ダボス会議のグレートリセット
世界経済フォーラム[WEF] の創設者で現会長のクラウス・シュワブ氏は、「企業は、株主だけではなく社会全体の利益に貢献するものでなければならない」とする、ステークホルダー理論に基づく考え方を打ち出しました。ノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマンの「企業の唯一の社会的責任は利益の増大にある」とする株主資本主義に対抗する理論です。ハゲタカ株主に忖度するような株主第一主義の経済理論がノーベル賞を受賞して、半世紀近くも主流であった事には驚きます。それに対抗するステークホルダー理論を掲げ続けて復活させたクラウス・シュワブ氏の功績は認めるべきかと思います。コロナ禍後は、ステークホルダー資本主義が、外面的には主流になっていくでしょう。(シュワブ氏は、「ステークホルダー資本主義」とは言わずに敢えて「ステークホルダー主義」と言っているように感じます。彼は、資本主義はダメだと考えているのかも知れません。)
ダボス会議は、1990年代後半、資本主義とグローバリゼーションが貧困を拡大し環境を破壊していると主張する反グローバリゼーション活動家から厳しい批判を受けました。妥当な批判でしょう。ダボス周辺では、ダボス会議を批判するデモ活動が繰り返し発生してきたようです。ダボス会議への批判を調べると、我田引水的なしょうもない批判も見つかりましたが(残念ながら、日本のサイトに多く見られました。)真っ当と思える批判をご紹介いたします。
ステークホルダー主義は解となるのか?
スイスの非政府組織(NGO)「パブリック・アイ」のオリヴァー・クラツセン氏の批判です。彼の批判を簡単にまとめると
ダボス会議の有口無行にグローバル企業はお金を出している。ダボス・マニフェストでは、民間企業は社会的存在であるという考え方に基づいた「ステークホルダー資本主義」を目指しているようだが、それは、グローバル企業に対する批判をかわし、規制を避けることに終始している。企業は行動に責任を持つべきであり、必要なことは(法的)規制である。WEFと国連との協定には、グローバル企業が国連を自らの都合のいいように操る意図が見える。
要するに口先だけで、規制は回避するという、企業の利益を優先と言うことでしょう。
ダボス会議への参加者や表彰者のリストを見ても、大企業のCEOやタレントみたいな感じの方も多く、コマーシャリズムを強く感じます。日本人のメンバーだけ見てもほぼ脱力です。
ダボス会議は、反エリート主義感情と相まって、反ダボス派の人々からは、世界の悪だくみの象徴にさえ扱われているようです。
残念ながら、現在のところ、ダボス会議に環境問題や格差問題などの世界の問題を任せることは無理なようですし、逆効果かも知れません。(それらの問題を起こしている企業・人々がメンバーにかなりいます。)
ダボス会議[WEF] の2021年のテーマは「ザ・グレート・リセット」ですが、ダボス会議自体を”グレート・リセット”する必要があるかも知れません。



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