ブルシット・ジョブ
ブルシットジョブ[Bullshit Jobs: 牛の糞のような仕事]と言う言葉を、最初耳にした時に、ちょっと嫌な感じがしました。ブルーカラーの一部の仕事を卑下しているように感じたからです。

1990年頃から、労働環境の悪い職場は頭文字を取って3k;汚い、危険、きつい と言われていました。英語にするとdirty, dangerous and difficult なのですが、最後のdifficultが、demeaning[屈辱的な]に変えられていることが良くあったので、そんな仕事を指しているのか?・と、不快な感覚を覚えました。
ホワイトカラーの必要のない仕事の方が酷いだろう・・と思ったら、このブルシットジョブも、紛れもないそんなホワイトカラーの不要な仕事を指す言葉でした。
『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』は、アメリカの人類学者、無政府主義者、活動家のデヴィッド・グレーバー[David Rolfe Graeber]による2018年の著書のタイトルで、2013年に出版された人気のエッセイ『Graeber』の拡張版だそうです。彼による「ブルシット・ジョブ」の定義は、
『その職に就いている本人でさえ、無意味で不必要で、有害であるのに有償の雇用の形態』
との事です。社会から無くなっても誰も困らない仕事、逆に社会の害悪にしかならないブルシット・ジョブの例は枚挙にいとまがありません。私が最初に思いつくのは、賭博金融業です。

最初に「ブルシット・ジョブ」と言う言葉を聞いた時の先入観とは違って、デヴィッド・グレーバーの意味するところのブルシット・ジョブには大幅に賛同いたします。
1930年に経済学者ジョン・メイナード・ケインズは「技術の進歩によって100年後(2030年)には週15時間(だけ)働く時代になる」と予想したそうですが、それから90年経った今でも労働時間が減っていません。ある意味増えています。それは要らない仕事:ブルシット・ジョブ が増えたからです。このことに関しては私も過去記事で書きました。
【労働の価値】2009/10/13
【ニーズ開拓なんてするよりも】2009/01/21
などです。
無意味で害悪なホワイトカラーのブルシットジョブに携わっている人間の方が、収入も地位も高くて当然であると、一般論として受け入れられている事が、現代の資本主義の病みの一つでしょう。
このように資本主義の限界にぶつかっている現在、それを維持したい1%未満の支配階級という名の富裕層が、その支配と財産・特権を守るためにブルシット・ジョブが生み出されていると、グレーバーは考えているようです。つまり、労働時間が減り財産も増えて、自由な時間を獲得した労働者階級の人々が増え、社会の矛盾を把握して政治に介入してきたりする事を支配者階級の人々は脅威に感じているからとの事です。確かにアメリカで、ヨーロッパで、世界の至る所でそのような運動が20世紀後半から起こってきました。
結局、多くの労働者から搾取して甘い蜜を吸い続けたい 支配者層=富裕層 が、壊れかかった矛盾だらけの資本主義にしがみついて行っている政策、活動がブルシット・ジョブも生み出しているという事になりそうです。
今回は、作者デヴィッド・グレーバーへの賛同と共感を簡単に書きました。書評ではないので、本書の内容などについては、軽くしか触れませんでしたが、作者デヴィッド・グレーバーのアナキスト、アクティビストとしての活動にも興味を持ちましたので、いつか改めて本書を読んで、書評を書くやも知れません。
最後に、最近流行っているSDGsへの企業、地方自治体などでの取り組みの中でも、ブルシット・ジョブが続々と生み出されていると感じています。



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