最終処分場は原発撤廃まで作ってはいけない。
原発には非常に深刻な問題がいくつかありますが、その中でも最も深刻な問題は使用済み核燃料、放射性廃棄物の問題であると考えています。
毎日新聞 2011年5月9日配信の記事 に次のようなものがありました。
http://mainichi.jp/select/world/asia/news/20110509k0000m040142000c.html
<ここから引用>
経済産業省が昨年秋から米エネルギー省と共同で、使用済み核燃料などの世界初の国際な貯蔵・処分施設をモンゴルに建設する計画を極秘に進めていることがわかった。処分場を自国内に持たない日米にとって、原子炉と廃棄物処理とをセットに国際的な原子力発電所の売り込みを仕掛けるロシアやフランスに対抗するのが主な狙い。モンゴルは見返りとして日米からの原子力技術支援を受ける。・・・~中略~・・・核廃棄物の国内処分地選定の見通しが立たない日米と、技術支援で核燃料加工施設や原発を建設したいモンゴルの思惑が一致した。・・・~後略~・・・ <ここまで引用>
(これは毎日新聞社のスクープ記事のようですが、なかなか見識の高い方が執筆しているようで、踏み込んで記事を書いていますので,全文読むことをお薦めいたします。・・)
いわゆる「途上国」では、原発を新たなビジネスと見ているかも知れませんが、これは本質的には従来の大規模開発や箱物行政と同じ構造でしょう。旧態依然とした利権構造です。モンゴルの指導者達が新たな大規模開発、箱物行政として原発を選んだ・・・と言えましょう。一般のゴミ処分場の問題も深刻ですが、「核のゴミ」の問題はさらに桁違いに深刻です。
日米とモンゴルの相互の利害が一致したように書かれていますが、本質的には日米の核のゴミの第3国への押しつけです。モンゴルではその見返りに原発技術支援を受けることになっていますが、そんな事になればモンゴルの自然も文化も破壊に至らしめられ、踏んだり蹴ったりの暗い未来が待っている事になりましょう。原発が地球上から無くなった後、数万年間放射能漏れの危険と背中合わせで暮らして行かなければなりません。・・放射能漏れは早晩実際に起こるでしょう。・・計画が中止になることを願わずにはおれません。
現在、日本もアメリカも住民の反対運動にあって、使用済み核燃料の最終処分場は決まっていません。(アメリカは一度選定された後に地元の反対運動で計画中止に追い込まれました。)・・これからも決まる見込みは無いでしょう。最終処分場を作る事になれば、札束で頬を叩いたり、汚職や脅かしで原発立地の時以上に、無理やり強硬手段で建設する形になりましょう。【事故が起こらなくとも、棲めなくなる空間が増えていく 】に書いたとおり、最終処分場になったら周辺の地域には半永久的に人が棲めなくなるのです。そして、いつか漏れてくるであろう放射能によって段々広い地域が住めなくなっていくのです。
アメリカは、核のゴミの押しつけと言う目的以外にも、核拡散防止が狙いにあると言われています。核兵器の原料となるプルトニウムは、原発で使用したウランの再処理で抽出されるから、使用済み核燃料をモンゴルの一カ所に集めて、核兵器を持っていない国に核兵器を作る原料を与えない・・・という思惑です。つまりモンゴルを使用済み核燃料の国際的な貯蔵、最終処分場とし、さらには、再処理施設まで作って、管理までしようとしているのです。実現したら、アメリカも日本も、自身の首を絞める形になって、いつか投げ出して撤退する形になるでしょう。
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・・その後、3月11日に日本に原発震災が起こり、この話は一端中座したようです。そして別の不穏な話が持ち上がっています。それは、原発の避難区域に指定された飯舘村などに最終処分場を作ろうという話です。飯舘村では数年前に「核廃棄物処分場にしたい」と話が持ち込まれていたようですが、当然の如く反対にあって実現はしていません。今回の原発事故で避難区域に指定されて、人口の大半がいなくなる事をいい事に、最終処分場を作る計画がまた浮上してきたのでしょう。
政府は、避難した住民には、何ヶ月か後に原発事故が終息に向かってから改めて、いつ地元に帰れるか説明する・・・などと言っていますが、一方でこのような話も進められているようです。正式な話でなくとも、原発官僚や原発政治家の話題になっているようです。
日本では、原子力発電所敷地内での使用済み核燃料の貯蔵も、六ヶ所村や東海村での再処理施設と言う名の高レベル放射性廃棄物の貯蔵もほぼ満杯に近づいているのです。だから、早急に地層処分場を国民の問題として捉えよ・・・などと、NUMO(原子力発電環境整備機構)は勝手な事を主張しています。最終処分場の方法も場所も決める前に原発を動かした推進派の責任を、今になって国民に押しつけようと言う事です。
先ず「国民の問題として捉える」べきは、最終処分場の問題ではなく、原発そのものの問題でしょう。最終処分場を決める前に、半永久的に放射線を出し続ける高レベル放射性廃棄物を大量に出す原発自体の是非を問わなければなりません。その前に最終処分場を作る場所が決定すれば、先の見通しもつかずに見切り発車の連続でやってきた原発をこれからも推進する言い訳にされます。曰く「飯舘村に、広大な最終処分場が作られるから、もう使用済み核燃料の処分場の問題は解決した・・・」つまりそれは、更なる放射性廃棄物の増加を意味する事になるのです。その膨大な放射性廃棄物は決して安全ではないのです。福島原発よりも遥かに多くの放射性物質がそこに運び込まれる事になるのです。そこに埋められた膨大な使用済み核燃料が地表にばら撒かれれば、福島原発事故よりも遥かに多くの放射能が漏れて、福島県のみならず、日本中もう人の住める場所は無くなってしまう可能性も低くありません。これ以上放射性物質の量を増やす事は愚の極みです。だから、原発を全廃することが先です。撤廃する前に、使用済み核燃料、放射性廃棄物の受け皿を作ってはいけないのです。原発廃絶を決めた後で、放射性廃棄物の処分の話を考えるべきでしょう。最終処分場の話は、十分に憂鬱な話となるでしょうが、それはそれでもう避けられない話になってしまいました。それもこれも原発を作ってしまった事が諸悪の根源です。・・・一刻も早く原発を廃絶して、これ以上の放射性物質の増加を抑えるべきです。さもなければ、いつの日にか地球全体が放射能でおおわれ、人類は確実に滅びるでしょう。人類に限らず、地上の多くの生物が死滅してしまうでしょう。
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放射性廃棄物の処理に関する 槌田敦氏 のレポートをご紹介いたします。
<放射能は科学技術を超える劇毒 管理不可能な地下に捨てるな>
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