雑草の言葉

“D”は要らない

2022/06/29
Economic Fascism 4
 有限の地球で「開発」とか「成長」の名の元に、どんどんと肥大化を続けることは持続可能な筈 もなく、常に「破局の危険」に晒されます。
 開発が進めば進むほど、成長すればするほど、その危険性がどんどんと強まります。丁度、バベルの塔を高く高く積み上げるほど、崩壊の可能性が高まり、崩壊の時期が早まり、崩壊の大きさが大きくなっていく事に例えられるでしょう。
バベルの塔2

SDGs と、それ以前から謳われてきた「持続可能な開発;Sustainable Development」との違いは、形式的には最後に「Goals:目標」 が付いただけです。
20 世紀の終わり頃から盛んに行われたその手の会議で、「持続可能な開発:Sustainable Development」という胡散臭い言葉は盛んに使われてきました。1992 年の「環境と開発に関する国際会議」(いわゆ る「地球サミット」)で採択された「アジェンダ 21」にも謳われています。勿論、SDGs の前身で ある、2001 年に採択された「MDGs:ミレニアム開発目標」にも明文化されています。
外務省の HP によれば、「持続可能な開発:Sustainable Development」という言葉は、
「将来の世代の欲求を満たしつつ、現在の世代の欲求も満足させるような開発のこと」
とされてい ます。
『この概念は、環境と開発を互いに反するものではなく共存し得るものとしてとらえ、環境 保全を考慮した節度ある開発が重要であるという考えに立つものである。』
とあります。
 こんな定義を敢えて載せたと言うことは、殆ど全ての「開発」が、環境を破壊してきた歴史があるからでしょう。
 「現在の世代の欲求を満足させるもの」とされている開発が、将来の世代にとって、負の遺産となった歴史があったと言う事に他ならないでしょう。
「環境と開発が互いに反するものでは無く共存し得るものとしてとらえ」
なんてわざわざ書いている時点で、脱力ものです。 確かに互いに相反する概念では無かった筈ですが、現在では「環境か、開発か?」などとトレードオフの関係のように考えられているのは、互いに相反する「実績」があったからでしょう。更に
「環境 保全を考慮した節度ある開発が重要であるという考えに立つ」
なんてわざわざ書くと言う事は、これまで如何に、「節度無い」、「環境に配慮しない」開発ばかり為されてきたと言う事の証でしょう。
環境破壊 を伴わない開発は、探すのに苦労するくらいにありません。実際に、1992 年の「国連環境開発会議」で、意見を求められたUNDP[United Nations Development Programme:国連開発計画]のチェリー氏が
「確かに不幸な開発もあったが、そうで無い開発もあった]
と発言した事に対し
「では、不幸で無かった巨大開発はどれか?」
との質問に、チェリー氏は答える事が出来なかったとの事です。国連開発計画の職員自体が、まともな開発を一つも挙げる事が出来なかったのです。しょうもない話です。「開発」=「環境破壊」という 共通認識が出来上がってしまったのも当然です。
 これからも「環境」ではなく、「開発」が目標になった時点で、 環境破壊は免れないでしょう。そもそも「開発」するくらいならば、そのまま放置しておいたほうが 遥かに良かったという事例も、枚挙に暇がないほどに、過去のほとんどの「開発事業」が証明して います。
「開発」は「環境保全」の必要条件ではありません。「いじらずにそのままにしておく」と言う選 択肢も非常に重要です。SDGs には、その選択肢が無いように見えます。
SDGs17Goals

だから SDGs[Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標]から、「D:Development: 開発」を取り去って、SGs(Sustainable Goals:持続可能な目標)だけにしたほうが遥かに理想的 な目標でしょう。

要するに、SDGsに“D”を入れたのは、経済界との妥協の産物であり、更なる開発に投資し、経済成長のための戦略 として作られた目標なのでしょう。 “D”:Development を目標に入れた段階で、SDGs は骨抜きの目標、若しくは別なところに目標があると言えましょう。この段階で既に SDGs は Sustainable:持続可能ではないと言えそうです。

“D”は要らないのです。 ・・と言うよりも、入れるべきではないのです。

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Comments 4

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guyver1092

経済成長詐欺

 おっしゃる様に、経済成長詐欺ですね。おぼろげな記憶ですが、地球サミットの解説を聞いてすぐに詐欺と感じ、この手の会議の結論に興味をなくしました。彼らの結論からは、まるで地球生態系の危機はないものとの認識が感じられます。
 当時から現在までの間に頭の文字をSに変えるというバージョンアップがなされたのですが、彼らの思うほどは開発が進まなかったからこそのバージョンアップかもしれませんね。
 少し考えればわかることですが、有限の面積の地球で、持続的開発など気違いの戯言なのですが、戯言と主張する意見は少なくともマスコミからは聞いたことがありません。マスコミも文明崩壊を望んでいるのかもしれませんね。

2022/07/02 (Sat) 20:02

17項目の一つ

開発は成長ではなく、負の結果としてのさまざまなデータがあるのですね。

17項目のうち女性、人にまつわることは関心事の一つです。
日本では社会学の上野千鶴子氏の著書に我が意を得たりです。
この分野には先進国や途上国、国による文化の違いもあるのでしょうね。

2022/07/02 (Sat) 22:17
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 経済成長詐欺

 地球サミットが行われた1992年頃は、現在のSDGsほどマスコミ報道も無かった記憶です。
私は後追いでその問題点を認知しました。直ぐに詐欺と感じたguyver1092さんは、アンテナが高く洞察力が鋭かったのですね。
1992年の会議は、本文で、2つの会議を混同したようです。
「環境と開発に関する国際会議」(いわゆ る「地球サミット」)はリオデジャネイロで開催。
UNDPのチェリー氏が、問い詰められて返答が出来なかった「国連環境開発会議」はモントリオールで、リオの会議の一ヶ月前に開催されたようです。本文を訂正しておきました。
後者では、「開発は不要、開発によって原住民は不幸になっている」と言う主張が、いくつかの現地の代表から発表されました。
こちらのモントリオールの会議はまともだったようで「開発の終焉」を提起したようです。
しかし、一ヶ月後のリオデジャネイロでは、「持続可能な開発」の宣言が為されています。仰るように詐欺です。
ネットで調べると、モントリオールの方はあまり出て来なくて、リオの「持続可能な開発」がよく出て来ます。酷いものです。

>有限の面積の地球で、持続的開発など気違いの戯言

の通りですね。「開発」の名の下で崩壊と絶滅の危機に瀕している事を認識すべきです。

2022/07/03 (Sun) 07:54
☘雑草Z☘

☘雑草Z☘

Re: 17項目の一つ

さん

開発は負の側面の方が遥かに大きく、「開発によって、生態系は破壊され続けてきた」と言っても過言では無いでしょう。
「成長」と言う表現も曲者で「「経済成長:economic growth」の実態は「経済膨張:economic expansion」です。
何故なら、経済成長は、GDPの増加で定義されているからです。同じことをするのにお金を使うほど、経済は成長します。
戦争で経済は成長します。かつての朝鮮戦争での日本の「朝鮮特需」・・・現在のウクライナでのアメリカ軍需産業関連の経済成長は朝鮮特需を遥かに上回るでしょう。

>17項目のうち女性、人にまつわることは関心事の一つです。

SDGsは普通にいいことも書かれていますね。内容が多岐に渡り、「社会正義」と「人権」「環境」がごちゃ混ぜでレベルも色々な感じがします。
全否定する気はありませんが、”D”や「経済成長」にはうんざりです。

2022/07/03 (Sun) 08:12
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト、「経済成長信仰」と「科学技術信仰」とによって、飛行船地球号は破裂して墜落を始めるのも時間の問題。
あくせく働いて破局に向かって突き進むくらいなら猫のようにその日暮らしをする方がよっぽどいいではないですか。脱成長によってゆったり暮らすことができる社会の実現を!
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