これが試算です、近藤さん

近藤氏の『等比級数理論』では、毎年一定の人為的CO2の放出があるとして、その3.33年分(数年分)未満しか人為的CO2起源ではないと言うことでした。それは、大気中に放出されてから、海等に一度も溶けることなく大気中に留まっていたCO2分子の量である事を前回示しました。ここまでは近藤氏の見解も変わらないでしょう。
しかしその後の部分がおかしいと私は指摘いたしました。 近藤氏の『等比級数モデル』では、一度海に溶けて吸収されたCO2は、もう人的CO2ではないという前提でしたので、「産業革命以来増え続けた大気中のCO2の量のうち3.33年分だけは人為的CO2起源だとしても、それ以上の増えた部分は他にまだ解明されていない原因がある」が近藤氏の結論でした。私はそれをCO2ロンダリングと言って批判しました。だからCO2ロンダリングの無い、すなわち海に溶けても、人為的起源で排出されたCO2はまだ残っている部分があるとして、試算して近藤氏の『等比級数理論』と比較します。
結論から言いますと、人為的CO2が毎年放出されれば、それなりに大気中の人為的CO2は増えていく・・・と言う、極めて普通の理性的結果となります。そして、毎年大気中に放出されるCO2の量だけで大気中のCO2の量はほぼ決まり、毎年大気中から海などに吸収されて出ていくCO2の割合 r の値にはほとんど影響されない事になります。なぜなら、大気中のCO2の量は大気と海(の表層)のCO2の平衡で決まるので、大気から海に吸収されるCO2が多ければ、その逆に海から大気に出るCO2も多くなるからです。
では、炭素循環の模式図を用いて試算を示します。図は炭素循環の模式図ですが、
分子量 C:CO2=12:44 で一定 ですので、Cの質量で論じても量的比に影響は無いでしょう。(CO2のCの部分という意味で、炭素C単体や有機物中のCは考慮しません。)
前提条件として、大気と海とのCO2の平衡を考える場合の「海」は、海洋の表層とします。そして毎年海に溶けたCO2分子(炭酸)がどれだけ光合成などで、有機物の中に固定されたり下降海流に溶けて中・深層まで沈み込み、大気と海洋(の表層)のCO2の平衡に関与しなくなるかは分かりませんが、一応炭素循環の模式図よりその値を、海洋の表層と中層・深層間のやり取りの差の18(902+16+110-1010)とします。単位は億トン(=100Mt)です。
この値は妥当でないかも知れませんが、その値が即座に海洋の表層に吸収されたCO2の100%にならない無い限り、近藤邦明氏の等比級数理論は破綻します。
化石燃料からの放出分がいわゆる人的放出で64ですから、
毎年、大気と海洋表層に合わせて 64ー18=46 だけ、化石燃料を燃やした人為的CO2が増えていくとします。(CO2のCの部分が46億tということで、CO2の質量はそれに 44/12 を掛けた値と言う事です。)
では、この増えた人為的排出のCO2は、大気中と海洋表層にどのように配分されるかと考えれば、一応目安として、現在の、大気中と海洋表層のCO2の量の比が平衡状態と考るのが妥当でしょう。 だから 5970:9000≒2:3 と言うことにします。つまり約4割が大気中に、6割が海洋の表層に配分されると考えます。(ちょっと大気中の割合が多過ぎる感じですが、海洋の中層・深層まで考えればその値はまた違ったものになりましょう。)
・・・と、言う事で毎年大気中に人為的に放出されたCO2のおよそ4割、64×0.4×44/12≒94(億トン)が大気中に蓄えられていくと言う計算になります。
断る必要性はあまり感じませんが、念の為、近藤邦明氏に彼が得意な「低レベル過ぎる言いがかり的反論」されないように言及します。この、毎年4割蓄積される人為的CO2とは、実際に放出された人為的CO2という意味ではなくて、人為的CO2が放出されなかった場合と比べてこれだけ多くの量のCO2が溜まるという意味です。
ここでのいろいろな値の取り方によって、試算結果の値は大きく変わる事もあります。私が示した値が実際の値と近いとは言いません。 重要なことは、近藤氏の「等比級数理論」の示す、「毎年放出される人為的放出のCO2の3.33年分くらいしか大気中に溜まらない」と言うことは詭弁であり、人為的CO2の放出が続けば、毎年大気中にも蓄積されていくと言う事です。勿論、海に溶けたCO2は大気と海のCO2に関与しない海底に固定された炭素原子Cや有機物中の炭素原子C、海洋深層中のCO2になっていきますから、もっと長いスパン、例えば人為的放出のCO2の数十年分以上には増えないかもしれません。その辺りの数値はデータ不足で私には何とも言えません。
言えることは、近藤氏の地球温暖化否定論の3本柱の一つ『産業革命以降の大気中CO2濃度上昇の主因は人為的に排出されたCO2量の増加とは無関係である。』は間違いであると言うことです。直感にも適います。
以上



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