雑草の言葉

人間の判断力

2013/02/11
思想・価値観 12
~何故平気でいられるのか?~

 日本に限らず、世界中の殆どの国家が、いまだに「成長戦略」を政治、国家戦略の重要な部分に置いています。それにもかかわらずバブルの崩壊やデフォルトなどの経済危機が世界的な広がりを見せています。世界中の多くの自然が消滅し資源も減少しています。そして何よりも資源の開発と浪費によって、深刻な環境破壊、環境汚染が地球の至る所で起こっています。様々な問題が対症療法的にしか解決されずに肥大化されて先送りされて来ました。資源の奪い合いも激しくなってきています。毎年毎年数え切れないくらいの生物の種が絶滅しています。そう、成長の限界に達した今世紀は、様々な危機が互いに絡み合って次々に【複合大崩壊】が起こるでしょう。様々な要因が複雑に絡まっているとも言えそうですが、簡単に言えば、根本原因は、「工業化」と「経済成長主義」でしょう。
何故人類は、高々数百年前に始まった工業化と経済成長を絶対視するのでしょう?・・・人類の持っている楽観主義は一つの大きな要因でしょう。【短い経験】に描いたように「いつの頃からかは分からないけれど、現在まで人類は進歩を続け、世界経済は成長を続けてきた。これからも浮き沈みの波はあっても、科学は進歩し続け、経済も成長し続ける・・・」みたいな進歩と成長神話が漠然と人々の心にあるのでしょう。

石川英輔氏は『大江戸リサイクル事情』の中で次のように表現しています。
「人間の判断力とは、ある傾向が3年続けば当分続くと思い、5年続けば半永久的に続くと思い、十年続けば未来永久に続くと思う程度の浅はかなものである」
定量的な事を言及する事は困難ですが、妙に言い得ています。
 日本でば、いまだに「高度経済成長期」と呼ばれる時代を追いかけているような感じです。バブルもはじけて20年以上経ちますが、それでも「我が国は、経済大国であり、工業立国の先進国である」と大部分の国民が「自覚」しているようです。成長戦略としてのお馬鹿な景気対策をいまだに国を挙げて行っています。(新政権は、財政政策、金融緩和、成長戦略の「三本の矢」なんて旧態依然としたを言っていますが、その矢は飛ぶ方向も定まらず、多くが国民めがけて飛んで来るでしょう。)

現代人の壊れた感覚】で、持続可能でない異常な浪費社会に生まれ育った現代人の、自然の摂理に対する感覚が麻痺し、欠如した人々を描きましたが、石川英輔氏は『大江戸リサイクル事情』で、「大変な事になるから起こる筈が無い」という因果関係が逆の本末転倒な狂った発想をする現代の人々を紹介しています。
バブル時代の「日本の土地価格は上がり続けて値下がりしない」という土地価格神話の根拠を銀行家は「日本の産業は成長を続けるしかないから、面積の増えない土地は値上がりするしかない、万が一それが行き詰ったら大変な事になるから、政府は何とか行き詰らないような政策を続けるだろう」のように言っていたそうです。・・おそらくこれで、原発の5重の防御壁…のように経済成長や土地価格は完全防御されていると思っていたのでしょう。つまり、日本人は勤勉で日本製品もいいし技術の蓄積もあるから日本の経済は強い・・万が一危機になったら直ぐに「強い政府」が財政、金融政策で何とかしてくれる・・・と考えていた人々ばかりだったのでしょう。・・・しかしそれは、原発の5重の安全防御壁のように簡単に破れてしまったのです。

またある学者の講演で
「太陽エネルギーだけでは今の数分の一の人口しか養えない。森の思想とか植物の思想と言う人は、そこへ行く前に何十億もの人間をどう始末するか教えて欲しい」と話していたので驚き、「正直、教えて差し上げる気にもならなかった」と述べています。
この学者の発想は、ステレオタイプの経済成長主義者、原発推進者などの発想です。ここのサイトにも似たようなコメントをよこす輩が時々います。完全に自然の摂理に対する洞察が欠如しています。物質的にほぼ閉じた系である地球は、外部から入ってくるエネルギーは太陽光だけなのですから、望む望まざるに関わらず、最終的には太陽エネルギーの範囲で暮らさなければならないわけです。それを考慮せずに地球の中で「エネルギー開発」をして、地球の資源のポテンシャルエネルギーを使えば使うほど、資源は枯渇に向かい、地上のエントロピーは増加して、地球は汚染されるのです。それなのに現代の多くの政府は、この学者の理屈のように考え、次々にエネルギーを開発し、一時的に食料を増産して更に人口を増やし、問題を肥大化させて先送りしているだけです。

現代社会に住む人々は、短期的に成功した工業化経済成長社会の現代社会は、過去数十年続いた「実績」から、永遠に続くと考えていて、危機が訪れても、政府が何とか対策を講じて続けさせてくれる・・と、特に意識しなくても漠然と考えている人が殆どでしょう。
でも、理性で考えればそれは不可能な事で、このままではいつか制御不能な崩壊が始まるでしょう。だから、出来るだけ自然を残して環境を汚染せず、「その時」に備えるべきです・・。

話はちょっと脱線しますが、小学校に入学の頃、・・2,3年生になっても・・小学時代はまだまだずっと続く・・・と「半永久的」な感じがしたものです。それが、6年生の卒業式当日になってやっと、小学生活にも終わりが来る事を実感しました(笑)・・・本当に最後の最後まで、人間は「終わり」を実感出来ないものかも知れません。それが必ずしも悪いことだとは思いません。逆にいい場合も沢山あるでしょう。しかし、もしも確実に悪いことが起きると知っていたならば、全員避難している事でしょう。問題なのは、「破局」がいつ訪れるか分からない事と、本当に破局がやってくるとは実感出来ない人が大部分であると言う事です。・・理性で考えれば確実にこのままの経済成長はあり得ないのに・・・
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Comments 12

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guyver1092

因果関係が逆

「大変なことになるから、起る筈がない」
 ほとんどの人がこのようなたわごとを信じていましたね。バブル真っ盛りのころ、どこかの企業の重役のたった一人が、これはおかしいと主張したところ、首になったとどこかで読みました。
 子供のころ、テレビの何かの喜劇で「世界をボクを中心に回して!」というセリフで笑わせるシーンがありましたが、バブルのころは「物理法則を人間の都合で変更させて」と言っているに等しい主張がまじめにされていました。
 件の重役はまだ首にされ続けているようですし、喜劇はまじめなドラマと解釈されているようですね。
 バブル崩壊後20年たっていますが、「不況は永久に続く」という人はどこにもいないのは不思議ですが。

2013/02/11 (Mon) 22:38

雑草Z

Re:因果関係が逆

>「大変なことになるから、起る筈がない」

これを私は『本末転倒』と表現しましたが、正確に言えば、
guyver1092さんの表現されたように『因果関係が逆』ですね。本文も修正させて頂きます。有難う御座います。

>バブル真っ盛りのころ、どこかの企業の重役のたった一人が、これはおかしいと主張したところ、首になったと

これは非常に興味深いエピソードですね。当時の殆ど全ての経済アナリストよりも遥かに理性と洞察力のある唯一の優れた重役だったわけですね。彼はおそらく、おかしいから、投資を控えるべきであるとか主張したのでしょう。彼の主張通りに会社が投資を控えていれば、その会社も損失を抑える事が出来たのではないでしょうか?・・・つまり優れた理性を持ち、結果論としても正しい事を主張した唯一の重役を、バブルが続くと考えたその他の愚かな重役達によりクビにされたわけでしょう。酷いものです。

>件の重役はまだ首にされ続けているようですし、

彼について、その後の事などもっとご存知の事があれば、是非教えて下さい。これぞ、エコノミックファシズムでしょう。

>「不況は永久に続く」という人はどこにもいないのは不思議ですが。

ごもっともな発想です。今も「バブルよ再び」と柳の下の泥鰌を願っている強欲な人が沢山いるのでしょう。今の日本の政府もそのステレオタイプです。今の日本で再びバブルを起こすのは難しい事ですし、仮にまたバブルを起こせたら、その後にもっと悲惨な未来が待っています。バブルなんて起こしている場合ではありませんね。

2013/02/12 (Tue) 22:09

ほとけの提言

破局の型

「破局」がいつ訪れるか分からない事と、本当に破局がやってくるとは実感出来ない人が大部分であると言う事です。→

私も、その事をフェイスブックで毎日訴えていますが、友達260名のなかでも分っていただける人は数名しかいません。できる限り、その事に気が付いてもらいたいのですが、戦後長い間の教育、マスコミ等による洗脳で目を覚ましていただけません。破局がどんな型でくるのか分りません。できる事なら化石燃料の枯渇、経済の破綻くらいで破局が来る事を願います。その他の破局例えば、核戦争、地球環境の破滅等生物が滅亡するような破局は最悪です。終わりです。

2013/02/13 (Wed) 13:53

雑草Z

Re:破局の型

>友達260名のなかでも分っていただける人は数名しかいません。

う~ん、そんなもんですか?彼等は短い過去の経験を元に、若しくは、
>「大変な事になるから起こる筈が無い」
という人類の力を過信した思い込みで、当分は(何千年か?、何万年か?、それ以上かは)人類は安泰だと漠然と思っているのでしょう。それ以上のまともな根拠は無いでしょう。
もっとも、彼等からすれば私たちが杞憂で終末論を唱える悲観主義者か何かだと思っているのでしょうね。

>できる事なら化石燃料の枯渇、経済の破綻くらいで破局が来る事を願います

『2050年は江戸時代』のような甘い破局は中々ないでしょうね。石油の枯渇の前に経済の破綻がやってくるでしょうが(・・日本の現政権のままでは間近かも知れません。)核戦争が起こらずとも、愚かにも無計画に作り過ぎた原発は、事故が起こらずとも放射能漏れは避けられない事でしょう。現在、森林もどんどん減っているし、陸地も海も汚染が半端ではありません。毎日絶滅している生物の種も、異常に多いペースです。かなり悲惨な破局が訪れると考えられます。
破局の型は、はっきり分かりませんが、本文にも書きましたように複合型の崩壊になると考えています。

2013/02/13 (Wed) 23:42

guyver1092

RE:件の重役はまだ首にされ続けている

 このエピソードについては、これ以外は全く知りません。いまだ首にされ続けているというのは、このような先見の明をもつ人なら、国の国家戦略を練る部署にスカウトして、中心となって働いてもらうべきところを、政府は、あろうことかもう一度バブルを起こそうなどという狂った政策を取っていることにに対する皮肉です。

2013/02/14 (Thu) 22:07

雑草Z

Re:RE:件の重役はまだ首にされ続けている

>政府は、あろうことかもう一度バブルを起こそうなどという狂った政策を取っていることにに対する皮肉

なるほど、guyver1092 さんのいつものブラックジョークですね。今回は皮肉とは気が付きませんでした。

今の政府は本当にもう一度バブルを起こそうとしているのですから、非常にお馬鹿ですし、それを支持する国民が多い事にも失望します。今回の政策によって、見掛け上の「経済成長」があっても、それは税金の投入で大企業を儲けさせたに過ぎないでしょうね。投入税金以上の効果は望めず、格差を広げるばかりでしょう。国はデフォルトになる危険を背負ってまで、搾取主に税金をばら撒きたいようですね。

2013/02/15 (Fri) 00:19

地下水

百年もたない

 今気になるホーキングの話です。「今のオーバーテクノロジーで文明は環境を破壊して百年もたない。予測では二百万の文明が宇宙にはあるが、同様に百年もたないので、互いに通信する間が得られていない。」
 気になります。(^^;

2013/02/15 (Fri) 11:53

ST

今から100年もったとして…

マルコーニが電波の発射を成功させたのは100年ちょっと前、それを考えると200年程度で「崩壊」と言う事なら
大体言われた事は合ってると思うのですが、しかしねぇ…
オーバーテクノロジーに到達して例えば「核戦争」となり
どうにか“復活の日”から立ち直る文明がもしあれば…
電波ででも「通信出来る」とは思いますよ。
それよりも「文明の進み方」が違いすぎて片方にとっては
電波でさえ「過去の遺物」のため困難なのかも知れません。
それにしても「ローテクで数万年以上続いてきた」のに技術が進んだら数百年に寿命が縮んでしまうとしたら“技術”って人間達は「一体何の為に」発展させて来たのでしょうね。

2013/02/16 (Sat) 13:21

雑草Z

Re:百年もたない

    地下水さん

 私も以前より百年は持たないと考えています。今世紀に文明崩壊は始まると考えています。ここのサイトの記事で何度も言及しています。
【複合大崩壊】2012-02-17
http://zassou322006.blog74.fc2.com/blog-entry-618.html
とか、
【21世紀に文明が崩壊する根拠】2010-03-09
http://zassou322006.blog74.fc2.com/blog-entry-481.html
とかで、はっきり言及しています。ホーキング氏は、有名な研究者ですから、発言にインパクトがあると思いますが、理性のある人の多くがこのままでは21世紀中に文明崩壊に至ると考えているのではないでしょうか?

>オーバーテクノロジー

という表現は、現状をしっかりと表現していると思います。さらに付け加えれば、安全性も確認されていない、費用対効果さえ破綻している似非テクノロジーのオン・パレードです。

>予測では二百万の文明が宇宙にはあるが、同様に百年もたないので、互いに通信する間が得られていない。

私はこの予測はまともな根拠のないでたらめな数値に感じます。データがないので統計的な推測も生物学的なアプローチも不可能でしょう。


たとえば、200万の文明があったとしても、それらの文明全てが百年持たないとは言えないでしょう。それぞれ条件も違うし、みんな持続不可能なところまで突き進むほど愚かと言い切れるのでしょうか?・・この発言はブラック・ジョークではないでしょうか?・・・もしホーキング氏が冗談抜きでそう考えているのなら、私はホーキングさんを信用できません。パラノイアだと考えます。  

2013/02/16 (Sat) 18:27

雑草Z

Re:今から100年もったとして…

    STさん

 上のコメントにも書いたように、私は文明の衰退は、100年どころか今世紀末まで持たないと考えています。
ただ、「100年もつ、もたない」の解釈にもよりますね。
私は
「人口も経済も制御不可能な縮小をして、文明が衰退する」
といった意味で言ってますが、

「人類が一人残らず絶滅する」という意味ならば、確実性は低くなると考えます。さらにシビアに「地上の生物が全て絶滅する」という意味ならば、今世紀中にそこまではいたらないでしょう。

>「ローテクで数万年以上続いてきた」のに技術が進んだら数百年に寿命が縮んでしまうとしたら“技術”って人間達は「一体何の為に」発展させて来たのでしょうね。

 そもそも、発展ではなくて「破局に向かって突き進んでいた」と言えるかも知れませんね。発展の仕方が間違っていたのでしょう。このことは、記事にしたいと考えています。


 

2013/02/16 (Sat) 18:39

ST

「人口も経済も制御不可能な縮小をして…」と言う意味でなら…

既に20年程前にターニングポイントを過ぎた可能性があり、
それを認識出来てない人々達が必死に抵抗しているのかも…
うーん、今世紀中に何てのもあながち外れていなそうです。
でも決定的なで過酷なまでのハードランディングの末には
それこそ本物の「破滅」が待っているかもしれませんから…

アベノミクスはその代表かも知れませんな、しかしなぁ…
何か判りませんが「超新星爆発」的な最期になる感触が今の所
していますが、エネルギーと食料、格差の是正とかで「大転換」
をすれば(プラウト経済主義とかで)何とかソフトランディング
出来そうな気もしてます。
科学や技術もその方向で「発展」出来るとイイのですがね…

2013/02/17 (Sun) 12:32

雑草Z

Re:「人口も経済も制御不可能な縮小をして…」と言う意味でなら…

>既に20年程前にターニングポイントを過ぎた可能性があり、

これはいわゆる(持続可能な)成長の限界を過ぎたと言う事ですね。ここでも過去に記事にしていますが、それはほぼ明らかな事で、いわゆる再生可能な資源も、再生のペースよりも消費のペースが上回れば枯渇に近づくわけで、再生可能な資源を使っても、大量に使えば駄目という事ですね。典型例がバイオマスエネルギー等でしょう。

>決定的で過酷なまでのハードランディングの末にはそれこそ本物の「破滅」が待っているかもしれません

そうですね。絶滅までは行かなくても、人口も経済も桁違いに減る状況は高い確率で起こりえるでしょうし、私はそれを指して

>「人口も経済も制御不可能な縮小をして、文明が衰退する」

と表現しました。

>アベノミクスはその代表かも知れませんな

そうですね。おそらく数年以内に酷い状況に至るでしょう。あんな旧態依然とした時代錯誤の(・・いつの時代でも駄目ですが・・)政策では、社会はよくなりっこないばかりか、かなり悲惨な事になりましょう。「アベノミクス」なんておだてるマスコミは、御用太鼓持ちか、本当に馬鹿なのか?

>「超新星爆発」的な最期になる感触

>何か判りませんが

との事ですので、御説明頂くのは難しいでしょうが、

>「超新星爆発」

という恐ろしい表現はどのレベルの破局を指しているのでしょうか?

>何とかソフトランディング出来そうな気もしてます。

STさんがこのような希望を持っておられるとは、ちょっと意外です。でも、酷い見通しばかりで暗くなってばかりいても仕方ないですから、希望は持つべきですね。
「2050年は江戸時代」くらいのソフトランディングは可能でしょうか??

>科学や技術もその方向で「発展」出来るとイイ

「発展」という言葉に拒否感が起きますが、それこそ科学技術の進むべき方向ですね。

2013/02/18 (Mon) 22:45
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト、「経済成長信仰」と「科学技術信仰」とによって、飛行船地球号は破裂して墜落を始めるのも時間の問題。
あくせく働いて破局に向かって突き進むくらいなら猫のようにその日暮らしをする方がよっぽどいいではないですか。脱成長によってゆったり暮らすことができる社会の実現を!
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