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雑草の言葉

インド農民デモ

2021/02/17
時事問題 6
 インドでは、2020年9月に可決・成立した、いわゆる「新農業法」に反対する農民の抗議デモが続き、それに対し政府は弾圧を強めています。デモは11月26日から始まり、2カ月以上続いています。インド全国で、数億人が参加しているといいますからもの凄い規模のデモです。デモ隊と警察隊の衝突で、死者も100人以上出ているとの事です。

インド農民デモ


 「新農業法」は、(1)農産物流通促進法、(2)農民保護・支援・価格保障及び農業サービス法、(3)改正基礎物資法 の3つです。
 これまで、地域ごとの公設市場に農作物を販売することが半ば義務付けられていた農民が、州外の市場やスーパー、食品会社などの民間企業などに対して、自由に作物を販売することが可能となりました。 
 インドの現モディ政権が打ち出した本格的な農業改革であり、農民の所得向上につながると期待されていました。「新農業法は農産物の州間取引を促進し、農民に幅広い選択肢を与える」とメリットを強調しています。モディ政権には、農業の大規模化、農産物流通網の自由化や効率化、農業セクターへの民間資本導入といった狙いがあるとされています。
 確かに、「新農業法」は、農民にとっては一見メリットが多いようにも感じます。しかし、中小農家は、新法の下で農産物が買いたたかれ、企業から搾取されるとして反発しました。
 インドでは国民の6割が農村に住み、直接・間接に農業に従事しています。そして、インドの農家のうち、およそ85%が農地が2ヘクタール未満の小規模農家です。

 私はこのニュースを最初に聞いた時は、大企業と政府の癒着、更には巨大多国籍企業・商社と政府の癒着による利権構造を疑いました。更には多国籍企業によるインドの農作物の支配計画をも疑いました。しかし、私がネットで調べた限りにおいては、巨大多国籍企業との癒着を示唆したり怪しむレベルの記事を見つけることは出来ませんでした。(だからと言って、その可能性を否定している訳ではありません。)デモ支持者の中にも、そんな陰謀を危惧している人もいる事でしょう。

 一方、今回の抗議デモが、「貧しい零細小農たちの反乱」かと言えば、そうとも言い切れ無いようです。
 当然のことですが、利権構造が入れ替わり、既得利権を失う人たちが扇動している、と言う側面も大いにあるように思われます。
 具体的には、地域ごとの公設市場に君臨し、農民の情報不足に付け込んで農産物を買いたたく「ミドルマン」と呼ばれる仲介業者が、新農業法によって排除されそうになりました。だから彼らが、零細小規模農家たちを扇動して新農業法に反対しているという側面も否定出来ません。
 また、西部パンジャブ州の(少数派シーク教徒たちの)恵まれた豊かな農民達も、既得権を脅かされてデモに参加しているとの事です。豊かな農業先進州ほど、既得権を守りたくてデモを支持していると言う側面も大いにあるようです。
 農家だけではなく、農産物を扱う商人、トラック運転手の組合、公設市場に税収を依存していた州政府、野党や労組、本来デモを押さえ込む側の州与党政治家・・・等、様々な業種・立場の人々が、率先して抗議デモに参加したり、支持しているので、デモの規模がここまで巨大に膨らんだのです。

 それに対抗し、インド政府は、デモ会場周辺のインターネット接続を遮断し、ツイッター社にデモ関連の情報を削除するよう要求しました。それでますます余計にデモ隊に火がついてしまい、海外にもデモ支持者を増やしたようです。
 インドの著名な学者だけでなく、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんやアメリカの歌手など、国外の著名人達もデモ支持を表明しています。彼らは、デモ隊が主張している「新農業法の白紙撤回」、もっと抽象的に言えば農業のグローバル化に反対しているのでしょう。でも、彼らは実情をしっかり把握しているのでしょうか?「反政府」「貧しい庶民の反乱」に見えるから、応援しているようにも見えてしまいます。
 私もグローバルな巨大多国籍企業による農業支配等には反対ですが、かといって「白紙撤回」がいいとも思えません。
 隠れた農業大国であるインドの耕作可能地面積は世界最大と言われています。現地メディアが最近実施した調査では「農民の42%が農業をやめたいと考えている」そうです。つまり日本同様に、農業行政は今のままでは駄目なので、改革は必要でしょう。「白紙撤回」で、従来の農政のままでは、解決にならないと考えています。(一旦白紙撤回でも構いませんが、すぐに次の農業維持、小規模農家の為の改革安を出すべきです。)

 ここのところずっと工業化に力を入れて、農業を疎かにしてきたインドですが、中国の人口と肩を並べたインドが、農作物の自給自足すら出来なくなったら、インド自体も他の国々も大変です。
 兎も角、中国もインドも(世界の他の国々も)、先ずは食料自給率を100%に保つことを政策の根幹に据えるべきです。食糧生産が安定してから、工業化でもなんでも考えるべきです。食料自給率100%が独立国家としての重要な担保です。


<参考site>

1。政権基盤揺るがすインドの反「農業法」デモ
 日本経済研究センター  山田剛著

https://www.jcer.or.jp/j-column/column-yamada/20201227.html
 ○このサイトが最も詳しく書いてあります。

2。農民デモ、各国著名人支持 インド政府の弾圧強化で     JIJI.COM
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021020700249&g=int



この他、毎日新聞、朝日新聞、日本経済新聞、などを少しずつ参考にさせていただきましたが、これら新聞記事は直ぐに消されるでしょうから、リンクに載せません。

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Comments 6

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guyver1092

複雑

 インドも、一枚岩ではないようで複雑ですね。外部の人間である私には到底全容を把握することは不可能なのでしょうね。
 そういえば、以前インドでは宗教上の理由で弁当運び屋が必要な商売というニュースの解説を聞いて、感心した記憶があります。絶対的なところで、文明崩壊的な観点から見てみれば、自由主義経済的改革は破滅への最短距離だからやめておけ、というぐらいでしょうか。

2021/02/20 (Sat) 20:07

爽風上々

食糧自給

途上国が進化し?ていくと工業化が進み農業がおろそかにされ食料自給率が下がるのでしょうか。
ただし、その国に食糧を輸出しようとするのがアメリカをはじめとする先進国であるというのが一筋縄ではいかないところです。
アメリカの食糧供給がいつまでも続くわけではないでしょう。
広大な地下水層も徐々に翳りが見えてきていますし、土壌の劣化も激しく、さらに無尽蔵のように見えた化学肥料もエネルギーが高騰すればあっという間に価格が跳ね上がります。
食糧需給は意外なほど脆弱であるという感覚がしますが、それがなかなか他人には広がらないもどかしさがあります。

2021/02/21 (Sun) 08:22
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 複雑

guyver1092さん

コメントのし難い記事にコメント頂き恐縮です。guyver1092さんのおっしゃる様に、今回のデモについて調べているうちに単純な構造ではなく複雑な利権が絡まっている事がわかりました。当事者のインド人達も、利害関係がよく分からなくなっているのでは?と思いました。

>  インドも、一枚岩ではないようで複雑ですね。

が本質かと思われます。当方も途中でこの記事は放棄しようかと考えました(笑)海外の有名人も、上っ面で支援しているのではないでしょうか?

>  そういえば、以前インドでは宗教上の理由で弁当運び屋が必要な商売というニュースの解説を聞いて、感心した記憶があります。

聞いた事がないニュースですので、簡単に教えていただけますか?

>絶対的なところで、文明崩壊的な観点から見てみれば、自由主義経済的改革は破滅への最短距離だからやめておけ、

そこが本質だと思いますが、日本と同様に、これまでの農政も酷すぎる様ですので、別な形になろうとも「改革」は必要だと思います。

今回色々調べて、記事の最後にもちょっとだけ触れましたが、インドは色々と甚大な脆弱性があり、これ以上の発展の過程で巨大崩壊が起きる危険性が高いと感じました。文明崩壊の「火種」は色々な国家にありますが、大国インドは「火種」では済まず、「文明崩壊」のダイナマイトかと思いました。後進国というか、発展途上国ですが、大国で、どこまで発展して持続可能かの巨大サンプルの様に感じました。そちらの記事を描いてみたいと思います。

2021/02/21 (Sun) 11:20
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 食糧自給

爽風上々さん

> 途上国が進化し?ていくと工業化が進み農業がおろそかにされ食料自給率が下がるのでしょうか。

そう思います。その例外は日本で、一応「先進国」だったのに、途上国以上に食料自給率を落とした(「落ちた」じゃ無くて「落とした」ですね。)間抜けな国でしょう。

> ただし、その国に食糧を輸出しようとするのがアメリカをはじめとする先進国であるというのが一筋縄ではいかないところです。

インド(と中国)の人口の数%分の食料輸入だけで、日本に輸入されてくる食料は無くなりますね。インドに輸入競争で負ける筈がないと思っているとしたら、日本政府もかなりおめでたいですね。でもインドの崩壊は思いの外早いのかも知れないと感じました。
色々な面で、欧米諸国や中国やロシアに比べ、インドへの関心は大きくありませんが、インドの動向は世界へ大きく波紋を広げると感じました。中国との国境紛争も泥沼化したら大変です。

2021/02/21 (Sun) 11:35

guyver1092

インドの弁当事情

 インドでは、宗教上の理由で食べ物に制限のある人が多く、更には、その制限が非常に細かく分かれているので、レストラン等の営業が成り立たないそうです。従って各家庭から弁当を持って職場に通わないと昼食抜きということになるそうです。ニュース時の記憶にはないのですが、インドは暑いので、出勤時から弁当を持っていくと傷みやすいのだと思います。従って弁当運びに立派に需要があり、商売として成立するというものです。

 インドの農業改革の必要性について同意します。どのような改革が必要か部外者なりに考えてみましたが、ゲゼル主義的な減価する地域通貨の採用が最高という気がします。

2021/02/21 (Sun) 19:51
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: インドの弁当事情

>  インドでは、宗教上の理由で食べ物に制限のある人が多く、更には、その制限が非常に細かく分かれているので、・・(中略)・・・従って弁当運びに立派に需要があり、商売として成立するというものです。

ご説明有難うございます。思いもしなかった理由ですね。インドは民族も多く、宗教も様々で、一つにまとまるのがかなり大変でしょうですね。

>  インドの農業改革の必要性について同意します。どのような改革が必要か部外者なりに考えてみましたが、ゲゼル主義的な減価する地域通貨の採用が最高という気がします。

なるほど、それまた思い付かなかった改革です。確かにインドのような地域毎の特性に大きな違いがある多民族多宗教国家は地域通貨にするのはいいアイディアです。合衆国のように地方の権限も強い方がいいですね。

2021/02/21 (Sun) 20:23
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト、「経済成長信仰」と「科学技術信仰」とによって、飛行船地球号は破裂して墜落を始めるのも時間の問題。
あくせく働いて破局に向かって突き進むくらいなら猫のようにその日暮らしをする方がよっぽどいいではないですか。脱成長によってゆったり暮らすことができる社会の実現を!
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