雑草の言葉

南瓜の栽培

2022/06/05
作物、畑 4

 「カボチャは、栽培が非常に簡単で、植えて根付いたら、後は放って置いても育って立派な実がなる。大して肥料をやらなくても、味もいいし長持ちする・・。」って思っていました。その旨、今年の冬に、とあるズームミーティングで話したら、西日本の専業農家の方が、
「カボチャは難しい。作ったことあるのか?」
と言ったので、意外でした。

 丁度、PCのズームの画面の私の背景には、庭の家庭菜園で作った赤カボチャを映していました。雑草や他の作物の上を這ったカボチャが支柱に宙吊りで実っているお気に入りの写真です。その背景を指差して、「これは私が作ったカボチャですが、「種を蒔いただけで、あとは何もしなくてもここまでなりました。素人でも簡単に作れると思います。」と答えました。
金山赤カボチャ
↑お気に入りの金山赤南瓜。丁度、支柱に這わせて釣ることができた。
↓会津菊南瓜。やはり同じ頃、支柱に吊ることができた。
会津菊南瓜

 そのミーティングは、日本の食糧問題の事で、カボチャの栽培ではなかったし、お互い、それ以上話は続けませんでした。
 その後、退職したら、本格的に農業をやると言って、田畑を購入して、今でもかなり本格的に農業をやっている新潟県の友人に、カボチャの栽培が難しいかどうか尋ねてみました。すると案の定、彼も
「カボチャはすごく簡単だ。放っておいても大丈夫。種を蒔かなくても、生ゴミからでも毎年生えててくる」と答えました。

 「カボチャ栽培は難しい」と言った西日本の専業農家の方は、何を以てカボチャの栽培が難しいと言ったのか、気になりました。

 その後、考えてみると、確かに難しい点が二つ思いあたりました。

一つは、カボチャは強くて暴れるので、苗1つあたり広い面積を必要とすることです。家庭菜園の狭い土地では、他の植物に絡みついて枯らせます。家庭栽培の指南書などには、「狭い土地ではトマトやナスなど上に伸ばす作物の下に這わせれば良い」などと書かれていますが、そんなことはなかなか出来ません。数日目を離すとトマトなどに覆いかぶさってしまいます。つまり、狭い土地で、他の作物と混植するのはかなり難しいと思います。

 そしてもう一つ、交雑の問題があります。直ぐに別の品種と交配してしまいます。
 私は昨年まで3種類のカボチャを栽培していました。
庭の南瓜3種
 家の庭で栽培していた3種のカボチャ。
 左から、生ゴミから自然に生えてきた西洋南瓜。赤南瓜。菊南瓜。


 1つは最も流通している普通の西洋カボチャ。これは、苗を植えているわけではなくて、生ゴミを埋めたところから、かなり深い所からでも、毎年何本も生えて来て、都合のいい場所に生えたものだけ2、3本残して、後は間引いていました 
 2つ目は、西洋カボチャと同じくらいかちょっと大き目の赤カボチャ。大きなデベソがあるのが特徴です。とても美味しいカボチャです。
 そして3つ目は、会津伝統野菜の会津菊カボチャ。上から見ると菊の花のように見えて、凸凹した山に分かれている小振のカボチャです。私は好きですが、多くの人は不味いと言います。

 毎年採種して作った苗は、何人かの欲しい方に差し上げていますが、みんな赤カボチャが欲しくて菊カボチャは要らないと言います。確かに赤カボチャが一番美味いので、昨年から赤カボチャだけ栽培しようとしましたが、まさかの失敗でした。昨年は、赤カボチャから採った種だけポットに蒔きましたが、菊南瓜との交雑種が沢山実りました。菊南瓜の交配力は強く、遺伝も強く出るようです。色は赤っぽいのですが、形が菊の花のように割れて、ほとんど菊カボチャです。「赤カボチャの苗」として近所の人に差し上げた苗からも、いくつか「菊南瓜」(の遺伝子の強い交配種)がなってしまったそうです。
交配菊南瓜
 殆ど菊南瓜になってしまった交雑した南瓜。
右側のカボチャは辛うじて色だけ赤カボチャ。左側は、色も混じってまだら


 有機無農薬農家で研修している研究熱心な20代の若者に聞いてみたら、
「カボチャは重くて出荷作業が大変だし、重さの割に安いので、出荷して採算を良くするのは難しい」
と、言ってました。

 以上3点、①広い面積がいる。 ②すぐ別の品種と交配してしまう。 ③重さの割に値段が安い。
を件の西日本の専業農家さんにメールして、難しいというのはその事かとお尋ねしたところ、
その3つに加えて、 
④消費者があまり好まない。悲しいかな、あの表面の固さで嫌うのです。南瓜を切り裂く術を知らない。スーパーで切り分けているのを買えば、この苦労がない。南瓜一つをそのまま買わない。
とのことでした。そして、真ん中の茎の部分に包丁のとがっている先を差し込み、下に降ろすと簡単に切り分けられると教えてくれました。

 その後、調べてみると、カボチャは、交雑を避けるためには、別の品種からは100m以上離すべきだそうです。
 奥会津の金山町特産の赤カボチャは、交雑を避け「ブランド化」する為に、カボチャの栽培は赤カボチャしか許されていないとのことです。
 他の町で作られた赤カボチャの数倍の値段で売られています。他の町で作られた赤カボチャ1個が300円〜700円に対し、金山赤カボチャは1個1000円〜6000円です。
 勿論、私の家の家庭菜園で作っている赤カボチャは、「金山赤カボチャ」とは名乗れないのですが、味は頗る美味しく、菊南瓜と両方食べた人は全員「赤カボチャの方が遥かに美味い」と言います。更にみんな、西洋カボチャよりも美味いと言います。
これから家の庭では、カボチャは純正な赤カボチャだけにしようと思います。

 カボチャの栽培は、一見簡単だけど、面倒な、奥の深い栽培なのでした。

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Comments 4

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guyver1092

単に植えるだけと商売にするの違い

 単に植えて自己消費するのなら簡単でも、商売にするのは難しいのですね。考えてみれば当然かもしれませんが、なかなか素人には気づけないものですね。

 我が家でも、生ごみを埋めているので、ほぼ毎年カボチャが生えてきています。しかし、日陰等でかなり条件が悪く、実がなっているのはあまり記憶にありません。ちなみに、知人からもらった苗は日向に植えていましたので、ちゃんと実がなりました。暴れるというのもよくわかります。いつの間にか生垣の上に我が物顔で這っています。

2022/06/07 (Tue) 21:24
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 単に植えるだけと商売にするの違い

おっしゃる通りです。「こんな簡単な南瓜の栽培」・・と思っていたら、商売にするにはかなり難しい事がわかりました。
特に、品種を固定して赤南瓜だけにするのがこんなに大変だとは、一昨年までは思ってもいませんでした。

 guyver1092さんのところでも、埋めてある生ごみの種から生えてくるのですね!嬉しくなります。
>日陰等でかなり条件が悪く、実がなっているのはあまり記憶にありません。
私も、昨年、木に這わせようとして木の根元近くに植えた赤南瓜(交雑酒?)の苗は、木陰で日が当たらず殆ど枯れました。
>いつの間にか生垣の上に我が物顔で這っています。
作物では無く、生垣の上を這っていたなら成功ですね!京都のビル・トッテンさんの屋敷では、高い煉瓦の塀の上まで這っていました。

槌田敦さんの『「地球生態学」で暮らそう』p 195〜 には、
(鍬を使わず)道具はスコップだけを使った槌田さん自らの家庭菜園の「現代型刈敷農法」の実践例が描かれています。
「畑のあちこちから菜種が勝手に生えてくるのが楽しみ」とあり
「生ごみ跡から芽を出したカボチャは養分が豊かで成長が激しいから、他の作物を傷める。そこでゴーヤやヘチマのようにひもを張ってその上を這わせる」
とあります。非常に共感出来ます。
guyver1092 さんも、槌田敦さんもビル・トッテンさんも私も、カボチャでは、みんな似たような経験をしてるんですね!


2022/06/08 (Wed) 07:52

南瓜いろいろ

南瓜好きですが、「金山赤カボチャ」と「菊南瓜」は食べたことがありません。「坊っちゃん南瓜」は味も良く、大きさとして手頃ですが、この辺のスーパーではあまりみかけないので、西洋南瓜のハーフサイズを購入します。
以前、北海道産の「皮がとても薄くて固い南瓜」(ブランド名?)をいただいたことがあります。「玄関で叩きつけて割る」という注釈つきで。
そのとおりにしましたが破片?が飛び散ることもなくきれいに裂けました。
とてもおいしかったです。

私は南瓜を切るとき、ついでに指も切り、何針か縫った不名誉の古傷があります。このカット方法でやってみます。
>南瓜を切り裂く術を知らない。スーパーで切り分けているのを買えば、この苦労がない。南瓜一つをそのまま買わない。
そして、真ん中の茎の部分に包丁のとがっている先を差し込み、下に降ろすと簡単に切り分けられると教えてくれました。

 >奥会津の金山町特産の赤カボチャは、交雑を避け「ブランド化」する為に、カボチャの栽培は赤カボチャしか許されていないとのことです。
交配しやすいカボチャは広域の町全体で1つの品種を守るのですね。
高級志向の消費者に購入してもらえば薄利多売より町おこしにも繋がる、、。

ゴミからではないれっきとした?南瓜の苗を植えたのですが、交雑していたらそれなりの楽しさもありです。我が家の猫の額の庭に向こう三軒両隣が植えた南瓜との交配の可能性もあるわけですから。

2022/06/09 (Thu) 19:50
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 南瓜いろいろ

虹さんは、カボチャ好きなんですね?金山赤カボチャは、大きな「でべそ」が特徴です。
https://www.town.kaneyama.fukushima.jp/site/kanko/akakabotyakensa.html

>西洋南瓜のハーフサイズを購入します。

なるほど、やっぱり丸ごと買わないのですね?
私は高校生くらいの頃から、よく母に台所に呼ばれて、包丁でカボチャを二つに切ってくれと言われてました。
多くの家で、カボチャを切るのは苦労してるんですね?
私が西日本の農家の方から教えて戴いた方法はいいかも知れません。私も今度試してみます。

>北海道産の「皮がとても薄くて固い南瓜」

>「玄関で叩きつけて割る」
は、とても面白いですね。ちゃんと綺麗に割けるんですから、素敵です。

>交雑していたらそれなりの楽しさもありです。

そういう事も楽しむ気持ちも大切ですね!でも、金山赤カボチャは、交雑しないでならせたいです。

2022/06/10 (Fri) 05:37
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト、「経済成長信仰」と「科学技術信仰」とによって、飛行船地球号は破裂して墜落を始めるのも時間の問題。
あくせく働いて破局に向かって突き進むくらいなら猫のようにその日暮らしをする方がよっぽどいいではないですか。脱成長によってゆったり暮らすことができる社会の実現を!
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