降り方を考える2 ~降りる合意に達したら~
降り方を考える場合、当然ほとんどの人は、混乱が出来るだけ少ないようなスローランディングを望むでしょう。しかし、私は降りるのは、急速である方がいいと考えています。転ばない範囲で出来るだけ素早く降りるのです。【降り方を考える】で述べました。その降り方の方法についてもう少し具体的に言及すべきかと考えていましたが、保留にしてきました。しかし最近、具体的方法を示す必要は無いという考えに達しました。即ち、降りる高さのみ、高さの制限を決めて(持続可能な限界以下)あとはそれぞれに任せた方が良いと言う考えに至りました。
降りるための合意には、【正当な恐怖心】が必要ですが、その合意の元でいざ、縮小へ向かって降りる場合、政府(国際政府)の役割は、基本的に枠組み(限度)を定めて、規制するだけでいいでしょう。具体的方法は、その枠組み内でそれぞれが・・・民間企業、地域社会、コモンズ、・・・が行いそれぞれの環境での「最適解」を見出せばいいのです。
経済縮小、工業縮小に際して、資源浪費型企業や財界や富豪を中心に(さらに彼らの代弁者である【高度経済成長時代の遺物】の政治家などからも・・)反発が出るでしょう。政府の役割は彼らを制御し、規制することと、大きな枠組み(限度)を決める事です。政府の役割と言いますが、実際には自然科学の研究者達が限界値を示し、その限界値の下で、どれくらいの余裕を持たせるかを政府が決める形になりましょうか。・・・限界に挑んでハイリスクを負うのは懸命ではありませんから、限界値の下の余裕のあるところまで達成目標を下げるべきでしょう。
そして、目標を決めたらその目標達成方法はそれぞれが決め、最適解を生み出せばいいのです。
今までの科学技術は、人間の限りない欲望を満たす方向に進んで来ましたが、これからの技術は、人類社会が生き延びる為の枠組みをはみ出さないように作られるのです・・当然の事でしょう。これこそが技術の見せ所です。当然物質的な量の多さを「豊かさ」の基準にはしません。
経済、工業等の縮小が必要だとの共通合意が形成されれば、人々はそれに向けて積極的に取り組むでしょう。そのための技術革新は正に世の為、社会の為に使われるのです。具体的に今までの社会で使われていた物事それぞれの代替案を考えてから降りるのでは無く、経済規模、エネルギー消費量、資源消費量の限度を決めて、あとはそれに合うようにそれぞれが創意工夫を行うのです。
具体的な代替案を決めてしまう事には2つのリスクが考えられます。一つはもっといい方法があるかも知れないと言うことです。たとえ出発時点で最良の方法だったとしても、途中からもっといい方法が見つかるかも知れません。そのとき一々政府にお伺いを立てるのは非能率過ぎますし、官制談合の利権構造も出来てしまいます。この意味で、政府は小さな政府が理想です。もう一つの短所は、・・・これが最大の理由ですが・・代替案が無くても縮小しなければ人類は滅びてしまうのです。良い方法があろうが無かろうが、限界より下に降りなければ人類社会は持続できないのです。その前提を忘れてはならないからこそ【正当な恐怖心】が必要になるのです。
経済縮小に舵を切る為の必要条件は、『正当な恐怖心』と結論付けていますが、この正当な恐怖心こそが、社会縮小に進む為の原動力、にもなると考えています。つまり、正当な恐怖心が共通認識となれば、それが縮小社会への移行のモチベーションとなり、社会全体がその方向へ舵を切る事になるでしょう。
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