雑草の言葉

エネルギーの将来需要の見込みの欺瞞

2021/10/11
資源・エネルギー 8
 小中学生の頃、子供向けの統計図表か何かに
「〇〇年後のエネルギー需要量は○倍になるから、その為にエネルギーの開発が必要である。夢のエネルギー原子力なら十分に賄える」などと書かれていたことが記憶にあります。経済産業省とかが作った国策のプロパガンダ用の小中学校用の副教材だったのかも知れません。子供心にも、こんなにはっきりと未来の需要量が分かるものか?と疑問に思ったものです。


発電予測
   ※上の図表は、記事で触れた統計図表ではありません。
     ずっと後に(最近)描かれたものでしょう。 
     どちらも信頼性が低いことは共通しているでしょう。


 その予測は、結構断言的に書かれていた記憶ですが、後に、大人になってから「あまり当たらない信頼に足らない予想」であったことに気付きました。 そもそもその予測自体が原発を作るために帳尻合わせで作られた数値であった可能性も否定できません。国や企業など利権を持っている団体がよくやる手です。

 GDPの伸びの将来予想も同じようなものでしょう。株価予想は人間の思惑も加わるから、もっと予想し難いか、し易いかは条件にもよるでしょうが、これも競馬の予想のように全く信頼に足りるものでは無い事は、多くの人が実感してる事でしょう。
 未来予測なんてそう簡単に正確に当たるものではありません。星の動きのように単純にニュートン力学で推定できる特別な場合を除き、バタフライ効果も効いてくる複雑系カオスですから、所詮「不確実な推測」の域を出るものではないでしょう。
 しっかりと幅を持たせて、「〇〇倍から〇〇倍の間になると推測されます。」なんて記されると、しっかりしたデーターで推測されているように感じますが、その幅が何%の信頼区間かの但し書きなどはほとんどされていません。統計的推測では一般に95%の信頼区間である場合が多いのですが、「遠い未来の予測」(数年先でも「遠い未来」と考えても)では、確固としたデータが無いのですから一般的な統計的推測はできないでしょう。つまり、95%信頼区間自体示せないと言う事です。
 
 まして、「結論ありき」の恣意的な予測が当たる可能性はかなり低いでしょう。エネルギーの需要予測に限らず、未来予測は、あんまり信頼できない数値として考えるべきです。
 地球温暖化の予測も、2050年に〇〇℃〜〇〇℃になるなんてIPCCから示されると本当にそうなるような気になってしまいますが、それも95%の信頼区間ではないでしょう。単にいくつかのパラメータの値をいじってみてもっともらしい値の範囲を採用したのではないかと勘ぐってしまいます。「幅がこれくらいなら信頼できそうか」・・・程度かも知れません。

 国などが出す将来の数値予測は、結果が断言的に述べられる場合が多々あり、多くの人が信じてしまいがちです。・・もうそうなる事が確定事項として話している人が沢山います。しかし(その幅にも依りますが、)当たる可能性は高くないと考えるべきです。まして、利権の絡む恣意的な予測など気にする必要もないでしょう。
 「明日の天気予報さえもよく外れる」・・のですから。
 
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Comments 8

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爽風上々

未来予想図

どこの人間が作った図かは知りませんが、経産省の官僚の下っ端が作ったものとしましょう。
キャリア候補生かどうかはしりませんが、どうせ中途半端な知識と判断力しか持ち合わせていないと思います。
彼らのグラフの作り方を想像しましょう。
ここで予測できる数字と言うのは、経済成長率とエネルギー使用量の伸び、原発の稼働状況(廃止するかどうかも政府の意志が通るものとします)、再生エネルギーの設置数(金で釣るから予算額次第で決まってくる)といったところでしょう。
原発数も何年までに何か所と言うのは予定されているはずですから、それをえいやっと入れ込むと何年に何%というのは出てきます。
原子力発電量はそれを頼りにそれらしく線をつなぐだけ。
太陽光発電や風力発電も目標数量を決めていますから、何年か先のその数値になるように、それまでの間はそれらしい線をつなぐ。
後のところは不自然に見えないように案分して書いていくだけでしょう。

そこには厳しい国際情勢の見通しも、政権が目指す未来像も何もないのは明らかでしょう。
その程度の未来予想図でも国の機関が出してくればそれなりに信用されます。
それで何となく仕事をしたような気になるのかと思いますが。

2021/10/12 (Tue) 10:51

guyver1092

未来予想

 若いころ、ファインセラミックスの利用予想の本を読んだことを思い出しました。詳細は忘れましたが、かなり詳しく、どんな分野にどれだけの需要があると予想していましたが、現実はことごとくはずれていた記憶があります。その本では予想していなかった分野で需要があった記憶もあります。おっしゃる様に国が出すこの類の未来予想は国の欲望の形でしょうね。すなわち、「このような未来になれば、どれだけ経済成長できる」でしょう。
 ちなみにご紹介の発電量、発電設備容量とも、化石燃料の莫大な消費増が予想できる予想ですね。先ほども述べたように、「化石燃料をこれだけ消費すればこれだけ経済成長できる」という本音が透けて見える図ですね。

2021/10/12 (Tue) 21:50
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 未来予想図

爽風上々さん

 確かに作った人間の事を想像すれば、信頼性がない図表であることが更にはっきりしますね。その程度の「お仕事」をれっきとした(?)機関が出すと、信頼されて、「実際に起こること」としてデータが一人歩きするのかも知れません。
 作る方の質が悪いのは、怪しい予言者や占い師のように、「断言的に推定」しているような書き方をしている事です。それほど信頼のでき無い「予想」なのに、「実際に起こること」のような表現です。作った本人も「そうなる」と本気で思ってしまっているのかも知れません。
 「中途半端な知識と判断力」が「確信」になってしまったのかも知れません。実際は「ハッタリ」の類でしょう。
 現在ならAIに作成させれば「非常に確実」と考える人間も多いでしょうが、それでも実際は「かなり不確実」でしょう。

「エネルギー需要量増加の見込み」から作る事が駄目ですね。「どうやってエネルギーの使用量を減らすか」から考えるべきです。

2021/10/13 (Wed) 07:09
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 未来予想

guyver1092さん

 「ファインセラミックスの利用予想」は知りませんでしたが、なるほど、面白いステレオタイプの例ですね。

>かなり詳しく、どんな分野にどれだけの需要があると予想していました
筆者は結構調べて書いたのかも知れませんが、結局「絵に描いた餅」だったのでしょう。
「水素社会」もかなり前から予測され期待されていますが、あまり進捗はありませんし、実際は望ましくない方向に進んでいると思います。
仰るように
>発電量、発電設備容量とも、化石燃料の莫大な消費増が予想できる予想
だと思います。エネルギーの需要拡大予測を作って、代替エネルギーの開発を進める事は逆効果が多く、文明崩壊を早める結果になりそうです。エネルギー問題と環境問題はエネルギー需要を減らす方向にシフトすることが最も確実な解決法でしょう。つまり経済縮小ですね。

2021/10/13 (Wed) 07:19

爽風上々

実際に起こりそうなこと

前のコメントではエネルギー予測のいい加減さを話題にしましたが、実際に起こりそうなことというのは彼らの想像外(そんくらい想像しろよというところですが)でしょう。
太陽光発電や風力発電にのめり込み、そればかりか他国の石炭火力発電にまで文句をつけていたEU各国ですが、頼みの天然ガスが高騰し今冬の電力事情が極端に悪化しそうです。
さらに色々な要因が重なり原油価格も高騰、これは日本も含め世界中が困ることになりそうです。
石油や天然ガスなどの化石燃料はもちろん「限りある資源」であり、その「限り」が予想外に小さいということを主張しているのがオイルピーク論者であり、十分に大きいということを(根拠もなく)言っている人も居ます。
もちろん、今回の価格高騰はそういった資源量減少のせいではなく、供給条件の問題ですが、遅かれ早かれ資源減少になることは間違いないでしょう。

そういった予測というものを、官僚製の予測はまったく考慮に入れていません。
あくまでも自分たちのできることの範囲内での「勝手な予定」に過ぎないのですが、かつての石油危機を見ても「自分たちの力の及ばない」範囲のことで大きく動かされるのは、エネルギーほぼ輸入の日本にとっては当然の姿です。

さらに、太陽光や風力のいわゆる「再エネ」の危うさはおそらく彼らの想定をはるかに越えているでしょう。
今はまだ、他の発電装置によるしりぬぐいができるためにあまり問題になっていない(しかし時々それが露出している)のですが、これがさらに増加していけばどんどんと危険な事態となり、使い物にならないということがようやく皆さんの不自由な頭でも理解できるようになるでしょう。

今回のコロナ禍でのエネルギー需要低下で、燃料供給危機はだいぶ遠のき、私の生きている間には見ることはなく済んだかもと思いましたが、どうやらそうは行かないようです。

2021/10/16 (Sat) 14:57
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 実際に起こりそうなこと

>実際に起こりそうなことというのは彼らの想像外

と、言うところが大きな皮肉です。
EU各国が、頼みにしているのが石油と同じ化石燃料の天然ガスと言うところも非常におかしな話ですね。CO2排出率が石油よりは少ないと言うだけで、本質的に同じものです。

>あくまでも自分たちのできることの範囲内での「勝手な予定」

これも相当な皮肉です。もう「予測」ですら無くて、「勝手な予定」なのですね?まあ、流石にオイルピークや石油は再生可能でない事は知っているでしょうから「枯渇」することは認識しているでしょうが、彼らが現役の間は大丈夫と読んでいるのでしょうか?

>太陽光や風力のいわゆる「再エネ」の危うさはおそらく彼らの想定をはるかに越えている

爽風上々さんの以前のコメントでは、研究者はそこを知ってて敢えて仕事の継続や研究費などの為にやっていると言う認識だったと記憶していましたが・・・

 脱石油の為には結局はエネルギーの消費量を極端に減らすしか無いのですが、「代替エネルギーの開発」に期待をかけ過ぎて、エネルギー消費の前大量を減らそうとしない現代社会は、破局への道を突き進んでいますね。

2021/10/17 (Sun) 07:05

爽風上々

研究者の窮状

私も会社の研究部門に所属していたこともあり、また退職前の最後の仕事は大学研究者と企業を協同させて合同研究を行うということであったこともあり、最近の研究者と言われる人々の苦しい立場も見聞きしてきました。
特に大学では研究費も削減され、安定的なポストも減少し、先の見込みもないまま金が出やすい研究に飛びつくという傾向が強いというのは仕方のない状況かもしれません。
そういった状況に追い込まれた人たちにとって、このようにどんどんと金が流れ込んでくる部門というものは非常に魅力のある分野です。
多少その中味(というか基本)に疑問があっても、国や企業から研究費が出てくるものならそんなことは良心に蓋をしても成果を出してやろうと考えるでしょう。
(なお、その成果とはせいぜい有名な研究誌に論文発表することです)
私がその立場でもそうするでしょう。
もちろん中にはすべてを見通していて冷徹な計算ができる人間もいるのかもしれませんが、おそらくそういった人物はごく一部かと思います。

そういった状況を作り出す背景には、現在の科学者の世界は非常に専門化が強まり、ごく近い分野でも相互の交流がほとんど行われないということも関係してきます。
私のブログで、関係分野横断の「エネルギー収支に関する基本手法の統一」を図る必要があると強調してきたのもその対策で、細かい分野でそこでは一番などということをやっていては見誤る危険性が強いと考えたからです。

専門的に数式を振り回し、素人を(政治家を含む)煙に巻く議論で誤魔化し、金を引き出せば良いというのも困ったものですが、そういった連中には基本的な状況を考えさせれば正体がバレます。
「そのエネルギー装置(太陽光発電装置)だけをエネルギー源とする社会が存続できますか」ということです。
たとえば、他からのエネルギー物質流入などはない島のような場所に、「太陽光発電装置」だけを設置し、それで得られる電力だけで社会を維持できるか。
これは簡単そうで非常に困難なことです。
何しろ、「太陽光発電装置の製造」もすべてその出力で賄わなければならないのですから。
今の「再生可能エネルギー装置」はそのほとんどすべてを石油や石炭、天然ガスの化石燃料で製造されているのは間違いないことです。

2021/10/17 (Sun) 14:30
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 研究者の窮状

 確かに研究者も予算を決める国なり、資金を出してくれる企業なりに「役立つ研究」と考えられなければ研究費を得る事は難しいでしょう。だから自分の意に沿わなくとも、潤沢な研究費がもらえて、生活も安定する研究をすることに魅力を感じる事は多いでしょうね。

 さて、太陽光発電も風力発電も、独立する事は困難で、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料が必要な事がほぼ確定事項だとして、化石燃料は枯渇するものですから、ではどうするか?・・・となれば、新たな代替エネルギーの開発も困難でしょうから、当然の帰着として、「エネルギーの使用を・・・最終的に化石燃料を使わないで済むレベルまで・・・桁違いに減らす」となるでしょう。つまり、今までに何度も繰り返し言及してきた、ここの大きなテーマの一つである経済縮小・・しか無いでしょう。

2021/10/18 (Mon) 00:07
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト、「経済成長信仰」と「科学技術信仰」とによって、飛行船地球号は破裂して墜落を始めるのも時間の問題。
あくせく働いて破局に向かって突き進むくらいなら猫のようにその日暮らしをする方がよっぽどいいではないですか。脱成長によってゆったり暮らすことができる社会の実現を!
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