による影響が本地震の震源まで及んだとは考えられません。」
「両者に因果関係があるとは考えられないとの共通認識が委員の間で得られました。」
等と記されています。
根拠として
「苫小牧CCS実証試験では、主に苫小牧港の沖合約2kmの海底下の深さ約1,000mの萌別層にCO2を貯留して・・・(中略)・・・北海道胆振東部地震の震源は、貯留地点より水平距離で約31km離れた胆振地方中東部の深度37kmで発生しています。実際のCO2が圧入された地層と地震の震源が位置する地層とは連続性がなく、CO2の圧入による影響が本地震の震源まで及んだとは考えられません。」とあります。【平成30年北海道胆振東部地震は、CCSが原因ではないのでしょうか。
確かにこの記述を読む限りにおいて、CCSが北海道胆振東部地震の直接の原因とは考えにくいでしょう。しかし、地震による被害の拡大に関しては、因果関係が無かったとは言えないのでは無いでしょうか?すなわち、CO2の圧入によって、CO2が地層の遠くまで拡散して、地盤が緩んで、土砂崩れを誘発した・・など、色々想定できるでしょう。その可能性は否定出来ないでしょう。
 これだけ甚大な被害を出しておいて、「CCSが地震を誘発した」若しくは「地震による土砂崩れなどを誘発した可能性が高い」などと発表でもしたら、非常に大きな責任問題ですので、もし仮にCCSと地震(による土砂崩れなど)の因果関係が認められたとしても、経済産業省も日本CCS調査株式会社も因果関係は、認めないでしょう。
さらに「北海道胆振東部地震の原因はCCS」で検索してみると
鳩山由紀夫氏「北海道の地震はCCSによる人災」はなぜデマなのか?
という記事が見つかりました。そう言えば、「鳩山由紀夫氏が、地震に関するデマを流したと北海道警察により認定された」・・等と言うニュースを見た記憶がありました。当時はそれだけの簡単な報告のニュースでしたし、鳩山氏の弟も宇宙人とどうのこうの・・というとんでも無い発言をしていたので、「兄貴はまともだと思っていたのに同類か?」くらいしか思わず、それ以上の内容は調べませんでした。
鳩山由紀夫

でも今この記事を読むと、鳩山由紀夫氏は、
「地震は苫小牧での炭酸ガスの地中貯留実験CCSによるものではないか?」
というように、断言口調では無く疑問形のようですので、警察がデマ認定するのはやり過ぎです。
 地層に高圧で気体や液体を送り込めば、地層に変化が現れ、地盤も脆くなる事は、普通に考えても当然の帰結です。それが地震にまで発展したかどうかは疑問ですが、否定はできないでしょう。
 地震が起きないとされていたアメリカのオクラホマ州などでも、シェールガスの採掘の為に、液体に高圧をかけて地中に圧入してから地震が起こるようになったとの事ですし、地震が起きなかったオランダでも天然ガスの採取によって地震が起きて騒ぎになっています。

 CCSはとんでもなく馬鹿げた方法であるだけでなく、危険な方法でもあるのです。
 CCSがエネルギーの浪費であり、環境破壊・環境汚染を促進するとんでも技術である事は、先の記事【CCSとCCUS】2023/09/23 に書きました。

「小さな節約を徹底するよりは、新たな技術の登場が必要かもしれません。」
などとCCSを応援、後押しするサイトもありますが、逆でしょう。大量生産・大量消費で大量に廃棄物を出す現在のシステムこそが問題です。大気中のCO2を削減したいのであれば、放出してから回収して地層に埋めるなどという非能率的でエネルギー浪費的で環境破壊的な方法ではなく、初めから排出を抑えることの方が、遥かに簡単で効果的な方法でしょう。
 
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Comments 6

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爽風上々

地震など起きないとしても

地震を引き起こす危険性もあるでしょうが、私の恐れるのは巨額の金を何の効果もないまま盗まれるも同然となることです。
おそらく封入したはずの二酸化炭素も多くは漏れ出てしまい送り込んだ量よりはるかに少ない量しか保持されないでしょう。
それでも大気中の二酸化炭素濃度に影響が出るほどではないため、そこに本当に二酸化炭素が溜められているか誰にも分からないはずです。
そのようないい加減な技術でもそのための装置はおそらく数百億かそれ以上。
その装置の製造メーカー、実施主体のプラント会社にとんでもない金が移動する(=盗まれる)のが実情となるでしょう。

2023/10/05 (Thu) 20:47

☘雑草Z☘

Re: 地震など起きないとしても

>おそらく封入したはずの二酸化炭素も多くは漏れ出てしまい送り込んだ量よりはるかに少ない量しか保持されないでしょう。
>それでも大気中の二酸化炭素濃度に影響が出るほどではないため、そこに本当に二酸化炭素が溜められているか誰にも分からないはずです。

おっしゃる通りだと思います。非常に高い圧力で大量に地層に圧入しますので、かなり漏れ出してしまい、穴の空いたタイヤに空気を入れているような状態でしょう。

 このようないい加減な狂った技術を考えるおかしな技術者はごくたまにいるでしょうが、その提案を真に受けて、国に提案する企業もその提案を受け入れる経済産業省も狂っています。そんなどうしようもない技術に湯水の如く予算をつける経済産業省は税金泥棒です。経済産業省は環境対策という事に名を借りて、利権を作り出しているのでしょう。この手の詐欺的亡国的技術が溢れています。

2023/10/06 (Fri) 06:01

爽風上々

差し引きゼロの怪しさ

化石燃料使用の削減はできないのは明らかなので何とか誤魔化そうというのが「実質ゼロ」といった変な計算で済まそうというものです。
森林の吸収も相当怪しいものを含んでおり、すでにブラック化しているようですが、それ以上に問題なのがこの地中封入というものでしょう。
ちょうど石油価格の高騰も激しい折から、ここで使用削減に方向転換をすれば良さそうなものなのですが、そういった方向性は全く考えられないようです。
グリーンウォッシュなどと言われていますが、もともと真黒なものはいくら洗ってもグリーンにはならないでしょう。
一応科学や技術を知っているだけの人間が作りだした詐欺的手法に皆が群がってそれが確実な科学的方法のように見せる。
まともな論議ができるような状況にはもう戻せないところまで行ってしまったようです。

2023/10/06 (Fri) 10:48
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 差し引きゼロの怪しさ

企業のイメージアップの宣伝などで「CO2 実質排出ゼロ」がよく謳われていますが、本当にひどいものだと思って見ております。
本当にこれぞグリーンウォッシュだと思いますが、仰るように見え見えのグリーンウォッシュなのにも関わらず、グリーンウォッシュと気が付かない、若しくは認めない連中が各国の環境対策を指導しているようであれば、世も末です。おっしゃるように
>まともな論議ができるような状況にはもう戻せないところまで行ってしまった
のかも知れません。

>ちょうど石油価格の高騰も激しい折から、ここで使用削減に方向転換をすれば良さそうなもの

環境の面からも資源の面からも、ここで大幅に使用削減に舵を切らなければ間に合わないでしょう。まだ気が付かないとは、人類は愚か過ぎる存在なのでしょうか?

2023/10/07 (Sat) 08:37

guyver1092

シェールガス

 以前、アメリカのシェールガスの採掘の盛んな地域では、水道水が燃えるという記事を読んだことがあります。

https://michinao.hatenablog.com/entry/20120529/p2

 地下に押し込んだ二酸化炭素も、シェールガスと同じく漏れ出すと考えた方が正しいでしょうね。

 後、地震の件ですが、膨らませた風船を箱に押し込んだ状態で、一つの風船にだけさらに空気を入れた場合に、他の風船に影響がないなどあり得ません。
 31キロ離れている連続性のない地盤だから影響がないと言うことは、人類の知らない現象は存在しないと主張すになります。無いことを証明するのは悪魔の証明と言われており、非常に難しいのです。それを簡単に言い切るのは、傲慢にもほどがあります。

2023/10/08 (Sun) 20:00
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: シェールガス

私も水道水にシェールガスが混じって燃えるというTV か動画を観た記憶がありました。おっしゃるように
>地下に押し込んだ二酸化炭素も、シェールガスと同じく漏れ出すと考えた方が正しいでしょう。
圧入した二酸化炭素を全部ずっと閉じ込めて置くなど不可能でしょう。

地震の件に関して、
>膨らませた風船を箱に押し込んだ状態で、一つの風船にだけさらに空気を入れた場合に、他の風船に影響がないなどあり得ません。31キロ離れている連続性のない地盤だから影響がないと言うことは、人類の知らない現象は存在しないと主張することになります。

非常に分かりやすい、説得力のあるご説明だと思いました。確かに

>無いことを証明するのは悪魔の証明と言われており、非常に難しいのです。それを簡単に言い切るのは、傲慢にもほどがあります。

guyver1092さんのご見解の方がずっとまともだと思いました。
北海道胆振東部地震では、たくさんの犠牲者を出したので、CCSとの因果関係の可能性を示唆すれば、重大な責任問題になりますので、因果関係を否定したのでしょう。そのくせ、地震の後にこのCCSの実験は(期間が終了したという理由で)停止したようですので、何らかの因果関係の可能性があったのではないかと思います。CCSを推進している連中は信用できません。

2023/10/09 (Mon) 17:09
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト、「経済成長信仰」と「科学技術信仰」とによって、飛行船地球号は破裂して墜落を始めるのも時間の問題。
あくせく働いて破局に向かって突き進むくらいなら猫のようにその日暮らしをする方がよっぽどいいではないですか。脱成長によってゆったり暮らすことができる社会の実現を!
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