目先
今食べるものが無くて飢えていれば、来年何百倍の大きさになる魚の稚魚を食べてしまうでしょうし、来年一粒万倍になる穀物の種も今食べてしまうでしょう。ある意味仕方ない事です。しかしそんなに逼迫した状況でなくとも、目先の個人の利益を優先してしまい、大局的には取り返しがつかないくらいの被害を受けている事がしばしば起こっています。意識するとしないとに拘わらず、環境問題よりも社会問題よりも、先ずは目先の自分の利益の為に行動している人が大半です。・・・勿論、目先の個人の利益よりも環境の事、社会のことを優先する人もいるでしょうが、ほんの一握りの人々です。
前回の衆議院選挙同様、今回の衆議院総選挙も景気対策が争点の主になってきています。他のもっと重要な争点・・・集団的自衛権の立法化や原発再稼働や原発の輸出など、これからの日本の存亡にもかかわるような大きな争点があるにも関わらず、相変わらず景気対策に主眼が置かれています。自民党は、景気対策以外の重要問題を争点にすれば分が悪い事は明らかなので、経済政策を隠れ蓑の争点としています。アベノミクスは早晩失敗することは目に見えています。もうすでにかなり馬脚が見え始めています。選挙が終われば、次々にアベノミクスの失敗を示すデータが明らかにされるでしょう。だから他の政党はそのアベノミクスが、失敗であることを繰り返し繰り返し主張しています。その野党の主張は間違いではありませんが、自民党と一緒に経済対策ばかりを論じている姿には、情けないものがあります。国民の多くも目先の景気対策に注目している・・・と考えて、のことなのでしょうが、そんな事よりももっと大切な争点がいくつもあるのです。
実際に、成長の限界に近づいた日本では経済は行き詰っています。経済的に大変である人は沢山いるでしょうし、そんな彼らが、(恒常的には上向くことの無い)経済を上向かせることを、政治に期待してしまう事にも一理あるでしょう。しかし、そんな目先の利益ばかりが一国の政治に反映されるのは非常にまずいでしょう。・・・多数の人々の目先の利益が優先になるように選挙に反映され、政治に反映されているのが現代民主主義選挙の実態でしょう(実情は、利益はごく一部の人に集中しています。)。その結果、環境はますます悪化し、社会は崩壊の方向にどんどん進んでいます。
過去にも、目先の利益に囚われ、大局的に考えられなかった結果、多くの文明が滅んできました。目先の利益に囚われた多数の人々の思惑の結果として事業が行われ、その結果、環境が破壊され・・・循環が断ち切られ、社会全体が大きな被害を受けて滅びていったのです。イースター島の悲劇は典型例でしょう。もっと大きな文明崩壊の例も沢山あります。インダス文明、エジプト文明、メソポタミア文明・・・・。目先の利益を追求しているうちに環境を悪化させ文明が崩壊してきました。
そして、現代社会も、日本に限らず多くの国が目先の利益を優先して、破局に向かっているのです。環境が悪化し人間が住めなくなったら、社会が崩壊したら、個人の目先の利益も何もないでしょう。その意味で、地上の人間は一蓮托生なのです。
多くの様々な情報を瞬時に得ることの出来るようになった現代だからこそ、過去に学び、目先の利益にだけ囚われないで行動したいものです。少なくとも、公の行動や政治、選挙に関しては、将来の人間社会全体の持続可能性を考えて、大局的に考えて行かなければ、大変な事になるでしょう。破局は直ぐそこに迫っているかも知れないのです。・・・(自戒も込めて。)
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