安保法制と原発
去る、7月29日の参院安保特別委員会での山本太郎氏の質疑は、安倍政権の詭弁と矛盾の核心を露呈させる、非常に素晴らしい質疑でした。ちょっと時間が経ってしまいましたが、改めてその事に関して書かせて戴きます。
先ず、山本太郎が、安倍政権に、本当に日本にミサイルを向けている国が存在するか確認すると、「中国、北朝鮮、ロシア・・・(中略)・・・北朝鮮は日本を射程に入れる数百発もの弾道ミサイルを配備し、発射訓練を繰り返している・・・」と、中谷防衛大臣が用意した原稿ですらすらと答えます。それに対し山本太郎氏が現実にミサイルを打ってきたらどうするのかと質問すると、安倍総理も用意した原稿を意気揚々と読み上げます。そして安倍総理から北朝鮮のミサイルを「重大かつ差し迫った脅威と考えている」と言う言葉を引き出します。その後、平素よりミサイル攻撃等に対して様々な事態を想定し各種のシミュレーション、訓練をしている事を安倍総理に確認したのち、山本太郎氏は再稼働する川内原発稼働中に原子炉が弾道ミサイルの直撃受けた場合のシミュレーションや対策、弾道ミサイルが撃ち込まれた場合の避難計画を質問します。すると、
原子力規制委員会の田中委員長は「弾道ミサイルの直撃のシミュレーションや対策は求めていないのでしていない。」と答えます。そして「放射性物質の福島原発事故の千分の一や百分の一の場合は計算している」と付け加えます。安倍総理は「仮定の想定の質問には一概にお答え出来ない。」と答えます。それに対して山本太郎氏は、「今回の安保法案の中身は、仮定や想定を基にしているのに・・。」と突っ込みます。「都合のいい時だけ想定や仮定を連発して、国防上ターゲットになり得る核施設に関する想定、仮定を出来かねます・・・ってどんだけご都合主義なんですか?」
大庭内閣審議官は避難対策について「事態の推移等を把握して対処法を決定したい」と答えます。
山本太郎氏は「要は一度被曝させてから考えると言う事ですね。・・・こんないい加減な話あるかよ。・・」
ミサイル攻撃に対して評価してないし今後もやる積りが無いと言う政府に対して、「これは試算しなくては駄目なんです。・・(中略)・・『原子力災害対策本部長』の総理がシミュレーションして貰って下さい」と要求すると安倍総理は、話しにならない現在のシミュレーションの状況だけを話し、長々とどうでもいいいい逃れをごにょごにょ繰り返し、「シミュレーションさせます。」とは決して答えません。それに対し山本太郎は怒りを持って言い放ちます。
「・・・危機管理の基本は『最悪の場合に備える』が当たり前です。でも、最悪の場合には備えてない、見たくないものは見ない、耳は塞ぐ、でもやりたい事だけやって行く・・・それがたとえ国民のリスクに繋がったとしてもやる・・・・本当に国民の生命財産を守る為だったら、ミサイルが飛んできたらどうするかという事に対して、核施設が直撃されたらどうするかという事に対して、対策はもう既にできている筈・・・」
最後の質問として、山本氏は
「・・・・政府が危機感を持っている弾道ミサイルが、もしも着弾した場合の対処の方法はほぼ無いんですよ。・・・・・それでも再稼働させるのですか?それでも・・。再稼働出来る筈無いですよ。お答え下さい、総理」
に対して安倍総理は
「原子力規制委員会の、世界でも厳しい安全基準を満たしたものについては、再稼働していく方針で御座います。」と答え、それに対し山本太郎は
「安倍総理の規制委員会への責任転嫁で、この質疑は終わりたいと思います。有難う御座いました。」
と締めます。将棋で言えば、完全に詰んだ状態でしょう。
この記事を書く為に、YouTube でこの質疑の模様を繰り返し見ました。何度も見ると、ここでこう突っ込んだ方がより効果的であった・・・という部分は何箇所かありましたが、一発勝負の質疑応答の舞台で、ここまで効果満点のパフォーマンスで追い詰める事の出来る政治家は殆どいないでしょう。山本太郎氏の努力と才能に脱帽です。しかし何よりも、ここまで説得力のある質疑が出来る理由は、山本太郎の言っている事のほうに理、正義があるからに他ならないからでしょう。いい逃れや責任逃れに終始した安倍総理や田中原子力規制委員長などの姿は、非常に醜く映りました。
安倍政権が強調する「重大かつ差し迫った脅威」であるところの隣国が、本気で弾道ミサイルで攻撃してくるかどうかは、兎も角、安倍政権がそう言っているのですから、政権はその場合のシミュレーションや避難計画を立てなければならない事は当然です。しかし彼等はそれはやる訳には行きません。何故なら、ミサイルが直撃した場合の放射性物質の外部環境への放出は、規制委員会の言う、福島原発事故の百分の一や千分の一程度で済む筈の無い事は誰の目にも明らかです。(こんな値で計算する事に何の意味も無いでしょう。・・・原子力規制委員会は「役立たずの無能」と言う他ないでしょう。・・政府にとっては都合のいい存在でしょう。)それどころか、福島原発事故よりも遥かに多くの放射性物質を撒き散らす可能性も大きいでしょう。そんな最悪の場合のシミュレーションをまともにやって公開したら、人々は原発の恐ろしさを再確認し、今よりも遥かに多くの人々が再稼働に強く反対し、反原発の運動も拡大するでしょう。この事は、3.11以前・・原発を始めた当初よりも判っていた筈です。原発は費用対効果の破局した全く割に合わない発電方式であり、その上危険性も1基のシビアアクシデントで、国家を破綻させるほどの危険な代物です。(事実、チェルノブイリ原発事故の数年後にソビエト連邦は崩壊しました。)
チェルノブイリも福島第一原発も「事故」でした。意図的な攻撃にはもっと弱いでしょう。防ぐ事は不可能です。だから、原発を持っている限り、日本は戦争出来ないのです。だから日本が、本土攻撃されるリスクを減らす最も有効な方法は、戦争に参加しない事であり、それは、憲法第九条を守り、集団的自衛権等を行使しない事でしょう。国家成立後、その9割以上の年数をどこかと戦争して来た無類の好戦国家アメリカに付き合って集団的自衛権を行使したら、日本は戦争に巻き込まれる事は目に見えています。(アメリカは他の国を『ならず者国家』呼ばわりしてきましたが、アメリカこそ現代最大の『ならず者国家』です。)集団的自衛権の行使によって、日本の原発が、弾道ミサイルやテロによって、爆破される可能性が高くなる事は火を見るより明らかです。
山本太郎のこの質疑を大々的に拡散していきましょう。
(山本太郎氏の国会での素晴らしい質疑はもっと他にも沢山あるのです。・・・そしてこれからも増えていくでしょう。)
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