雑草の言葉

オーバーシュート・シナリオ

2024/02/23
CO2 4
Overshoot Scenarios”は「(持続可能な)限界を越えた場合の起こりうる事態」と言った意味です。「“Overshoot”も“Scenarios”も、「成長の限界シリーズ」で頻繁に使われていた用語です。
バベルの塔2

 しかし、現在この用語は、二酸化炭素地球温暖化について特化した用語として使われることが殆どのようです。そしてかなりいい加減な柔軟な使われ方をしているように感じます。すなわち、かつてデッドラインとされた温室効果ガス濃度450ppm[CO2換算]は、もう直ぐ過ぎようとしているのにも拘らず、経済優先だから、仕方がない。オーバーシュートしても(超えてしまっても)科学技術で将来的に450ppm以下に戻せば問題ない・・のようにIPCC[気候変動に関する政府間パネル]は述べているのです。
CO2濃度の長期推移 気象庁より
  大気中二酸化炭素の世界平均濃度の経年変化 気象庁

地球環境センターニュースの「地球温暖化の将来予測と緩和策
にさまざまな「シナリオ」が記されています。一つ一つ引用すれば長くなりますので、簡潔にまとめられた
EICネットの環境用語集の<オーバーシュートシナリオ>の記述を引用します。

 オーバーシュートシナリオ
地球温暖化による温度上昇を2℃以内に収めるためには大気中のCO2濃度を450ppm以下に留める必要がある。しかしながら、既に430ppm程度まで達している現実を踏まえ、一時的に450ppmを超えるが早急に、450ppm以下に落ち着かせるというシナリオである。一時的に450ppmを超えても100年程度の間の累積排出量が450ppm以下の場合と同様であれば、環境影響は450ppm以下に抑えた場合と同様となるという考え方に基づく。
当面は、経済的に無難な削減策により、濃度は550ppmまで一時的にオーバーシュートするが、将来の大胆な温室効果ガス削減技術により、450ppm以下まで減らすというもので、いずれにしても大気中に一度放出されたCO2を回収し、大気中濃度を将来下げるというもの。多くのオーバーシュートシナリオでは、バイオマスCCSや広範な植林を想定しているが、実現可能性は低いとの指摘もある。(2015年7月作成)
  (以上引用終わり)


一時的に450ppmを超えても100年程度の間の累積排出量が450ppm以下」と言う表現は奇妙です。450ppmを超えた時点で「累積排出量」はそれ以下には下がりません。そうではなくて単に100年後くらいの大気中の濃度が450ppm[CO2換算]以下なら途中経過はどうでもいいと言うことでしょう。「その間450ppmを超えても環境影響は450ppm以下に抑えた場合と同様となるという考え方」ってどんな考え方なのでしょう?「スピード違反しても、到着までの平均時速が制限時速以下ならば違反にはならない」と言っているようなものです。いい加減過ぎるでしょう。
続く後半の記述は更に脱力的です。
将来の大胆な温室効果ガス削減技術により、450ppm以下まで減らすというもので、いずれにしても大気中に一度放出されたCO2を回収し、大気中濃度を将来下げる
って、まともじゃないです。最後に「実現可能性は低いとの指摘もある。」とありますが、全くその通りで、実現可能性は殆どないでしょう。「問題の先送り拡大深刻化」です。一度大気中に拡散してしまったCO2を(科学技術で)回収するってどれだけ非効率か知らないのでしょうか?海に拡散してしまった塗料を回収するようなものです。エントロピーの法則です。CCSなんて馬鹿馬鹿しいものに期待できる筈もありません。植物の光合成に使って貰うのが最良の方法です。過去に書いています。【CCSとCCUS

 そもそも、以前IPCCは「産業革命前に比べた世界の平均気温上昇が1.5℃を超えると破局する危険がある」と警鐘を鳴らしていた筈です。地球の平均気温がその「臨界点」を超えたら温暖化のスパイラルに陥り、環境は後戻り出来ない筈ではなかったのでしょうか?
 本当に産業革命以来の温度上昇を2℃以下に抑えるためにCO2濃度を450ppm以下に抑える必要があるのであれば、直ちに化石燃料の使用を全面ストップするべきでしょう。
 最近になってIPCCでは、2℃450ppm以下と言う目標は極端であったとも言っています。そして(2100年の)上昇温度を1.5°C、2°C、3°C、4°C・・・の場合でそれぞれオーバーシュート有り無しでシナリオを揚げています。(それを読むと、同じ温度上昇でもオーバーシュートありの場合の方が、環境負荷は大きくなるという極めて当然の結果を示しています。先の「途中で450ppmを超えても環境影響は450ppm以下に抑えた場合と同様となるという考え方」とは明かに矛盾しています。)パターン別の予測は、未来予測としては的確な方法であると思います。そして450ppm2℃パターンでも、かなり深刻な事態に陥る可能性も低くないと言うシナリオです。

世界の平均気温の長期推移 気象庁
  世界の年平均気温偏差 気象庁

 何れにしても「当面は、経済的に無難な削減策」なんて事を言っていていいのでしょうか?必ず科学技術が解決してくれると確信しているのでしょうか?それとも「その程度の深刻さ」って事でしょうか?地球が「臨界点」を超える可能性も低くないのでしょう?人間や他の生物も住めない環境になるのでしょう?それなのに提言としていい加減過ぎます。

オーバーシュートシナリオのほとんどは、今世紀後半において燃焼時に発生するCO2を分離回収する装置のついたバイオマス発電[BECCS:Bio-Energy with Carbon Capture and Storage]や植林が広範に行われることを前提としているとのことですが、そんな「取らぬ狸の皮算用」してていいのでしょうか?植林だって、消失している森林面積をカバー出来るかどうかさえ怪しいのです。まして、BECCSなんてそんなに効果は認められない事でしょう。BECCSによってさらに樹木が伐採されるかも知れないのです。そもそも、植林とBECCSはトレードオフの関係にあるのです。その効果が有効であるためには、CO2排出量を大幅に減らすしかないことは火を見るより明らかです。結局はエネルギーの消費量を大幅に減らすと言うシンプルな方法が最も有効なのです。

 兎にも角にも見込み薄な「新しい技術の開発」や「政策」に期待を掛けて待っているのではなく、「予防原則」と言うのであれば、化石燃料使用の大幅削減に限定せず、エネルギーと資源消費の大幅縮小を達成しない限り、オーバーシュートシナリオは破局に繋がるだけでしょう。

バベルの塔1

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Comments 4

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guyver1092

主張する削減策

 彼らが主張する削減策は実際はは爆増策ですので、その場さえごまかせれば彼ら的には問題ないのでしょうね。
 彼らの主張する温暖化対策はね実は逆の効果しか発揮しませんので逆に考えて二酸化炭素が増加しても地球は温暖化しないという皮肉をずつと言い続けているのですが、記事での彼らの主張からすると、二酸化炭素では地球は温暖化しないと考えてもそれほど的外れではなさそうです。

2024/02/26 (Mon) 20:20
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 主張する削減策

>彼らが主張する削減策は実際はは爆増策

今の所、そう捉えられても仕方がない削減策ですね。BECCSなんて、その典型でしょう。もし彼らがその場凌ぎで誤魔化しているとすればとんでもない事です。
 一方、現状では、ここ何十年かは地球が温暖化しているように見えます。その主因がCO2か、それ以外の温室効果ガスかはたまた温室効果ガス以外の熱源などかはわかりませんが、対策は必要かと思われますが、如何でしょう?やはりエネルギー消費の削減が確実な方法かと思います。本当に直ぐにもオーバーシュート状態になるのなら、尚更です。拡散してから回収よりもはじめから出さない事でしょう。

記事にも書きましたが、
「一時的に450ppmを超えても100年程度の間の累積排出量が450ppm以下の場合と同様であれば、環境影響は450ppm以下に抑えた場合と同様となるという考え方」
は理解できますでしょうか?無茶苦茶な考え方だと思えるのですが。馬鹿馬鹿しくなって来ます。

2024/02/27 (Tue) 19:51

guyver1092

行動で判断

 文明の破壊が目的の人々は、いろいろ理屈をこねていますが、彼らの言うことは、彼らの真の目的である文明崩壊を引き起こすために、問題を矮小化してすり替えることが目的なのでしょう(本文でもおっしゃっておられますね)。
 文明の存続のために行うべき行動は、二酸化炭素対策ではなく、地球生態系の人口支持能力の維持であり、具体的には「経済をマイナス成長させること」で、「二酸化炭素は、マイナス成長の結果削減されました」ぐらいでよいのではないでしょうか。
 人類は、経済成長のために森林を食いつぶし、結果として水循環を破壊し、生態系の存続になくてはならない淡水の消失を招いています。しかし、IPCCは二酸化炭素削減については熱心に主張しても、人口維持に必要な農地と森林の減少には無関心です。おっしゃるように対策は必要と考えますが、現在の対策は、方向が間違っている以外の何物でもないでしょう。

2024/02/27 (Tue) 21:12
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 行動で判断

>文明の破壊が目的の人々

以前は、そんな人々なんているのかと思っておりました。guyver1092さんは、比喩的に使っているのかと思っておりました。
しかし、そんな事を本気で考えているようなカルト宗教もあるようです。
ある意味、かつてのオウム真理教もそんな面も持っておりました。
そして、現在もハルマゲドン(聖書の予言である最終戦争)を心待ちにしている人達が信者に大勢いる宗教(カルト)もあるようです。

現在のパレスチナで起こっている事は許されざるジェノサイドですが、その戦争をもっと中東地域全体まで拡大したい勢力もあるようです。更に第三次世界大戦まで広げたい人達さえいるようにも見えます。それで覇権を握りたいのかも知れませんが、第3次世界が起こったら共倒れ・・というか、世界が破局するでしょう。
>文明の破壊が目的の人々
は、その目的で何を達成したいのでしょう?

>IPCCは二酸化炭素削減については熱心に主張しても、人口維持に必要な農地と森林の減少には無関心です。
これは本当に欺瞞ですね。

>文明の存続のために行うべき行動は、地球生態系の人口支持能力の維持であり、具体的には「経済をマイナス成長させること」
全くその通りです。オーバーシュートしてしまっている現在、持続可能な限界の下まで落下はマズいですが、急速に落ちないと悲惨なことになるでしょう。

2024/02/28 (Wed) 18:35
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
無理に経済成長させようとするから無理に沢山働かなければなりません。あくせく働いて不要なものを生産して破局に向かっているのです。不要な経済や生産を縮小して、少ない労働時間で質素にゆったり暮らしましょうよ!「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト。
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