雑草の言葉

絶滅に関するふざけた本[書評]

2020/09/17
書評 8
 これまで幾度か書評を書いてきました。どれも個人的に素晴らしいと思った絶賛に値する書物です。
しかし今回は、最低評価に値する読む必要のない・・と言うよりも、特に子供に読ませるべきではない本の書評です。

 先日の日曜日に近くの町でやっている温泉センターに行ってきました。温泉に入る前に手前の小さな古民家を改造した洒落たレストランに入りました。 そこでランチを注文した後、横の棚の上にあるブックエンドの本に目をやると「わけあって絶滅しました。」って子供向けと思われる本が置いてあったので、手にとってめくってみました。絶滅した色々な種の動物の話が、見開き読み切りの形で描いてありました。絵本のように挿絵も大きく沢山載ってます。そこには私の知らない動物の種が結構載っていたので、ランチが出されるまで読んでみることにしました。手に取った時は、なかなかいい感じで、最初は買ってもいいかも・・くらいに思いました。しかし、最初に引っ掛かったのが、前書きの部分で、
「噴火や隕石の衝突などの自然災害で絶滅した動物が大半で、人間によって絶滅させられた動物は遥かに少ない」のような事が強調されて書かれていました。それってタイムスケールが違い過ぎます。地球の45億年と推測される歴史の中で大絶滅期が5回あったと考えられていますが、そのうち隕石による絶滅は1回です。その時以外の隕石の衝突はローカル規模だったでしょうから、絶滅してしまった種があったとしても、ごく少数の種類でしょう。噴火による絶滅も似たようなものでしょう。兎も角、45億年の歴史の中で隕石や噴火でその時代に生息していた9割以上の動物が絶滅した時期が5回あったとしても、1年間あたりに直すと、1年に1種にもならなかったでしょう。かつて読んだ本には、過去に絶滅した種の数は
1万年前   100年に1種
1千年前    10年に1種
百年前      1年に1種
現在       1日に100種
と書いてありました。

かなりアバウトな書き方で、そんなに信頼出来る数字ではないでしょうが、人類が現れる前までは1年に1種も絶滅はしていなかっただろうし、逆に人間の経済活動が極端に大きくなった100年前から現代に至る過去100年間の平均の絶滅種の種類は1年に100種は楽に超えるでしょう。そしてその原因のほとんどが人間でしょう。過去百年に絶滅した動物の種で、人間以外に原因がある種なんてほとんどないでしょう。思い浮かびますか?
 以上のようなタイムスケール、時間あたりの絶滅数を無視して人間による絶滅は殆どない・・・と言うのは人間の責任を過小評価しているように思えます。著者は、だから人間活動は動物の絶滅にあまり関与しないとでも言いたいのでしょうか?・・愚かです。
 西洋の大航海時代以降、人間が直接の原因と考えられる動物の絶滅はどんどん増えて来ました。超指数関数的に増えて来たのです。人間が原因の種の絶滅の速度と比べれば、人間が地上に現れる前の絶滅は観測できないと言えるくらい遅く、絶滅のペースが違い過ぎるのです。
 軽率で読むモチベーションの下がる前書きでしたが、その後一応、本文を読み始めました。
 最初に載ってたのが「ステラーカイギュウ」と言う。私が初めて目にした種の名前でした。寒冷地にいたカイギュウの種との事です。そのページの見出しが「優し過ぎて絶滅」でした。仲間が人間に襲われると、みんなで集まって一生懸命助けようとして、逆に人間に一気に捕まって絶滅したと言うような事が描かれていました。とても仲間思いの素晴らしい動物であり、無慈悲な人間が殺して絶滅させた事にやるせなさを感じました。今でも生存していれば、仲間を助ける行動について見習うべきこと、研究すべき事は沢山あるでしょう。人間が猛反省すべき行為なのに、カイギュウの行動が愚かだったかのようにネガティブにふざけて描いてあるようで、嫌な感じがしました。
 それ以降のページでも、絶滅した動物達を面白おかしく描いていました。そしてその動物が自ら「こうすればよかったのに・・」みたいなコメントが書いてあることにも脱力なおふざけの嫌味がありました。人間の残虐な仕打ちは棚に上げておいて、絶滅したことは彼らの落ち度で、間抜けのように描いているのです。
 改めてネットで調べてみるとタイトル
「訳あって絶滅しました」の後の副タイトルが
「世界一面白い絶滅した生き物図鑑」でした。
 過去に絶滅した動物たちの事を興味深く読むのはいいですが、面白おかしく読む内容でしょうか?こんなシビアな内容をブラックジョークばかりで笑い飛ばすように描いている本書を子供達に読ませていいのでしょうか?
 著者は、東京動物園協会評議員をしている人物と、動物ライターでした。子供達に動物を愛でる心を育てる気などなく、絶滅した動物達を面白おかしく描いても、売れればいい・・・と言うスタンスにしか感じませんでした。

 こんなしょうもない本なのに、ネットでの5段階評価のカスタマーレビューの過半数は、最高評価の星5つでした。その高評価のレビューを少しだけ読んでみると、動物の絶滅という事にはあまり危機感のない方々のように感じましたので、参考にならないので読むのを止めました。
 それに対し、最低評価の星一つの方々のレビューは、動物の絶滅に対しての意識が高く、しっかり批判していて素晴らしいレビューがほとんどでした。特に長めのレビューが秀逸です。本書を読むよりもこれら星一つの最低評価レビューを読んだ方がずっとためになります。最低評価の星一つレビューを是非ともお読みください。

 素晴らしい最低評価レビューのうち二人のレビューの一部分だけ抜粋してみます。

1.(前略)・・・「優しすぎるから」「のろまだから」「数が多すぎたから」…。自らの意思に関係なく乱獲され、挙句の果てに絶滅させられた動物にこの様な言葉を投げかけられる作者の神経が理解できません。しかもこの本はこのようなテーマに初めて触れる子供達が読む本です。子供達に「地球や動物を大事にしよう」というメッセージを伝える訳でもなく、はたまたコミカルに残酷な表現を極力避けて書く事ばかりに重点を置いているため純粋に真実を書いている訳でもありません。・・・(後略)

2.(前略)・・・チープなギャグにのせて絶滅動物をバカにする内容であることを残念に思う。・・・(中略)・・・内容が子どもに悪影響があるのはもちろん、それ以前に、子どもの感性や想像力をナメていると思う。子どもはとても想像力が豊かで、そんなチープなギャグに載せなくても「絶滅とはなんだろう?」と自分の頭で色々と考えてきますよ。

さらに、最低評価の信頼できそうなレビューの中に
昔出版された『地上から消えた動物』(ロバート・シルヴァーバーグ著、ハヤカワ文庫)という本などは、とくに人間の手で絶滅に至らしめられた生き物たちを、悲哀と憤りを込めて真摯な姿勢で書いている。
とありました。こちらの本の方が買って読む価値が遥かにあるでしょう。

『絶滅』と言う問題は、この21世紀には更に加速的にシビアになっていく問題であり、真摯に対峙しなければならない問題です。

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Comments 8

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guyver1092

生物種の絶滅

 生物種が絶滅していくということは、生態系が単純化、貧弱化しているということです。そして単純化、貧弱化した生態系は、豊かな生態系よりはるかに不安定です。平たく言うと、食料生産が不安定になります。自分の尻に火がつていいることもわからない愚かな生物種についても書き足してあれば、読める本になるかもしれません。

2020/09/23 (Wed) 19:45
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 生物種の絶滅

>  生物種が絶滅していくということは、生態系が単純化、貧弱化しているということです。

なるほど、言われてみればそうですね。参考になります。


>自分の尻に火がついていることもわからない愚かな生物種についても書き足してあれば、読める本になるかもしれません。

ヒト種のことですね!?著者も編集者も自分達は大丈夫と高みの見物気分なのかも知れません。

2020/09/24 (Thu) 06:46

guyver1092

Re:Re: 生物種の絶滅

 はい、その通りです。最後に皮肉たっぷりに自分たちの絶滅の危機に鈍感な人々を馬鹿にした文章があれば、人間以外の動物をからかった文章も、皮肉の布石になるのではないでしょうか。

2020/09/24 (Thu) 20:11
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: Re:Re: 生物種の絶滅

なるほど、それはかなりな皮肉になるでしょうね!でも、それでは子供向けの本にはなりませんね(笑)
しかし、この本の著者や編集者にこそ、そう言う皮肉った本を読ませたいですね。
・・・てことは、この本の著者や編集者は、そう言う本を書く以前の段階ですから、そう言う本は描けませんね(笑)
先のコメントを書かれたguyver1092 さんなら描けますね!

2020/09/24 (Thu) 21:36

爽風上々

大量絶滅

大量絶滅に興味を持つ私としては、この本も読んでいたのではないかと不安に思ったのですが、どうやら読んでいなかったようです。
下手な書評でも書いていなかったかと思いましたが、さすがにそれは無くて良かった。

これまでに起こった大量絶滅はさまざまな原因によるものですが、今回の今まさに進行しているものは人類の環境改変によるものです。
多くの生物学者がすでにこれを大量絶滅と考えているそうですが、だからどうすると言われても手の打ちようがありません。
ただ、救いは「こんな人類文明がそれほど長く続くはずはない」ということです。
(救いと言ってそれを理解できる人も少ないでしょうが)
せいぜいあと1000年と見ていますが、もっと短くなるかもしれません。
それまで生き延びる生物がどれほど残っているかは分かりませんが。
そして、その最後に核戦争なんていうバカな事をしなければ良いのですが。

2020/12/31 (Thu) 14:47
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 大量絶滅

爽風上々 さん
少し前の記事へのコメント有難う御座います。この本は子供用の本ですので、爽風上々さんは読んでいないと思います。お子さんやお孫さんに買って読んで聞かせるという事はあるでしょうが、数ページ読み聞かせただけで、あまりの酷さに後悔すると思います。
諸説ある絶滅理由のうち、面白おかしく書けるものをわざと選んで、軽いノリで絶滅を面白がるスタンスで描いています。

>今回の今まさに進行しているものは人類の環境改変によるものです。
> 多くの生物学者がすでにこれを大量絶滅と考えているそうですが、
記事にも書きましたが、毎日複数の(百の)種が絶滅している現状は、完全に大量絶滅ですね。危機的状況です。

> ただ、救いは「こんな人類文明がそれほど長く続くはずはない」ということです。
> (救いと言ってそれを理解できる人も少ないでしょうが)
guyver1092さんのブラック的な皮肉です。そう言いたくもなりますが、人類は多くの他の種を道連れにしています。

> せいぜいあと1000年と見ていますが、もっと短くなるかもしれません。
私は現代文明の崩壊は今世紀中の可能性が大きいと考えておりますし、それに伴って人類の大量激減(からの絶滅も)も起こると考えています。
本書は絶滅した生物の絶滅理由をおちょくって描いていますが、人類がここ数百年以内に絶滅したら、哺乳類最短となるでしょう。
人類が滅した哺乳類は、全て人類が現れる以前からの長い歴史がありますから。
この本のタイトル風ならば、
『他の種を絶滅しまくって挙げ句の果てに増え過ぎて最短で自滅した、最悪の種、ヒト(ホモサピエンス)』

2020/12/31 (Thu) 17:27

ext2026

今、世界で一番重要な事実・人類は2026年までに絶滅する

初めまして、私はブログを始めてからまだ2か月ですが、今まで色々見てきて貴殿のブログが一番気に入りました。私は社会・環境問題を1960年(ベトナム戦争・水俣病・急経済成長)から只観察だけして来ました。そして現在はDr.Guy Mcpherson
元保全生物学教授の情報を基に、人類は2026年に絶滅するという事実を全日本人に啓蒙する為毎日努力している者です。
今からでは何をしても、何を言ってもIt`s too lateです。George Perkins March氏という知識人は1864年の本「Man and Nature」で既に二酸化炭素の危険性を社会に訴えています。その当時から何らかの環境対策を実行していれば、今日の様な状況になっていなかったかもしれません。
今、人類は残った時間に何をすべきか考え、実行すべきだと考えます。

2021/05/27 (Thu) 07:08
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 今、世界で一番重要な事実・人類は2026年までに絶滅する

ext2026さん

 初めまして、このブログを気に入って頂き、初のコメント有難う御座います。

 私も今世紀中にこの文明は崩壊して、人類も絶滅に近い打撃を受けると考えていましたが、2026年とは急ですね。私よりも遥かにシビアに考えておられますね。その可能性は小さくは無いと考えます。突然の制御不能な崩壊がいつ始まってもおかしくない状況ですから。

>何を言ってもIt`s too late

の可能性も否めません。Dr.Guy Mcphersonはこの考えをいつ発表して何を根拠に2026年と言っているのでしょうか?予言の類ではなく科学的に洞察されたお考えのようですので、深刻ですが、可能性が高く無くても、人類が生き延びる為の方策を考えましょう。

>人類は残った時間に何をすべきか考え、実行すべきだと考えます。

それが、生き残る為の方策になるやも知れません。

2021/05/28 (Fri) 06:27
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
無理に経済成長させようとするから無理に沢山働かなければなりません。あくせく働いて不要なものを生産して破局に向かっているのです。不要な経済や生産を縮小して、少ない労働時間で質素にゆったり暮らしましょうよ!「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト。
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