家畜の餌 (& 書評)
肉を食べると言う事は、その飼料となる穀物を直接食べる場合と比べ、カロリーベースでは桁違いに低くなってしまいますので、将来的には肉食はせずに、みんな穀物を食べなければ食糧不足になるだろうと言う見通しもあります。これは、現在食料自給率の極端に低い日本に限った事ではありません。世界の人口が増え続ければ、人類に飢餓を出さない為には食肉のカロリーの非効率が問題になります。
そもそも、家畜のえさとして飼料穀物を栽培して与える事に違和感があります。
最近読んだ本、『食べものとエネルギーの自産自消』に、しっかりと明記されていました。「念のために断っておくが、畜産は元来、人が食べられない草資源や残渣を人が食べられる肉や乳製品などに変換する営みである。こうした方法で生産された畜産物を少しずついただくことが本来の姿だ。」
なるほどその通りです。食料の自給自足もままならない国が、飼料穀物を輸入して、それを家畜に食べさせて畜産をやってその肉を食べる事は、大局的に見れば非常に愚かな事でしょう。
最近では、ペットのえささえも、人間も十分に食べられそうな肉の缶詰を海外で作って、日本に輸入するようになってしまいました。
この本には更に以下のように書かれています。
「穀物を餌として与える近代畜産を前提とした高タンパクの食事は、環境への負荷も大きい。たとえば1kgの牛肉を生産するのに、牛に飲ませる水と穀物を育てる水で合計20トンも必要であると試算されている。また、アメリカ中西部のトウモロコシ地帯で施用した窒素肥料やリン酸肥料の一部がミシシッピ川を経てメキシコ湾に流れ出し、河口一帯の約15000haを死の海にしている。」
つまり、畜産の為に飼料穀物を栽培して家畜の餌として家畜を育て、その家畜の肉を食べると言う事は、穀物を直接食べることと比べ、人間が得られるカロリーは桁違いに低くなるばかりでなく(つまり養える人口も何十分の一になってしまうと言う事。)環境も汚染してしまうと言う事です。
基本は、やはり家畜は自然に生える草や残滓を餌にするべきでしょう。わざわざ畑で作った穀物は人間が直接食べるべきでしょう。
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最後に、 『食べものとエネルギーの自産自消』 長谷川 浩 著
について書かせて頂きます。 [書評]です。
近くの町の小さな茶房で、「里山資本主義」の映像を見て、会津での里山資本主義の事などを論じるという集まりがあった時、そこの常連らしき、長谷川 浩 氏本人から買った書物です。彼は日本有機農業学会副会長です。彼から本書をを紹介されたとき、自分の興味のあるタイトルだったので、購入しました。しかし、タイトルから内容は大体想像出来ますし、自分の知らない新たな知識はあまりないだろうと、読まずに本棚に積んでありました。この秋遠出をする際に持って行き、電車の中で読みました。最初は普段考えている事と同じような事が述べられており。共感しましたが、途中からとっても変わった本になりました。この本は、日本の食べものとエネルギーに対する自分の主張を書いていると同時に、有機無農薬農業や再生可能エネルギーの供給システムに関する技術論が記されています。それも、混在して述べられています。
日本の食べものとエネルギーに対する主張には大局的に共感する内容でいい感じで読めたのですが、ところどころ、技術書に早変わりするのです。水田の稲作技術だとか輪作技術、家畜の飼い方などの技術論の単元になります。奇異な感じがしました。せめて前半と後半の2部に分けて書かれているのならば納得出来ますが、彼の文明論的農業、食の主張と、農業の個別の技術が混在しているのです。私は、有機農業の技術にも興味があり、それはそれで有意義な知識が書かれていましたが、頭の切り替えが面倒でした。日本の農業の在り方に関する講演を聴いている最中に突然話が切り替わって、個別の作物の育て方の授業が始まる・・・と言ったイメージです。
その意味で、2つの分野の全く異なった内容が混在する本と言えましょう。ちょっと混乱しましたが、私にとっては色々役に立つ名著でした。
著者、長谷川浩さんは、自ら会津の里山で自産自消の生活をしていますが、有機農業も教えていらっしゃいます。地元でこんな方に有機農法を習えるのは幸運です。自分は、今まで書物をかじったりしながら試行錯誤で細々と家庭菜園をやって来ましたが、来年あたり時期を見て、是非とも彼の有機農法の講座を受講しようと決めました。
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