二酸化炭素への換算・・
いわゆる温室効果ガスと言えば、二酸化炭素が連想されて、他の温室効果ガスは知らない人も多いのではないでしょうか。他の温室効果ガスと呼ばれるメタン、一酸化二窒素、代替フロン等の排出量も、地球温暖化係数というもので二酸化炭素に換算されて総量で表されます。
地球温暖化係数を見ると分子一個当たりの温室効果は、温室効果ガスに指定された気体の中で二酸化炭素が一番小さいのです。・・・それでも、温室効果ガスと言えば二酸化炭素が代表であるのは、温室効果ガスの中では濃度が抜群に高い事と、地表における地球放射強度の一番強い波長15μm付近の赤外線を吸収するからでしょう。だから、指定された温室効果ガスの中では温室効果が一番大きいということになっているようです。(水蒸気のほうが遥かに大きいのですが、温室効果ガスには指定されていません。)
温暖化係数は、二酸化炭素を1として、他の温室効果ガスを(1以上の)整数で表していますが、分子構造によって、吸収する波長帯が違うので、その総和で温室効果ガス排出量を語る事は、あまり合理的ではないように感じます。二酸化炭素の吸収帯15μm付近は、既に二酸化炭素に十分に吸収されているから、これ以上二酸化炭素濃度が増えても二酸化炭素の温室効果は増えない・・という懐疑論もあります。再放射どうのこうのと言う議論がありますが、温室効果は二酸化炭素濃度の対数に比例・・・と言うところでしょう。
温室効果ガスの中ではやはり二酸化炭素が一番安全で無害な感じが致します。例えば一分子あたり、代替フロンガス等(ハイドロクロロフルオロカーボン[HCFC]類 、 ハイドロフルオロカーボン[HFC]類など)の温室効果は二酸化炭素の数百から数万倍になる…と言われていますが、温室効果よりももっと深刻な他の害もありそうな感じがします。
環境汚染物質は様々な種類があります。そんな中で二酸化炭素は、いわゆる「温室効果」のみで悪玉扱いされていますが、環境汚染物質には入れる必要がないくらいクリーンな物質です。
しかし、地球温暖化が最大の環境問題のようにプロパガンダされている現在、二酸化炭素換算の排出量が環境汚染度を測る一番の指数のようにさえ扱われています。
この事実は非常に由々しき事ではないでしょうか?
例えば、塩化ビニル等、有機塩素化合物は燃やした時の二酸化炭素換算量などたかが知れています。そんなことよりも毒であり、燃やしてもダイオキシンなどの猛毒を発生する事のほうが問題でしょう。有機塩素化合物の環境負荷を、燃やした時の二酸化炭素排出量換算で語る事なんてナンセンスもいいところでしょう。しかし、二酸化炭素温暖化説がクローズアップされた現代は、そんな本末転倒な認識さえまかり通る勢いです。
最も愚かな例が原発でしょう。一時廃止の方向に進んでいた原発も、二酸化炭素排出量削減・の大義名分のもとに、また推進運動が活発になっています。原子力発電所を運転すれば必ず出る放射性物質の有毒性(・・放射性物質は物理的放射線による被害なので、「毒」という言葉には抵抗がありますが・・・)は二酸化炭素の比ではないでしょう。二酸化炭素と放射性物質を天秤にかけたら、二酸化炭素など有害性はほとんどないに等しいでしょう。・・・原発は割に合わない危険な事である事は明らかなのに、天秤にも掛けずに、二酸化炭素排出がない、という理由で、原発が推進されています。(・・ライフサイクルで見れば、二酸化炭素放出も火力発電よりも多い筈です。・・)
二酸化炭素を100万トン排出するよりも、放射性物質を1トン廃棄するほうが、遥かにシビアな問題でしょう。(放射性廃棄物にも色々レベルはありますから一概には言えませんが・・)放射性廃棄物にも色々レベルはありますが、低レベル放射性物質の中にも恐ろしい物質は存在します。代表的なものがプルトニウムでしょう。プルトニウムは、1㎏もあれば世界の全人口の致死量になり得るようです。日本の原発だけで、年間にこの致死量の10倍以上のプルトニウムが発生しています。
日本の年間の二酸化炭素排出量は10億トンのオーダーですが、放射性廃棄物は1万トンのオーダーです。そのうち高レベル放射性廃棄物は500トンくらいです。放射性物質の生成は、二酸化炭素の排出よりも先に規制するべきでしょう。
地球温暖化説を完全否定する積りはありませんが、地球温暖化の脅威だけがクローズアップされ、その中でも二酸化炭素排出削減が中心になっている地球温暖化対策はかなり本末転倒と言うべきでしょう。
地球温暖化問題が本当だとしても、もっとシビアで急を要する環境問題は幾つか存在します。それなのに現在、環境問題の中で地球温暖化問題だけがクローズアップされ過ぎています。その為、二酸化炭素に換算された温室効果ガス削減ばかりが大きな声で叫ばれています。
COP15で、原生林などの森林伐採が禁止される事は歓迎すべきだと考えますが、温室効果ガスの削減ばかりに躍起になって一喜一憂しているうちに、気が付くと、他の環境問題が深刻化して取り返しのつかない状況になっている・・という可能性が高いのではないでしょうか?。二酸化炭素換算排出量は、環境問題の中で最も大きな意味を持った数値ではないでしょう。「低炭素社会の実現」なんて言葉を聞く度に本末転倒と感じます。もっと深刻な環境問題に目を向けるべきでしょう。
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