看板ばかりの自由市場
資本主義社会は、市場原理主義に支えられた自由市場経済社会と言われています。少なくとも資本家や、政府はそのように言っていることでしょう。・・・本心はそう思っていなくても・・・・でも現在そんな自由市場はどこにあるのでしょうか?限定された狭い範囲での自由競争しかないでしょう。
例えば日本の交通産業を考えましょう。最近自動車産業に鉄道会社やフェリーの会社が押されたのは、単に国の政策で、高速道路利用料金を格安にしたり、自家用車の購入に補助金を付けたりしたからでしょう。ただそれだけの事。自動車産業が市場で努力して自由競争に勝ったからではありません。自動車会社が企業努力で勝ったものがあるとすれば、政治家への働きかけでしょう。自動車産業が政治家との癒着によって優遇されただけのことです。受益者負担の原則により、高速道路料金をしっかりとらないのは不公正で酷い話です。「エコ替え」の名の下に補助金を出して自動車を購入させる手法はもはや詐欺としか言いようがありません。本当に「エコ」というのなら、出来るだけ車を使わないことです。自家用車を持っていない人にこそ補助金を出すべきでしょうし、そうでなくとも大量輸送機関である鉄道会社やバス会社などにこそ補助金を出すべきでしょう。(・・余談ですが、航空会社に出す必要はないでしょう・・。)・・補助金制度自体あまりいい場合はないと思いますので、基本的には出さなくていいと思いますが、出すとすれば、自家用車を使わない人々にこそ出すべきでしょう。・・・「エコ」という言葉が、自由競争に反する政府の行為の正当化に使われているのです。それも実際は更なる環境悪化を招くだけです。その補助金は税金から支払われるわけで、日本の借金は増える一方です。
ひと昔前は公共工事が政府と土建業者の癒着の最たるものでした。公共工事の癒着も減っているとは言え、まだまだ多いし、そこでもしっかり自由な競争が行われているとは言えません。しかし不用な公共工事が多く、散々批判されて流石にこの頃は減ってきました。その分現政権は、自動車業界や電気製品業界と癒着したわけです。
いわゆる途上国などへのプラント輸出などは癒着構造の典型です。プラント輸出自体大型プロジェクトですから一部の大企業しか参加できません。例えば日本の企業のプラントを海外へ輸出するとき、日本と相手国の政府がしっかり間に入りますが、自由市場と呼べる筈も御座いません。大型プラントだけではありません。現在民主党政権が力を入れている、いわゆる途上国への原発建設など、国家プロジェクト化していますが、話しが決まっても、儲けるのは日本の関連企業だけでしょう。
物が有り余っっている現在、国が借金して政府はその借金で儲けさせる産業を決めて直接間接投資しているだけです。とても自由市場とは呼べません。共産主義国の計画経済と共通しています。違いと言えばそれで儲ける人間が共産主義国家では主に政治家や官僚などの為政者側、資本主義では資本家の儲ける割合が多くなる事くらいでしょうか?・・癒着している両者が儲ける事を目的にしている事に変わりありません。
資本主義経済国で、自由公正な経済競争が行われなかったのは、昔からでしょう。市場での熾烈な自由競争は小売業など庶民の目に見える現場で繰り広げられて来た事も確かですが、その上の段階では、市場での競争と言うよりも、政府の方針によって優越は大きく左右されてきました。市場での自由経済競争よりも、政府との癒着競争に勝った方が有利な立場に立って来ました。それもある意味何でもありの「自由」な競争と言えたとしても、「公正」な競争とは言えないでしょう。現在のアメリカの大企業を見ても、ことごとく「公正」とは言えないグレーゾーンでのし上がってきた企業が多いと言えましょう。現在の中国企業も同様でしょう。
よく、社会主義体制の批判に官僚の腐敗が指摘されますが、それは資本主義社会でも同じでしょう。社会主義国家はシステム的に当然の事ながら、自由主義国でも、自由市場経済というのは建前だけの話でしょう。どちらも自由公正な市場での競争など行われていませんでした。
社会主義が性善説に基づく良識的な人間の集団でなければ成り立たないのと同様に、資本主義社会の「市場での公正な競争」も、良識的な人間の集団でなければ成り立たないでしょう。つまり資本主義の「自由で公正な市場競争」という理念は、名前だけのものであり、資本主義ははじめから矛盾を含んで破綻していたと言えるでしょう。
資本主義社会の理念である、自由市場における公正な自由経済競争なんてはじめから行われていなかったのであって、資本主義社会はその名の通り単に資本家の利益をどんどん上乗せする為に作られたねずみ講のような社会で、自由で公正な競争は行われていなかったし、これからも行われないでしょう。
自由競争社会という名の資本主義経済社会は、矛盾だらけで不公正な詐欺のような現代社会システムの徒花でしょう。だから早晩崩壊するでしょう。
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